第5話 魔術書
消し炭の片付けを終えて、さっき呼ばれた通り父さんの書斎に向かう。正直とても不安である。何を言われるんだってばよ。魔法禁止!とか言われないだろうか。
父さんの書斎の扉の前に着いた。数回扉を叩いてもう入り慣れた書斎の中に入った。
「父さん、呼ばれた通りきました。」
「おぉ、リン。来たか。じゃあ早速リンに聞きたいことがある。」
少し間をあけてこう尋ねた。
「リンは冒険者か研究者、どっちになりたい?」
「....え」
なんで今尋ねたのかよくわからない選択肢をぶん投げられた。なんてことを2歳に聞いとんねん。
「いや、別に今すぐに答えろってわけではないんだ。ただ、リンは魔術の才能があるから...魔術を使って、戦って、食ってける冒険者か.....魔術の研究者になった方がいいと思う。」
とても悩んだ。今はまだ決められない気がしてそれを父さんに伝えようとした。が、口が動かない。なぜかは分からない。困惑していると急にあることを思い出した。あの声を。2年以上は聞いていなかったあの懐かしい声を。そうだ。あの声は僕に会いにきてと言っていた。もしあの声の主がこの世界にいるならば、僕は探すために冒険者になった方が良い。なんてったってあの声の正体を、そして失った気がする記憶の真相を、僕は今、知りたくてしょうがない。いやまあ研究というのも面白そうではあるが、あの声の方が重要だ。
「....僕は、冒険者になりたいです!」
「....そうか。父さんは全力でリンのことをサポートするぞ。例えば....魔術を使うと言えど便利な剣術とか、冒険者といってもある程度の学は必要だ。学問も教えてやる。ただ、魔術に関してはからっきしなもんで、それは母さんに聞いてくれ。」
「はい!ありがとうございます!父さん!」
「おう、頑張れよ。ああ、あと....」
何か言いながら本棚から何冊かの分厚い本を抜き出す。
「ほい。これ。」
「こ、これは?」
「魔術書だ。リンが今使ってるような子供用のものではなく、しっかりとしたものだ。」
「わぁ....ありがとうございます!」
「いやいや父さんとしてこれくらい協力させてくれよ。 リンには立派な人間になってほしい。」
「本当に....ありがとうございます!父さんみたいに立派になれるように頑張ります!」
「お、おう!いい心がけだ!」
父さんに媚びを売ろうなんて気持ちはない。断じて。けど父さんの期待には応えられるような人間になりたい。こんな2歳なのにありえない威力の魔法ぶっ飛ばしてる不気味な子供に色んなものを与えようとしてくれる。支えてくれる。恐怖じゃなくて笑顔を向けてくれる。それがとっても嬉しく感じていい父さんだなぁってしみじみ思う。
その日の夜。今日はなんだかいろんなことがあって疲れたからさっさと寝ようと思ったけどどうしても父さんにもらった魔術書が気になってしまった。そういえばあの「はじめてのまほう」にあった魔術は5等って言ってたよな....この本は何等の魔術が書いてあるのだろう。本の色んなところを探してみるけど何等かは書いてない。
「父さん、どうやってあの本が5等だけの本だってわかったんだ...?」
悩んでいてもアレなのでとりあえず見てみた。そこには水、火、土、風のそれぞれの色んな魔術の構造だとか名前(祝詞っていうらしい)だとかが埋め尽くされていた。大体1ページに1個の魔術。約100ページくらいある。多すぎんだろ!最初の方は分かりやすそうな、まだ頑張れば使えそうな魔術が並んでいた。が、半分を過ぎた頃からおかしな魔術が並んでいた。
「なんだこの魔術、水と火の融合...?こっちは火と風の?」
とまあそんな感じで後半は複数属性を持った魔術が現れた。そして最後のページをめくって裏表紙。そこには、”2等魔術:60個、1等魔術:46個”と書かれていた。
「は」
腑抜けた声がつい出てしまう。なんてもの与えてんだ父さんは。2歳に何させようと。何より3等と4等はどこに行った?ないんですか?もう意味がわからなさ過ぎて、寝た。
「あー、聞こえてるかな?うん、聞こえてそうだね。よかったよかった。」
あの懐かしい声がする。2年ぶりくらいかな?この声を聞くとなんだか安心するような、張り詰めてたものが切れるような感覚がある。
「それで、僕に会いにこようとしてくれて嬉しいよ。冒険者になるんでしょう?その気持ちだけでも本当にありがとう。」
沈黙。静かな時間が流れる。
「あーえっとまだ一応2歳だもんね?無理しないでいいから、会いに来るならゆっくりでいいから。あと、しっかり準備もしてから来てね。今の君は、まだ準備ができてない。その状態じゃ、僕に会えないからさ。準備、しっかりね。」
準備って何?と問いたいが、言葉を発することができない。
「じゃあ、またね。ゆっくりでいい。僕はもうちょっと粘れるから、いつか、全部思い出して、失ったもの全部取り返して....
また僕に会いにきてね。」
僕は、深い眠りについた。音も無い静かな眠りに....
どうも!あんねーむです!第5話読んでいただきありがとうございます!よければ感想等を残していただけるとありがたいです。次話も見てね!




