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二日目その三

 王宮の中でも使用人たちが主に使用している区画……要するに住み込みの使用人たちの宿舎にあたる場所にメイド長の姿があった。

 彼女は背筋をまっすぐと伸ばして、胸を張り歩いていく。


 そんな彼女が向かっているのは宿舎の一番奥。普段であれば使われていないような区画だ。と思わるのだが、わざわざ彼女がいちいちどこへ向かうかなんて口には出してくれないのであくまでメイの推測である。

 この宿舎の一番奥にあるのは緊急用の避難区画の一つであり、昨日衛兵長が訪れていた区画ほどではないがそれなりに厳重な管理がされている場所だ。そこであれば秘密の話ぐらいはできるだろう。ただし、彼女は味方側の人間である可能性が高いので彼女の口から黒幕の名前が出ることに期待する以上のことはできないのが現状だが……


「それにしても今日は妙な気配がしますね。幽霊でも出ているのかしら?」

『へっ?』


 廊下を歩いているメイド長が唐突にそんなことを言いながら立ち止まる。

 まさか、相手に自分の存在が感づかれたのだろうか? そんな風に考えながらメイは少し彼女から距離をとる。


「……なるほど。まずいと思ったらすぐに引き下がれるほどの判断力も持ち合わせていると……でも、それじゃ少し甘いわね」

『本当に気付いているの?』

「……何を話しているかまではわからないけれど、あなた意思をもって私についてきている……あなたは何者かしら?」


 ゆっくりとした口調でメイド長が声をかける。

 その視線は真っすぐとメイを射貫いていた。


『いや、私は怪しいものじゃなくて……って言い訳しても聞こえないか……えっと、どうしよう……えっ? 本当に見えているの?』


 彼女の言葉の真偽が知りたい。

 その思いから試しに手を振ってみる。


「なるほど。私の反応を試しているわけですか。でしたらお答えしましょう。見えてますよ。あなたの姿、行動が……見えたのは先ほどからですが……」


 どういう理由かわからないが彼女の視界には私の姿が映っているらしい。

 これは困ったことになった。今のところ自分の姿が見える人間はクリスとアンズぐらいだからとすっかり油断していた。それよりも、気になるのは彼女の先ほどから見えるようになったという言葉……これを額面通りに受け取れば、今まで見えていなかったメイの姿が突然見えるようになったというように聞こえる。


『突然見えるようになったの?』


 なるべく口を大きく開けて聞いてみる。

 本来なら逃げるべきなのかもしれないが、彼女がシロだろうとクロだろうとこれから接していくであろう人物だからあまり下手な行動をするわけにはいかない。


 どうやら唇を読んでこちらの言いたいことを理解できたらしく、メイド長は小さくうなづいてから返事をする。


「そうですね。突然かと聞かれれば肯定です。朝の時点では気配は感じたもののあなたの姿は目視できませんでした。それでですね。あなたは誰ですか? あれですか? クリスティーヌ姫のドッペルゲンガーというやつでしょうか?」


 いや、いろいろと考えるよりも先に誤解を解くことが先決だ。


 メイはどうやって誤解を解くかと思考を巡らせ始めた。

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