出発の朝
修学旅行、当日。
朝起きた。カーテンから漏れ出す光は、まだない。淡い色のパジャマから制服に着替え、カーテンを開き、暁色の空を見る。
そういえば、前に国語の先生が言っていた。曙と暁の違いについて。
「曙というのは、明け方のことです。もう、日が少し上っている状態の空です。一方、暁というのはまだ日が昇っていません。まだ暗い時間帯です。そうですね、彼は誰時と似たような時間帯ですね。彼は誰時というのは、黄昏時の対義語です。黄昏は漢字表記すると誰そ彼とも書くことがあり…」
いけないいけない。国語の授業プレイバックしてる場合じゃない。早くリビングに行ってご飯食べよう。今日は忙しいんだから。
お母さん、ありがとう。こんな朝早くにご飯作ってくれるなんて感謝、感謝。
「それにしても、3泊4日だなんて、あんたの学校は贅沢なのね」
「だって行くところが超マイナーだよ?」
「いや、マイナーだからこそ宿賃高いんじゃないかしら」
「学校から来たプリントに書いてあった予算見てほくそ笑んでた癖に…」
「……何のことかしら」
そりゃないよ、お母さん。スクランブルエッグをむさぼりながら頭の中でつっこむ。というか、お母さんがほくそ笑むくらい安いのに、三日月飾りの制作料が惜しいとか思っちゃってる校長はきっと頭がおかしいんだ!
「そろそろ出た方がいいんじゃない?」
「うん、じゃ行ってきます、お母さん」
「夜琴、気をつけなさいよ、くれぐれもおみやげ忘れずにね」
「え」
「冗談よ。友達の分をしっかり買いなさいね。友情は大切よ」
「あ、うん! もちろんだよ」
安定のお母さんだわ。お茶目というか、変というか。
始発のバスが来た。ホントはこれだと少し早いんだけど、次のバスだと遅れちゃうんだよね。何事も早め早めの行動が肝心! なんてね。…さすが始発。座席ががら空き。
ところでこのバス、すごく便利。なんと、学校の目の前で止まるという便利さ。素晴らしいでしょ。バスに乗り遅れなければ遅刻の心配はなし。体調が悪くなって、途中で歩けなくなり遅刻という事例が無くなるからね。…まあ、学校の近くに住んでる人しか使えないけど。中高一貫だから遠くから来てる人もいるので、使えないっちゃあ使えないけど。まあでも、私が使えるから問題なしよ。うん。…こういうのをひとりごちるっていうのかな。あれ、違ったっけ。まあ、どうだっていいや。
由美がバスに乗った。品埼町一丁目。
「おはよう、由美」
「おはよう、夜琴。ガラガラだね」
「うん、私乗った時驚いちゃった」
「楽しみぃ~♪」
「機嫌いいね、由美」
「いや、当り前でしょ。だって今日は待ちに待った修学旅行よ。…まあいろいろと校長には文句あるけど。ていうか最初っから京都に行き先設定すりゃよかったのに」
「三日月飾りもさ、なにが経費削減よ、って感じだよね」
「ま、せっかくだし、もちろん楽しみまくるけどね」
「うん!」
おしゃべりしたら、あっという間に学校。楽しい時間って短い。でも、これからだ。
楽しみは、ここから。
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