表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/160

マミの証言(中編一)

 マミの工房で待っていると、奥の生活スペースからお茶とお茶請けを持ったマミが戻ってくる。

 彼女はクリスたちの座っている椅子の前にある机にそれらを置くと、近くに置いてあった椅子を引っ張ってきてそれに座る。


「……それで? 何の用でしょうか?」


 ある程度予想はしていたが、彼女の口調はひどくつめいたい。

 やはり、彼女からすればクリスたちにあまりいい感情は抱いていないということなのだろう。


 だが、だからといって暗殺未遂事件について聞くのを戸惑っていたら話が進まない。


 クリスは小さく深呼吸をした後にマミの目をまっすぐと見ながら口を開く。


「ねぇ……あなたは、私が暗殺された事件について何か知っているますよね?」

「暗殺されたじゃなくて、暗殺されかけたでしょ? 殺されていたら私の目の前にいるのは何なのよ」


 緊張のせいか若干変なことを言ってしまったが、それのおかげでマミは一瞬笑みを見せた。


 もしかしたら、こちらが思っているほど彼女は自分たちに対して嫌悪感を持っていないのだろうか?


 クリスは一瞬そんなことを思うが、不覚にも笑いそうになったとかそういう可能性もあるので一応警戒は解かないで質問を続ける。


「……先ほどは失礼いたしました。改めてお尋ねしますが、私に対する暗殺未遂事件……あなた、何か知っていますよね? 否定しても無駄ですよ。ある方があなたとの関与を証言していますから」

「……あら、随分と攻めてくるのね……そんなに暗殺犯が知りたいの? あぁ失礼。暗殺未遂犯ね……いずれにしても、自分へ危害を加えるものの正体を知りたいと……それだけのために王宮を抜け出してくるなんて、相当焦っているのかしら?」

「そういうわけではないのだけどね。でも、犯人探しはちゃんとしておいた方がいいと思わないですか?」


 マミはクリスが自ら犯人探しをしていること自体に疑問を抱いているようだ。

 それはある意味で順当な疑問かもしれない。


 クリスは立場だけで言えば一国の姫であり、その気になれば動かせる人材はいくらか存在している。今回の場合で言えば、クリス本人が動かなくてもアニーだけをマミのところへ向かわせるという手もあることにはあるのだ。

 それなのにそれをしないというのは、ある意味でクリスのわがままだと言えるのかもしれない。


「いずれにしても、来てしまったという事実は覆らないので答えていただきますか? できれば、イエスという返事の上であなたの知っていることをすべて話してほしいのですが」

「おやおや、随分と強引ですね。やはり、焦っているわけですか……でしたら、私はあえて黙秘を貫くことにします。さぁさぁ私にしゃべらせてみなさい。クリスティーヌ暗殺未遂事件の証言を」


 そういってのけたマミはそのまま人の悪そうな笑みを浮かべてみる。


 衛兵長の証言から彼女からの協力は得られると勝手に考えていたのだが、どうもことはそう簡単には進まないらしい。

 いや、もしかしたら彼女はこちらを試しているのかもしれない。ここで無理にしゃべられようとして、拷問をするようであれば見切りをつける。なんとなく、そんな意思も感じ取れる。


「そうですか。でしたら、ゆっくりと話をして証言を引き出してみましょうか」


 だったら、こちらも焦りをなるべく抑えて彼女に合わせればいい。クリスはマミの目をじっと見つめながら再び質問をぶつけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ