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話のあとに

「……つまり、アンズが黒幕もしくはそれに近しい人間だって言いたいわけ?」


 メイが一通り話を終えた直後、クリスが不機嫌さを隠すことなく口を開く。


 その様子にアニーはおどおどとしているがそんなことは関係ない。


「ねぇそれはたしかなの? だったら、なぜメイがいるのにそんな話をしたの?」

『まぁそれは……そうだけど……』


 クリスが口にした疑問はもっともだ。

 アンズはメイを目視できる数少ない人間のうち一人だ。そのうえ、メイの立場がどんなものかわかっているはずなのでそれを踏まえたうえでそんな話ができるほど馬鹿ではないはずだ。

 これだけの条件とクリスのアンズに対する信頼が合わさって、クリスはメイが見たのが本当にアンズなのかという疑いを持ち始めていた。


「……えっと……そのアンズっていう方は……」

「もともと魔王城に住んでいた魔法使いで、ちょっと癖がつよいけれど魔法の腕はたしかで、体が入れ替わったまま勇者と戦うことになった緊急措置として現状を作り上げた人物よ」

「へぇそんなにすごい人なんですか……」

「えぇだから、メイがいる状況でわざわざ話し出したりはしないはずなのよ……」


 仮に衛兵長の話し相手が本当にアンズだった場合、可能性としては何かしらの要因からアンズがメイの姿を認識できなくなったか、それともメイがいることがわかっていて、わざとその話を聞かせていたかのどちらかだ。


 前者ならともかく、後者ならアンズの目的がますますわからなくなる。


 そもそも、メイが見たのは本当にアンズだったのだろうか? という疑問は少なからず持っているが、わざわざ彼女に変装する人間に心当たりがない。

 まず、アンズはかなり小柄だから標準体型ぐらいだとすでに変装はできないだろうし、そもそも魔王側近のアベルの姿を知っている人はいても、ただの町娘になってしまったアンズの正体を知っていて、わざわざ変装する人間など少ないように思える。もちろん、彼女が最初から何かしらの理由でアベルの正体であると語っている可能性も否定できないといえばできないのだが……


『ねぇクリス。気持ちはわからなくもないけれど……落ち着いて考えてほしいの』

「……そうは言われてもね……」


 そう簡単に落ち着けるわけがない。

 さすがのクリスでも動揺しているし、何よりも彼女に裏切られているという可能性が頭をよぎっているせいでどうしようもない不安にさいなまれている。


「……はぁどうしたものかしら……本人に聞きに行くっていうわけにもいかないし、わざわざ本人がこっちに出向いてくるとも考えづらいし……」


 本当にアンズが衛兵長とクリスを葬るという話をしていたのだとしたら、平然とした顔で自分の目の前に現れるとはとてもじゃないが考えられない。彼女だって、メイがいるところでそんな話をした後に素直に顔を出すほど馬鹿ではないはずだ。


「……とにかく、対策を考えましょう。衛兵長の話し相手が本当にアンズだったか確かめるっていうことも含めて」


 最後、しばらくの思考を置いた後にクリスはゆっくりとそういった。

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