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特任騎士のオレの仕事は、暴れる王女サマを見ていることです  作者: 月待 紫雲


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39話 疑い

 冒険者約20名。


 ぞろぞろと道を歩く。強さはまちまちだ。魔物を抑えることが目的なので、ガスト級をメインに、ウィンド級とゲイル級が混じっている感じ……らしい。らしいというのはジンジャーに聞いたからである。


「なぁ、魔女というのはどんなやつだ」


 エルゼ王女が、オレに尋ねてくる。

 草原を突っ切る道を通る中で、オレたちは後ろの方にいる。他の冒険者は自分のパーティーメンバーと会話をしていて、他など気にかけている様子はない。


 何人か、敵襲を警戒しているやつは、もちろんいた。


「……ロマ?」

「魔女でしたね。一度だけありますよ」

「おぉ、どんなやつじゃった?」


 思わず口を閉じる。


「魔女の話か? アタシも聞きたいねぇ」


 黙り込んでいる間に、ジンジャーが割り込んできた。


「今回のやつと全く違うと思いますよ。何せ、弱(・)かったので」

「そうなのか」

「えぇ。大したもんじゃありませんよ。なので、問題ないかと」

「うぅむ、残念じゃな」


 おい王女。


「魔女は強いと聞くけど」


 ジンジャーの方は魔女初討伐なのか、そんなことを聞いてくる。まぁ、人生で魔女に遭遇する機会なんてほぼないだろう。だいたい教会側が討伐しに行って、「魔女討伐しました〜」と大々的に発表するのが主だし。

 それも稀だ。


「魔女だって冒険者と同じでピンキリなんだろ」


 ジンジャーは疑わしそうにこちらを見て、それから指をさしながらエルゼ王女に顔を向ける。


「お嬢ちゃん。ロマ基準で弱かったは当てになるのか?」

「あまりならん」


 即答された。


「ぷっ、じゃあ役に立たないじゃないか!」


 笑い出すジンジャー。

 いや、オレの感覚は当てになるだろ。一般人……は言い過ぎか。元暗殺者だし。


「エルゼ様よりはマシっすよ」


 比較的マシ。うん。


「その言い分だとお嬢ちゃんの方が強そうだね」

「そんなわけなかろう? こんな子どもに力なんぞない」


 手をあげてさらりとウソを言う。


「アンタは無茶ぶりがひどいんですよ」


 こういうところとかな。


「補助はしてやってる」

「戦うのはオレなんすけど」

「あはは、いいねえ! 仲がよろしいようで」


 エルゼ王女はニッコリと笑みを浮かべた。


「当たり前じゃ。な?」

「え? あ、ハイ」

「なんじゃその曖昧な返事は」

「主従なもんで」


 腰を殴られた。


「いて」

「ナ・カ・ヨ・シ」

「ハイ」


 素直に同意しておく。仲悪いわけじゃないしな。


「雇われなんだな、ロマは」

「えぇ」

「その前は何を」

「適当に旅してましたよ」


 暗殺者だったんであちこちを。


「しかしロマはともかく、お嬢ちゃんがその若さでガスト級は驚いたよ。ヴライクが強さを疑うのも無理はない」

「才能があるのでな」

「それでもだ。その幼さでガスト級だと、な。ほら、魔(・)女(・)も(・)年(・)齢(・)に(・)関(・)わ(・)ら(・)ず(・)強い力を持つっていうじゃないか」

「……何がいいたい?」


 低い声で、エルゼ王女が問う。


「聖女認定をもらっての特例だ。ありえぬ話を持ち込むな」


 反論を待たずに、怒りをあらわにする。


「いいや。疑ってはない。客観的な話をしているんだ。真っ当な強さを身につけるには幼すぎるってね」


 ジンジャーは手を振りながら弁明する。


「聖女の扱う魔法の軸は信仰心だ。祈れば叶う」

「信心深いんだね。あのウラリア様と同じで」


 そいつもウラリアと同じ一等聖女です。ちなみに欠片も信仰心ないです。


「冒険者として長く生きてると疑い深くなっちまう。気分を悪くしたなら謝るが、そういうこともあると思ってくれ」


 ジンジャーの目がこちらに向く。わかるだろ、と言いたげだった。

 わかるよ。オレ、ダインスレイヴ教団を裏切った側だからね。


「認証だけでは不満か……うーむ」

「とびきり強いセンス持ってりゃ納得だけど、証明する手段がアタシらじゃ限られるしね。アハハ!」


 エルゼ王女のセンスはクッソ強いんですけどね。しかも2つ。でも、証明する手段がないっていうのは、そうだ。


 確認ができなければ確信は得られない。それがなければ安心はできない。当然の話だ。




◯




 いきなり冒険者の集団が来て泊めろといっても、宿に限界がある。今回のような大規模攻略になると基本野宿になる。


 拓けた場所に火を起こし、それぞれが野宿の準備をする。襲撃があっても対応できるように、見張り役が何人か起きているので、問題はない。


 エルゼ王女が点けた焚き火のそばに座り、オレは火を眺めていた。


 エルゼ王女は寝ている。魔物の素材を使った高級な寝袋だ。ぐっすり寝れるだろう。


「おい」


 声をかけられて、目を向ける。


「ボクと勝負しろ」


 剣を前に出して要求してきたのは、守り手のニエベだった。


「理由がないね」


 というか自分のことボクっていうタイプだったんだ。珍し。


「ボクにはある」

「オレにはないって話」


 明日には魔女とやらと戦わなければならない。正確には魔物のほうか。どれだけ強い魔物がいるのかもわからないし。ゆっくりしておきたいね。


「ボクは、ウラリア様の守り手だ。オマエに、あんなあしらわれたままでは納得がいかない。1対1でちゃんとした勝負をしろ」

「うーん。この間の二の舞になると思うけど」

「あれから時間も経った。簡単にはいかない」


 仮面で表情は見えないが、本気度というのが窺い知れた。対してオレは何も感じてない。テンション差がヤバい。


「ロマ様」


 どうしたもんかと思っていると、ウラリアまで来た。


「彼女に、剣を教えてあげてくれませんか」

「教えるもんなんて何もありませんよ。流派が違うでしょう?」

「えぇ。でも、見せることはできるでしょう」

「オレのメリットがありませんね」

「ないかもしれませんね。ですからお願いです」

「ウラリア様! こんなやつにお願いなど」

「ニエベ」


 ウラリアはその一言でニエベを黙らせる。


「剣を見て。そして見せてあげてください。エルゼ様をお守りする立場であるのなら、ニエベの気持ちもわかるのではないですか?」

「……あー、ハイ」

「……あれ? なぜでしょう? 今凄い間があったのは……」


 いやごめん。さっぱりわかんない。そもそも、守る立場っつっても建前だし。オレよりエルゼ王女の方が強いし。


『お主がいなければ死んでいたやもしれん。だから――ありがとう』


 …………。

 ……そういや、そういうこともあったな。


 オレは立ち上がる。


「ちょっとだけですよ」

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