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1話「私と、あなたと。」

俗に言う処女作とかいうやつです。

楽しんでいただけたら幸いです。

「ユウ、次移動教室だよ。」


「りょうかーい。えっと、、、」


こういうとき彼女はとても朗らかに返事をする。高校に入ってからできた友達で、いい奴。それが影山悠という女の子だ。


「総合。だから筆箱と端末だけあればいいはず。」


彼女は授業を真面目に受けないタチだ。だからかいつも予定黒板を見ないし、毎週同じ時間割のそれを把握しない。羨ましいまでに能天気。


「で、その端末は。」


「忘れちゃった。」


これまたいつも通りの彼女である。


「偉いよねーマオは。忘れ物しないし。こうなんていうか、真面目、、マオの場合はちょっと違う気もするけどそんな感じ。」


「そう。私はユウが忘れ物しすぎだと思うけど。」


「うーんやっぱり?。」


「うん。」


「そっかー。」


いつもこんなようなことを話しはするが、結局本気で直そうとはしていない。彼女らしいマイペースさだ。見習いたいところである。


他愛もない話をしながら目的の教室に向かっているとチャイムが鳴った。キンコンカンコンとかいう冠婚葬祭の友達のような気の抜けた響きのそれだ。


「チャイム鳴っちゃった。まあ急いでも間に合わないしまあいっか。」


「間に合わないのは同意。でも急いだ方がいいんじゃないかな。」


「なんで。」


「あの先生遅れてくと絶対当ててくるでしょ。悪びれずに入ってきた子に説教始めたこともあったっけね。」


「あーー。じゃあ急ごっ。」


そうして階段を駆け出す。こんな時ばかりは8階建てのこの校舎を恨めしくおもう。でも、悪くない。ちょっぴり悪いことをしているような気分で、そして共犯者がいる。こういうのは、悪くない、むしろ楽しい。私だけでは決して見られなかった景色を見せてくれる。この言葉はいかにもキラキラしていて好きじゃないけれど、それくらいしか当てはまる言葉を思いつかないのだから仕方がない。私はきっと今、最高に青春している。


そうして遅れていった授業では結局当てられた。それも私は2回も。なんだかあの教師に嫌われているような気がしないでもないが、こうは考えられないだろうか。あの教員は私の事を信頼している。安定した回答をするので重宝されている。こう考えておいた方が彼の事を嫌いにならずに済む。嫌いな相手は、極力少ない方がいい。


「やー、結局当てられちゃったねえ。マオちんは2回も。災難だったね、うんうん。」


こうして鬱陶しいのは悠である。相変わらずの調子で災難とか言っているが絶対思っていない。十中八九そうだ。


「何言ってるの。ユウこそ当てられてあたふたしてたくせに。」


「だって今日は当てられないと思ったんだもん。」


ほっぺたを膨らませるような顔をしながら言った。ちょっと拗ねているような、慰めて欲しいような時に彼女がよくする顔だ。


「ふふ、そうね。」


曖昧に返事をして、2人揃って教室から出る。


「そうだ、図書室によってもいいかしら。」


「いいよー。本当に本が好きだねえマオっちは。」


私の呼び方が一貫していないのも相変わらず。


「今日はどんなの借りるの?」


「えーと、気の向くままに、かな。いつも目についたの適当に借りてるから予め決まってることはほとんどないよ。」


「そっかー、私も何か借りてみようかな。」


悠が本を読もうと言い出すとか明日は雪でも降るのだろうか。しかし彼女がどんな本を読むのか興味はある。


「ユウは普段どう言う本読むの?」


「うーんとね、絵本とか?。」


唖然としそうになるのをすんでのところで堪える。それは悠にしても余りにもではないか。いや、最近は大人向け絵本というのも流行っているというし案外おかしくはないのか。


「うちのねーチビどもと一緒によく読むんだ。」


なるほどそういうことなら合点はいく。弟もしくは妹がいるというのは初耳だが。


「ユウってきょうだいいるんだ。勝手にひとりっ子だと思ってた。」


「それいっつも言われるんだよねー。この溢れ出るお姉さんオーラに気づかないとは、、、。」


「いや、溢れ出てないから。それで今日はどんな本借りるの?。」


「えーっと、、決めらんないからマオちゃん選んで!」


なんとも勝手なやつだ。私の趣味の本なんか進めたところで彼女はきっと読まないだろうし、どうしたものか。


「ちょっと待って。真剣に考える。」


「あ、いやそこまでの気持ちで言ったんじゃないからホントに適当でよくっt、、、、」


「私が選ぶからには楽しんで読んでほしいじゃない。」


「あ、はい。」


そこで落ち着かれましても。絵本、小説、新書、自己啓発本、女子の口説き方、、、、こんな本まであるのかこの図書室。そんなこんなで図書室をウロウロしていると一冊の本が目に留まった。


「ねえ、これなんかどう?」


水色の鳥が印象的な出版社の作品。ジャンルはファンタジー。


「私が小学生のときに何度も読んだ作品でね、とっても面白いの。1人の女の子が成長していくお話でね。ネタバレはあまりしたくない主義だからこれ以上は読んで欲しいんだけれど、どう?」


「じゃあ、それで。」


「読んだら感想聞かせてね。」


「うん。」


意外なことに彼女はそれを土日込みの3日で読んできた。それにいつの間にか2巻を借りている。


「感想はどう?」


「面白かった。じゃなきゃ続き借りないって。」


「そう、ならよかった。」


予鈴が鳴る。私も久々に読み返そうか、とか考えながら自分の席を目指す。私たちは、こうして影響しながら、されながら生きている。この関係性がいつまで続くかわからない。でももうしばらく、彼女とは友達でいたい。

書き始めると思ってたんと違う子が出力されてとても楽しいですね。

誤字脱字などないよう気をつけてはおりますが極端なものがあったら報告していただけると幸いです。

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