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特任騎士のオレの仕事は、暴れる王女サマを見ていることです  作者: 月待 紫雲


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33話 馬車にて

 ウラリアとニエベは馬車内で並んで座っていた。教会の本部に戻る途中である。


「良かったのですか、ウラリア様」


 仮面をつけたまま、ニエベはウラリアに尋ねる。


「何がです?」

「王女殿下のことです。あのままでいいので」

「どうにもできないことをあがき続けても仕方ありません。猫の手も借りたいとはいえ、狂い猫はごめんです」

「教会の脅威になりませんか」

「教会次第でしょう」


 少なくとも今日のことは許されるだろう。あとは、あまり王族を刺激しなければ問題はないはずだ。


 誰しも己を害するものには容赦しない。簡単だ。


 隣人は愛するもの。害するものではない。今回は王女をこちらに引き込むため、教会が焦っただけのこと。


 なにせ、1ヶ月で聖女に必要な魔法を習得し、一等聖女になったのだ。規格外にもほどがある。ウラリアの裁定魔法まで見て習得されてしまった。


 あの才能は手放したくない。そう思うのは自然だ。あの力があればより多くの人を救えるだろう。


「敵にしなければ味方にはなります。一時的でも、ね。無理に懐に入れようとすれば破られるのは我が身です。ですので、王女の件はこれで終わり。そう進言しておきます」

「……さすがウラリア様です。深く考えていらっしゃる」

「いえ。ところでニエベ」

「はい」

「あの騎士、あなたの目には見えるのですよね」


 首を傾げられる。


「わたくしには、最初、あの方は視(・)えませんでした」

「ウラリア様が……?」


 ウラリアには何も見えていない。盲目であるからだ。しかし、魔力が視える。それで、人の形がわかる。魔物の恐ろしさも知れる。


 ロマという騎士は最初、視えなかった。


 それはすなわち、周りの魔力と境目がわからないくらい、魔力を調整できるということだ。砂嵐の中、目当ての石を見つけるのは難しい。


 ウラリアの認知できる魔力は表出する魔力。潜在的なものや隠されているものは知覚できない。


「透明人間、ということでないのなら安心です」

「ボク……アイツが嫌いです」

「どうしてですか」

「ウラリア様に目のことを言ったからです」

「あら。でもきっと、あの方は本心で言ったわけじゃありませんよ。王女殿下を守るために、そういう手段も取るというだけです」

「でも……」


 ウラリアはニエベの手を握った。怒りのせいか震えていた。


「火事で燃える中、あなたを救い出せたのはこの体質あってこそです。なので、気にしていませんよ」

「ウラリア様……ボク、もっと強くなります。アイツよりも」


 特任騎士に軽くあしらわれたことを気にしてか、そんなことを言われる。


「はい、期待しています」


 王女に、騎士。


 なぜあれほど強いのか疑問は残るが、肝要なのは敵にならないこと。

 となれば、まず第一に詫びの品を考えなければならない。


「ニエベ。詫びの品は何がいいでしょうか」

「そうですね……剣はどうでしょうか」


 あぁ、そういえば折っていましたね、と振り返る。王女の喜ぶ品を探すよりも、騎士に役立つもののほうがはるかに用意しやすいのは確かだ。


「しかし、どのような剣がいいでしょうか」

「それは……わかりませんが」


 戦闘を振り返る。


 折れていた剣は彼専用のものではないだろう。騎士になったものに渡されるショートソードの類のはずだ。


「……あ」


 記憶の中で、明確に彼の剣だとはっきりわかるものがあった。好都合なことに、ウラリアの記憶に刻みやすい形のものだ。


「帰ったら職人につくらせましょう。そうですね、魔力の通しやすいものにします」


 彼の、魔(・)法(・)剣(・)。




◯




 全く、ひどい目に遭った。まさか一等聖女サマと戦うなんて事態になるなんてな。


「で、なんで隣なんです?」

「ひとりでつまらん」


 御者台。オレの隣にエルゼ王女が座っている。


「お主も王女が隣におって嬉しいじゃろ」


 上目遣いでこちらを見る王女。中身がこうじゃなければなぁ……。


「いや別に特別嬉しいわけでも嫌なわけでもないですけど」

「ところでどうじゃった? 裁定魔法」

「どっちのです?」


 主語を入れてくれ主語を。アンタも使ってただろうが。といってもオレの言う事なんて「派手っすね」くらいしかないんだけど。


「相手のじゃ」

「固い魔法でしたね」


 オレの剣折れたし。感覚麻痺しがちだけど、鋼の剣が折れたり曲がったり黒焦げになったりがおかしいのよ。


「魔法剣ではスパッとイけていたではないか」

「魔法くらいスパッといけないと困るんで。というか、最後の特大剣は斬るのに苦労しそうでしたけどね」

「ではワタシの裁定魔法も、お主が斬るのは難しいか?」

「剣の形にされたら、ですかね」


 魔法を斬る、という点において魔法剣は便利だが、相手も魔法武器の類を使われると鍔迫り合いが発生してしまう。武器という概念に引っ張られるからだ。


 ま、オレが最終的に斬りたいのは魔法じゃないからどうでもいいんだけどね。こちとら元暗殺者だから。命(タマ)取れれば何でもいいわけよ。


「なるほど。あと探知のすり抜けはどうやるのだ?」

「空気になりゃいいんですよ」

「さらっと言うな。できるわけないだろ」

「できますよ、そのうち。空気読めないと死ぬくらいになると」

「何じゃそれ。どこだ? 六影か?」

「六影ですね」

「倒せるのかそんなやつ」

「エルゼ王女なら魔法でドカーンと」

「剣での話をしとるんじゃ、あほう」

「そんなこだわんなくていいのに」


 会話をしながら馬車を進める。


 久々の会話は、ま、楽しいわな。

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