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30分小説

悲しみ

作者: 雨月 嶽

「ハゲって嫌だよね」

彼の言葉が私の心に刺さる。

一体この男は何を言っているのだ。

私はハゲたくてハゲた訳ではない。

一体どうせよというのだ。

両親ともに、髪の毛は死ぬまでフサフサだった。

もちろん、両親の父母も死ぬまでフサフサだった。

私の2人の弟も、2人の兄でさえいまだにフサフサだ。

まさに髪の毛フサフサ家族。

なのに、私だけがハゲだ。

ザビエルもはだしで逃げ出すほどの、それはもう見事なハゲっぷりだ。

ハゲる原因はどこにあったのだろうか。

学生時代、髪の毛に気を使い外では常に帽子をかぶり(これは今でも続けている)、シャンプーも科学薬品を使わない天然物のシャンプーを使った。お風呂に入って髪を洗うときはマッサージも欠かさなかった。

寝る前にはタオルを巻いて保湿もしたし、リンスも念入りにした。

なのに、なぜ。

20代後半から30代にかけて、急にハゲはじめた。

最初は風呂に入っているときだった。

タイルの上を流れる髪の毛が心なしか多いように思えた。

リビングで掃除しているとき、やたら髪の毛が多く目に付いた。

最初は気にしなかった。

しかし、あるとき会社で長い付き合いの女性社員に言われた。

「部長って、おでこ広いですよね~」

その時の私はあまりそのことを気にしていなかった。

だが、時間が過ぎようともそのせりふが頭から離れなかった。

悶々と考えているうちに、終業時刻になり私は会社を出て電車に乗った。

何気なく、窓に映った自分の顔を見て私は悶絶した。

かろうじて悲鳴を上げるのはとどまったが、驚きがついえなかった。

私の、あたまの頂点から眉毛にかけて髪の毛がごっそり抜け、頭皮の道が広く形成されていた。

しかも、サイドにはまだ自慢の髪の毛が林のように茂っている。

家について、もう一度確認したが現実は変わることが無かった。

つまり、

わたしは、

ハゲていたのだ。

それからの私は地獄にいるようだった。

そんな中、私は街で偶然この友人に出会った。

目の前にの友人はすまなそうに頭を手にやっておもむろに髪の毛を引っ張る。

何のいやみだと思うまもなく、彼の毛が地肌を滑った。

彼もまた、ハゲだったのだ。


 

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