濡れ猫
僕は小学校から一人で帰る。
帰り道の公園、小さな猫がダンボールの中に捨てられていた。
雨が降りしきっていた。
僕は青い傘をかざしてあげた。
僕は家に帰りたくないからその子猫と遊んで帰った。
頭をなでてあげた。
子猫は目を細めながら僕に擦り寄ってきた。
日が落ち暗くなって僕が帰ろうとすると、子猫は大きな目を潤ませながら必死で泣きだした。
僕は「ごめんね」と言った。
子猫はずっと泣いていた。
僕は、少し後ろを振り向いて子猫を見つめながら首を横に振った。
家に帰るとお母さんがお父さんの悪口を僕に向かって言った。
僕は黙って聞いていた。
もうすぐ何が起こるかもわかっていた。
お父さんが帰ってくるとお母さんとケンカを始めた。
僕はふとんの中で怒鳴り声が聞こえないようにふとんを深くかぶって眠った。
夜。子猫が夢の中に出てきた。
「ごめんねえ」と僕は言った。
「いいんだ。人は毎日自分ができることをやるしかないんだ。できないことはやる必要ないよ」
「でも僕本当は君のことを飼いたいんだ」
「わかってる。君は君のできることを僕にしてくれてるじゃないか。毎日自分のできることをすればいいんだ。僕は泣くことしか出来ないけれど。でもそうやって僕達は生きていくしかないんだ。」
次の日、僕が学校の帰り道公園に行くと子猫はいなかった。
しばらくして僕はお母さんと一緒に遠い街で暮らすことになった。