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二日目その二

 洗濯場を出たメイド長はそのまま廊下に出て、今度は厨房へと向かう。

 そこで盆に載った二人分ほどの量の食事を受け取ると、それをもって再び廊下へと出る。


 彼女はそのまま廊下を歩いていくと、クリスたちが監禁されている部屋の入り口当たりまで向かい、そのまま盆を食事の投入口に置く。

 すると、魔法で作られていた仕掛けが作動して、食事をのせた盆は投入口の中へと消えていった。


 どうやら、クリスたちに食事を配膳していたのは彼女だったようだ。そうなると、彼女はクリスがどこでどんな目にあっているのか知っているということになる。

 意外なことにクリスがいないという事実はほとんどの使用人たちが知らない。


 理由は至極単純で実質的に普段クリスの身の回りにいる使用人がアニーだけだからだ。

 それに加えてクリス自身も部屋から出ることは少ない方なので数日間クリスの姿を見なかったところで気にする使用人などあまりいない。強いて言うならアニーがいないと違和感を感じるかもしれないが、それについてはメイド長からうまいこと言ってごまかしている可能性が高い。そうなると、やはりメイド長は共犯者だ。


 彼女の背中をさらに追っていくと次に彼女が訪れたのは衛兵たちの宿舎だ。


 普段、使用人が入ることのないそこにメイド長がいるということもあり、周りからの視線を浴びながらメイド長は真っすぐと一番奥の部屋へと向かう。


「衛兵長。失礼します」


 彼女はそう声をかけてからすぐに扉を開ける。


「君か」


 衛兵長は部屋に入ってきたメイド長を見るなりそんな風に声をかけた。

 第二次脱走計画のときにクリスが部屋を訪れた時とは大違いだ。


 当然といえば当然かもしれないが、なんだか落胆すら覚える。


 しかし、メイに見られていることなど知るわけもない衛兵長はその態度を保ったままメイド長に接する。


「……クリスティーヌ様が例の部屋から出るそうですね」


 メイド長は衛兵長のそんな態度など気にする様子もなく口を開く。

 それを聞いた衛兵長はふんと鼻を鳴らしてふんぞり返る。


「だからどうした? そのあたりの指示を仰ぎに来るのは私のところではないだろ」

「えぇまぁそれは十分に承知しています。ただ……」

「ただ?」

「あの方は何を考えてこんなことをしているのでしょうか? 意図があまりにも読めなくて……」


 メイド長が眉をひそめると、衛兵長は大きく息をついた。


「さぁ? 我々はあくまで指示に従うだけそうだろ?」

「はい。たしかにそうですが……」

「気にするな。我々があいつではなくあの方の指示に従おうと決めたのを忘れたのか」

「いえ、そういうわけではありませんが……」


 衛兵長の主張に対して、メイド長はどこか消極的だ。もっとも、メイからすれば“あの方”と“あいつ”がどういった関係なのかなどそのあたりが見えてこないので話の全貌がつかめないでいるのが現状なのだが……


「まぁいいでしょう。あの方の指示通りに動けばクリスティーヌ様が助かるのなら……」

「そういうことだ。最終的に姫を救えるのならそれでいい。ただ、あいつの執念は深いからな。くれぐれも油断せずに普段通りにしていろ」

「わかってますよ。それでは失礼します」


 メイド長は頭を下げてから衛兵長の部屋から出ていく。


「全く、この後も人に会う約束が多くて疲れそうですね……」


 廊下に出ると同時に彼女が漏らしたつぶやきにメイが気づかないはずがなく、彼女はこのままメイド長の尾行を続行することにした。

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