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メイド長の証言(前編)

 衛兵長と話をしてからしばらく。

 クリスは事前にアニーから聞き出しておいたメイド長の休憩時間に合わせてメイドの休憩室の扉を開ける。


「失礼するわよ」


 先ほど、衛兵の休憩室に入ったときと似たような口上で入ってみるが、反応は全く違っていて、メイドたちは落ち着いた様子で状況を静観している。それを見て、衛兵たちはもう少ししっかりできないのかとため息をつくが、普段から王族に直接接する機会の多いメイドと、王族たちを少し離れたところで警備している衛兵とでは王族に対する接し方が変わるのはある程度仕方ないのかもしれない。


「……メイド長は?」


 それをいいことにクリスは直ぐ近くにいるメイドにメイド長の所在を確かめる。


「奥にある別室です」

「そう。ありがとう」


 答えてくれたメイドに軽く礼を言ってクリスは彼女が言った通り奥にある個室の扉に向かう。


 そこまでの道のりをちょうど示すようにメイドたちは立ち上がって通路を作る。


「ありがとう。あなたたちは休憩していてもいいのよ?」


 一応、左右のメイドたちに向けて声をかけてみるが、彼女たちは軽く頭を下げた姿勢のまま動く気配がない。さすが、王宮のメイドだ。並みのメイドとは違うらしい。

 クリスとしてはそこまでのレベルは求めていないのだが、メイド長あたりがそうするようにと指導しているのかもしれない。


『相変わらずね。ここのメイドは……やっぱり、接するならほかのところのメイドの方がいいわね……』


 頭上を浮かんでいるメイがそんなことをつぶやく。


「ここのメイドってほかにそんなにメイドいたっけ?」

『いるわよ。使用人体験までしてたのに気づいてないの?』

「全然」

『まったく……いい? この部屋にいるメイドは国王の世話をするメイドたち。それでいて、前にあなたが混じっていたのはあなたと王宮で住み込みで働く人たちのためのメイド……実質的にはあなたのメイドともいえるわね。専属はアニーだけだけど……とにかく、そんなところ」


 周りのメイドたちに聞こえない程度の声でメイと言葉を交わす。

 確かに今、いるメイドたちは見覚えのない人ばかりであるし、今いる休憩室も前に使用人体験をした時とは別の部屋だ。あちらはもう少しざわざわしていた記憶がある。


「休憩中まで静かってどうなのよ?」

『あなたがいるからよ。一応、王族なんだし』

「一応は余分。偽物であることは認めるけれど」


 周りのメイドたちがこちらに不干渉であることをいいことにクリスとメイはひそひそと会話を続ける。

 普通に考えればこのような状況でメイと会話するというのは少なからずリスクがあるのだが、メイドたちがあまりにも黙っているのでどうも居心地が悪いのでついついそうしてしまう。


 ここでメイドのうちだれかが話しかけてくれれば、まだ自制は聞くのかもしれない。


 しかし、彼女たちは気持ち悪いぐらいに黙っているのでクリスはどうにも気味が悪く感じてしまいついついメイに話しかけ続けてしまう。


 そうしているうちに部屋の奥にある別室の前に到達し、クリスはその扉を勢いよく開いた。

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