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三日目その二

 王宮の地下通路。

 クリスが幽閉されている区画を歩く皆の表情は真剣そのものだ。


 メイに多大な衝撃を与えたあの話し合いの直後、衛兵長は足早にクリスのもとへと向かっていた。


 あの時、衛兵長の話し相手がメイの目の前に現れたとき、メイは思わずその場から逃げ出しそうになった。どうしても、目の前の現実を見たくなかった。

 そして、今はその現実をどうやってクリスに伝えるべきかと迷っている。


 これはクリスに伝えるにはあまりにも衝撃的すぎる内容だからだ。


 ただ、その一方で今現在自分がやるべきこというのはよくわかっている。

 単純だ。これから起きることに対して、対策をうち、クリスに危険が及ばないようにすればいい。とはいっても、やれることは限られている。


 メイは必死に頭を回転させながらその方法を考える。


 衛兵長と相手の会話の中で登場した主な内容はクリスを移動させている途中に仕掛けてあるトラップで始末するというものだ。

 前提条件として、メイはトラップそのものに触れることができない。なので設置場所を知っているとしてもそれを取り除けるということはない。


 次にトラップの設置場所。クリスを消そうとしている人物はトラップの配置を衛兵長に知らせてあるが、それがすべてとは限らない。例えば、最初もしくは最後に衛兵たちもろともクリスを消しにかかる可能性もある。

 そう考える理由として、衛兵たちが裏切る可能性があるというのと、クリスティーヌ姫の暗殺の黒幕という重大な秘密を知っている彼らをやすやすと生かしておく必要はない。そんなことをするぐらいなら、いっそのこと衛兵もろとも始末してしまった方が楽だ。

 そこまで推測して、ようやくメイは自分の中での違和感が消えていく。


 メイが入れないように区切られた区画での話し合いをしていた割に最後にそれをしなかった理由。それを説明できるのはそれだけだ。

 意図的にメイが自分の話を聞けるように仕掛ける。わざわざメイド長にメイの姿を認識できるようにしてまで仕掛けた壮大なトラップだ。その考えに至ったとき、メイは思わず考えすぎだ。今まで自分が見てきたものはすべて間違いだったとその考えを追い出しそうになる。しかし、冷静にかつ平静に考えてみればその結論が一番自然に思えた。何よりも、自分が自身の目で衛兵長を呼び出した黒幕の姿を見ているということがその可能性を確かなものにしている。


 それに今は現実逃避をするべき時ではない。今やるべきことはクリスを無事に部屋まで送り届けられるようにその身の安全を守れるように全力を尽くすことだ。


 その後、クリスが幽閉されている廊下に入ると、トラップの位置を念入りに確認する。


 衛兵長を先頭に衛兵たちは奥へ奥へと進み、メイもそれについていく。トラップの位置は今のところ記憶にある通りだ。

 そして、クリスがいる部屋の前につく頃にはもしかしたら考えすぎだったのではないかとすら思えてきた。


 部屋の中でのクリスと衛兵長の短い会話の後、衛兵長とともにクリスとアニーが姿を現す。


 二人が出られるといううれしさから二人に声をかけようとした瞬間、メイは天井からかちりという何かが動くような音がしたことに気付いた。


『クリス!』


 メイが声を張り上げると、クリスは驚いて足を止める。

 その直後、廊下の天井が勢いよく落下し、クリスがまさに踏み出そうとしていた場所を押しつぶした。

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