第3話 『マニー』の素顔
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私は、何て罪深い女なのでしょうか。
これしか方法が無かったとはいえ、神代さんとロコンさんを巻き込んでしまった・・・。
あんなにいい人たちを、こちらの都合に巻き込んでしまった。
おまけに、それを言い出す勇気すら無いなんて、何て最低で臆病な女なの・・・?
言わなきゃいけないのはわかってる、けど、この2人に嫌われるのが・・・怖い。
あちらに行ってからの私の初めての友達、そして、好きになってしまった人に嫌われるのが、怖い。
言おうと思っても、唇が震えて、うまく言葉に出来ない。
何かを話そうとすると、涙が出てきそうで、でも、それはあまりに卑怯すぎる。
神代さんもロコンさんも優しい人だから、私が泣いたりしたら許してしまうに決まっているんだから。
・・・私には、泣いて許しを請う資格なんて、ありはしないんだから。
だから、この2人にはちゃんと真実のみを話して、それで私への罰を決めてもらわなければいけない。
それで私の元から去ってしまうとしても、それが私の罰なら私はそれを受け入れましょう。
だから、お願いだから、あと少しだけ待ってください。
せめて、始まりの鐘が鳴るまで、私に時間をください。
絶対、絶対に全て話すから・・・・・・・・・。
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なんだかマニーの様子が変な気がする。
いや、そりゃ本来VRMMORPG 神罰 に存在しない筈の転送らしきものをくらったんだから、混乱するのはわかる、が、あれはそういう類の顔じゃないと思うんだよな。
もっとこう・・・・・・いや、俺の頭じゃうまく表現出来ないが、悔いている、んだろうか?
でも、マニーが責任感じる必要なんてないだろう、あの陽炎に触ったのは俺で、2人は助けようとしてくれてたんだから。
「なあ、マニー、ロコン。悪かったな、俺のせいでこんなことになってよ。」
「そうよー。後でリアルでパフェでも奢ってもらおうかなー?勿論、PTメンバー全員にね。」
とロコンは口に手を当ててフフフと笑っている。
俺を励ましてくれてるんだろうな。
「ああ。集まれる奴ら全員に奢ってやろう。」
「まさか、ワープがこのゲームにあるなんて知らなかったから驚いたけど、転生ポイントは前回の村に設定してあるし、ここがあたしたちがいた場所と離れてても一度死ねば問題無いでしょ?」
「ま、そうだな。」
このゲームはキャラクターが死んだ場合、転生ポイントに設定した村に戻る(このゲームには町や国なんてないぞ。小さな村が点在してるだけだ)。
つまり、死亡は転送系魔法などが存在しない(と思っていた。まさか転送手段があったとはな) 神罰 においての、貴重なワープ手段だ。
まあ、逆にやっと次の村に辿り着くって時に、モンスターに殺されて前の村に戻されるってことはあるけどな(攻撃は派手だが、威力がボスと同レベルあるわけじゃないからな。普通のモンスターと戦うのだってそれなりに苦労するんだぜ?)。
PTプレイ中なら、死んでから数分間なら復活させることができる。
一人で前の村に戻されて仲間の居るところまで一人旅ってのは可哀想だから、運営のせめてもの救済システムだろうな。
「じゃあ、PT仲間に連絡してから死ぬわ・・・よ・・・・・・?」
「ん?どうしたロコン?」
「か、神代、あんた、メニュー開ける・・・?」
何言ってんだこいつは?
開けないわけがないだろうに。
「って、アレ?」
開けない。
一体どうなってんだ?
何度開けと念じても、開かない。
「なあ、マニー、お前は開けるか・・・?」
そう尋ねて振り返ると、
「・・・グス・・・・・・っひ、ご、ゴメ、ごめんなさい・・・。」
え、えええええええええ!?
な、何!?何で泣いてるのこの子!?
俺のせいか、俺のせいなのか!?
「ちょ、ちょっと神代、マニー泣かせないでよ!」
「やっぱり俺のせいなのか!?」
「当たり前でしょ!謝りなさい!顔が怖かったのよきっと。」
な、そ、そんな怖い顔で見たか俺・・・?
スゲーショックだ・・・。
「あー、悪かった。別に睨んだつもりはなかったんだが・・・ちょっと気が動転しててな。」
「ちが、違うんです。」
「ん?」
「誤らなきゃいけないのは、私のほうなんです・・・」
何だ・・・?口調がいつもと違う・・・?
俺たちは、それからマニーの懺悔を聞いた。
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何をしてるの私・・・?
泣かないって決めたはずなのに。
始まりの鐘が鳴ったら全てを、私が隠してきた全てを話そうって決めたはずなのに・・・?
どうしてこうなるの、どうして、どうして、どうして・・・?
自分でもわけがわからない内に、私の唇は震え、言葉を搾り出していました。
「わ、私が、私が2人をこちらに連れてきたんです・・・。この死にかけた世界、<<アウグス>>へ。MMORPG 神罰の元になった世界へ・・・。」
「神罰の、元になった世界・・・?」
神代さんが、驚きながらも私に問いかけてきました。
「信じてもらえないと思います。でも、でも、これから話すことは全て真実なんです。この世界が滅びを迎えようとしていることも、私が、2人をここに連れてきた、ことも・・・。」
何で!?何で涙が・・・。
「わ、わた、私が、・・・」
そのとき、ポンと私の頭の上に大きな手が乗って・・・頭を優しく撫でてきました。
「あー、その、な。何があったのか知らないけど、そんなに泣くほど後悔してるんだろ?なら、俺たちがお前を叱るはずがないだろうに。」
「そうよマニー、あなたの言うとおりここが、異世界?でも、この3年で私たちが築いた絆はこの程度で壊れるほど安くはないの。」
「そうだな。この上で更に世界を救ってくれって言われても、それがお前の望みなら叶えてやるのが友達、だろ?何でも言って見ろよ。俺は<<運だけで生きてきた男>>だぜ?どんな苦難でも、笑って乗り越えてやるさ。」
何で、何で・・・。
「何で、2人とも笑ってるの・・・?」
そう尋ねると、2人は顔を見合わせて楽しそうに笑った。
『やっと本当のマニーを知れるからに決まってるじゃん!』
私は、その言葉を聞いて、もう我慢できなくなりました。
「う、うああ・・・、うわああああああああああああああああああああああああああああああ・・・・・・。」
2人は、こんなに汚い私を、泣き止むまで優しく抱きしめてくれました・・・。
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ごめんなさい。
前回の後書きでストーリーが進むとか言っておきながらこの状態。
でも、これからこの話を書く上で、マニーのことはどうしても外せないと思ったんです。
簡潔にするといつものように中身の無い文章になっちゃうし・・・各キャラの心情も書いて見たいので、これからもかんな感じになるかも知れません。
面白くなるように努力するので、よろしくお願いします。