第9話 仲間
「・・・・・・っあ、ロコン、マニー!大丈夫か!?」
少しの間呆然と突っ立っていた俺は、まだ二人の無事を確認していないことを思い出し、二人に駆け寄った。
グレアは眠らせただけとか言っていたが、完全には信用できない。
あいつは悪魔だ、俺を絶望させて楽しむなんて漫画みたいなことでも平然と行うだろう。
「おい、ロコン、マニー、起きろよ!起きろって!」
二人を強く揺さぶる。
何をされているかわからない以上、あまり強く揺さぶるのは危険だったかもしれない。
何処かに怪我をしているかもしれないし、何らかの罠が仕掛けられている可能性もあった。
だが、今の俺の頭からは完全にそのことが抜け落ちていた。
兎に角、二人が心配で仕方が無かった。
一刻も早く無事を確認しないと、俺の頭がどうにかなりそうなほどに、俺は焦っていた。
「二人とも、頼む、頼むから起きてくれ・・・・・・。」
五分以上も揺さぶり続けてるのに、何でどっちも反応しないんだよ・・・・・・。
「お願いだから・・・・・・起きてくれよ。」
「お、おはようございます・・・・・・。」
俺の心を絶望感が満たしかけた時、マニーがゆっくりと目を開いた。
自分の顔のすぐ近くに俺の顔があったことに驚いたのだろう、顔を真っ赤にしている。
「あ、あああ、あの・・・・・・。」
「よかった。よかった・・・・・・。」
「な、何が・・・・・・?」
マニーは起きた。
なら、ロコンも・・・・・・、何で、起きてないんだ・・・・・・?
脳裏に、ロコンを殺すと言ったグレアの顔が浮かび上がる。
あいつは、自分の興味あるもの意外をまるでゴミのように扱う。
自分の手下さえも、邪魔だと言う理由で吹き飛ばした。
じゃあ、ロコンはあいつにとって何なんだ・・・・・・?
あいつの興味を引くような何かを、彼女は持っているのだろうか・・・・・・?
「・・・・・・おい、おいロコン、マニーはもう起きたぞ。いつまで寝てる気なんだよ。起きろって・・・・・・。」
・・・・・・目覚めない。
何で、何で目覚めないんだよ?
まさか、グレア、本当に・・・・・・?
本当に、彼女を、殺したのか・・・・・・?
「おい冗談はよせよ。止めてくれよ・・・・・・。」
俺は、守れなかったのだろうか?
彼女を、守れなかったのか?
俺は・・・・・・。
「神代さん、神代さん!」
俺の肩を揺さぶり、マニーが叫んでいる。
でも、駄目だ。
俺にはもう、何をする気も起きない。
今まで、平和な日本で生きてきた。
人の死なんて、祖父のものしか見たことはない。
ましてや、殺されるところなんて。
それが、俺の力不足で、大切な女を失ってしまうなんて、考えたこともなかった。
先ほどまでグレアと対峙していた中でも、俺は何処か楽観視していたんじゃないのか?
これを、ゲームの延長線上などと、考えてはいなかったか・・・・・・?
あの記憶を見て、グレアの力を目の当たりにして、それでも尚、俺たちだけは大丈夫だなどと、考えていたのかもしれない。
だから、ロコンを失った。
彼女が死んだのは、俺のせいなのか・・・・・・俺が、殺した、のか・・・・・・?
「あ、ああああああああああああああ・・・・・・」
「ちょっと、何で人の横で泣いてるのよ・・・・・・?」
「え・・・・・・?」
「・・・・・・何かあったの?」
幻聴かとも思った。
俺の、生きていて欲しいと願う心が聞かせた幻なのかも、と。
だが、そこに座っているのは、紛れも無く本物のロコンだった。
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微睡みの中、私を呼ぶ声が聞こえた。
ロコンなんて名前で私を呼ぶのなんて、PTメンバーくらいしか思い浮かばない。
男で私を呼び捨てにするのなんて一人しかいないし、これは神代かしら・・・・・・?
そういえば私、今日何してたんだっけ・・・・・・?
たしか・・・・・・そう、ボスを狩りに行こうとして、いつの間にか荒野に立ってて・・・・・・。
「あ・・・・・・。」
そこまで思い出して、私は覚醒した。
そうだ、マニーの記憶を見て・・・・・・その後、どうしたんだっけ?
「あ、あああああああああああああ・・・・・・。」
え?
な、何で隣に神代が座っていて、それも泣いてるの・・・・・・?
マニーも後ろの方でオロオロしているし、どんな状況、これ?
と、とりあえず。
「ちょっと、何で人の横で泣いてるのよ・・・・・・?」
「え・・・・・・?」
「・・・・・・何かあったの?」
神代は、今まで見たこともないほどに衰弱しているように見えた。
いつも自信満々のこいつがこんなになるなんて、尋常じゃない。
ど、どうすれば・・・・・・?
「ロコン・・・・・・!」
「ひゃ!?」
神代がいきなり抱きついてきて、思わず変な声出しちゃった///
て、ていうか何?何なのこの状況は!?
「ちょ、ちょっと、あんたね・・・・・・。」
そこまで言って気が付いた。
神代、凄く震えてる。
まるで、迷子になった子供みたいに。
恥ずかしさなんて、何処かに吹き飛んでいった。
今、ここでこいつを支えてやらなくて何時やるのよ。
こういうときに励ましあってこその仲間じゃない。
「うん、いいよ。いくらでも泣けばいい。何時までも、ずっとあなたの傍にいてあげるから・・・・・・。」
此方も抱きしめ返して、耳元で優しく囁くと、神代は一瞬身震いして、そして、もっと泣き始めた。
ずっと、泣いていた。
ずっと、ずっと・・・・・・。
泣きつかれたのか、一時間後くらいに寝ちゃったけど。
「うん、お休み・・・・・・。」
私は、母親みたいな気持ちになって、神代に膝枕をしながら頭を撫でていた。
マニーは気を利かせてくれたのか、この辺を見て回るって言って行っちゃった。
それにしても、神代の新たな一面を知ってしまった気がする。
こいつでも、泣くことがあるんだ。
胸がキュンとしてしまったのは誰にも気づかれてないよね・・・・・・?
・・・・・・でも、何がここまでこいつを追い詰めたんだろう・・・・・・?
神代が泣いていた原因の殆どが私が起きなかったからだと教えられたのは、それから数時間後、彼が起きた後のことだった。
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今回は(も)会話回ですね。
ですが、この回は神代の甘い考えを吹き飛ばす為にどうしても必要だと思う回なのでご容赦ください。
「ここは現実で、死もありえる」、ということを常に考えていないと、幸運だけを頼りにしていた彼では恐らく仲間を守りきれませんでしたので。
平和な日本ではない、それを認識し、生き残る為に何が必要かを考えさせる成長回でした。