第6話 ユフィ・カラー
「というわけで、放課後になったら少し話をしようと思うんだけど・・・一緒にいかないか?」
1人で行くとナンパと思われそうなので、話して手比較的仲良くなった2人を誘ってみた。
「悪いけど、俺はこの後用事があるんだわ。先約ってやつだな」
ブックは先約がいたのか。
先に約束していたのに・・・ってのは俺も嫌な気分になる。頼めないなこれは。
「ごめん!今日、友達と行こうと思っていた店のオープン日なの!」
そういって手を合わせて謝ってくるシール。
無念!彼女にこそ一緒に来てほしかった。
相手は女生徒だしな・・・まあ先に約束があるなら仕方がない。
「しかし・・・デートに誘うなら俺たちが一緒じゃないほうがいいんじゃないのか?」
「いや、人の話聞いてたか?デートの誘いじゃないからな?」
「けど、話をしに行くっていったよね?そういうことじゃなく?」
「まだ一度も話をしたこともない相手を誘うのって・・・難易度高すぎる」
ちゃんと言ったのに勘違いしてやがった。
声かけたの失敗だったか?
「うーん・・・まあ、気になることがあるのは実は俺もなんだがな」
おや?ブックくん、彼女を狙ってるのか?
これまで話をしていて、俺と違ってこの世界の住人であることは間違いないだろう。
「あ、もしかして私と同じこと気になってるのかも」
ぬ?
シールも気になること・・・?
「お前が気になるって言ってる彼女なんだが・・・カラー家ってあったっけ?」
寝言を言ってる。
お前もカラー家だろうが。
「やっぱり同じことだった!聞いたことないよね、カラー家って!」
困ったぞ。2人して白昼夢を見てるのか・・・?
「チラッと聞こえたんだが、俺も聞いたことなかったから不思議だったんだよな」
同級生男Åが同じこと言ってくる。
集団白昼夢かこれは・・・?
「・・・いや、わかるかよそんなの」
その後近づいてきた他のせいとも同じこと言ってきたので気になってちゃんと聞いてみた。
困ったことに、この世界の住人はそれぞれの家名「カラー」が違って聞こえているようなのである。
それで、彼女の家名を聞いたことがないと言っていると。
俺には全部一緒にしか聞こえない。困った問題だ。
他の転生者も同じなのだろうか?
自分から転生者と公言する気がないので確認しようがないんだよな・・・さっきの中には判別できていた生徒がいなかったから。
「・・・それで?」
目の前に、滅茶苦茶睨んでくる女生徒。
そりゃ、まあ・・・わからないでもない。
「どう考えてもナンパしに来ましたという感じしかしないんですけど・・・」
いきなりやってきて「君のことが気になる」なんて言ったらそう思われるか。
そう、目の前にいるかなりご立腹の様子でこちらを見てくるのが俺が話をしに来るって言っていた相手。
ユフィ・カラー。
正面に立って見てよりはっきりとわかる。
彼女は、あのゲーム内に登場していないことが。
もちろん、主人公は今の俺とは違うクラスに所属している。
「そちら側」ではモブとしても登場していないのは明白。
それ以外、例えば「他のクラスの生徒も描写されているシーン」にも登場していた記憶はない。
当然、全生徒が登場していたと言うつもりはない。
それでも、これだけ特徴のあるキャラを「あの会社」が脇役ですら登場させなかったとは思えない。
なにより、気になっていたことがはっきりと分かった。
彼女は・・・だれかに非常に似ているんだ。
いや、それが誰に似ているかというのはすでにわかった。
ヒロインの1人に非常に似ているんだ。
性格は全く違うと思う。だが、その容姿は非常に似ている。
全く関係ないとは思えないくらいに。
それ故に気になる、彼女の存在が。
だが・・・思い出せない。その人物に関することで、なにかを忘れている気がする。
直接会えば思い出すかと思ったんだが・・・思い出せない。
それがわかれば、彼女が何者なのかわかるんだが。
「・・・話がないなら、もう行ってもいいでしょうか?」
しびれを切らしたか。
「ごめん。少し考え事をしていた。・・・他の生徒が君の家名を知らないって言っていたのが気になってね」
とりあえず、今気になる情報から攻めてみよう。
俺は違いがわからないがな。
「あまり知られていないのも無理はないかと。過去に少し不祥事をやらかした家系ですので。・・・先代の騎士が武勲を立てて、その恩賞で罪をゆるめてもらえるようになりました」
納得はできるが・・・不祥事をやらかした家系から騎士を輩出することができるものなのだろうか?
答え、できるな。
確か法の中にそれがあった。
昇格することはできないが、一騎士として所属することならできる。
それができないと、一般家系から騎士を募ることはできないと思われたからだ。
この国は経済的に豊かというわけではない。
俺の住んでる地域ではそういうことはないが・・・首都に近くなると税が高くなる。
それ故に、軽犯罪に手をだす者が少なくないそうだ。
そういった者たちの中からも、マナ値の高い者が見つかったりする。
それ故に、ある一定基準までの軽犯罪であれば「騎士となり武勲を立てることで罪を清算する」という法ができたのである。
この一定基準だが、貴族になると若干緩くなる。
簡単に言えば「お金」である。
もっとも、袖の下といったわけではないがな。
国家運営のための税金を、上乗せして渡すことによってというわけだ。
・・・説明が面倒になってきた。とりあえず「お金いっぱい渡して騎士にしてください。代わりに武勲を立てて見せます。立てれたら恩賞ください」ってことだ。
この方向からの追及は無理だろうな。
さてどうしたものか・・・と?
見ると彼女の視線がこちらから外れている。
そちらを見ると、生徒たちが歩いている姿が見えた。
というか、主人公とヒロインたちだな。
全員というわけではないが、3人いるか。
どうやら順調にハーレムを目指すための好感度稼ぎをしているようだな。
・・・その中に、彼女も入っているか。
俺が正面に立っている彼女が気になる理由と言えるヒロイン。
この国の第二王女の姿が・・・っ!?
その瞬間、俺の中の記憶が蘇る。
第二王女にかかわる「ある」開発秘話。
ついにストーリーが追加されることもなかったが、「第三王女」がいるという。
「ゲーム内に登場する第一、第二王女のほかに実は第三王女がおります。
彼女は側室どころか、城勤めのメイドとの間に生まれた子供で王位継承権はもっていない。
そんな彼女だが、姉妹の中は良好。一時、メイドを一度解雇したあとで側室として迎えるという案が王妃からでたほど。
だが結局メイドはメイドとして城に務め続けることを選んだ。
第三王女は、王女の中で一番起動鎧の操作が上手いという設定で、身分を偽って学園に入学しているという設定がありました」
優秀だけど、第二王女とのルートで追加要素が増えることになり、追加コンテンツでも登場が難しいとのことだったかな。
学園では、違うクラスになるように能力を調整して入学したって話だ。
つまり、目の前にいる彼女こそ、この国の第三王女
「ユフィリア・リナ・アステリス第三王女・・・」
俺のつぶやきに、彼女は目を見開いた。
そりゃそうか。彼女の名前なんか公表されてるわけがない。
なのに、俺がその名をつぶやいた。正確に彼女の隠された名を。
といっても、俺には彼女のことで気になっていた部分が解消した。
なので、話はこれでおしまい!
「大丈夫。俺は何も話さない」
そう言って、その場を立ち去るのであった。
後には、どうするか悩んでいる彼女だけが残された。
翌日
「よう!結局デートの誘いはどうなったんだ?」
デートじゃないって言っただろうが。
というか、彼女もいる教室で堂々と聞いてくるかこいつ。
彼女も気になるのか、横目でこちらをチラチラと見てくる。
なので、こうなる可能性を考えていた俺の回答。
「デートじゃないって何度も言っただろ?気になることがあるだけだって」
「そうだったか?それで、それは答えてもらえたのか?」
「ああ。教えてもらえたよ」
そう言うと、彼女は明確にこちらに視線を向けてくる。
大丈夫。話さないよ。
「実はデートの誘いかって聞かれたんだけど、昔の知り合いに似ている気がしてたからどうなのかが気になってたんだ。まあ、少し話して違うってのもわかったけど『そう言ってくるナンパですか?』って白い目で見られたのがな・・・」
「そりゃそうだろ」
お前がそんな目で見てくるんじゃないよ。
その後、たわいのない話になった。そう・・・今日行われるという小テストの存在を2人して忘れていたという話で青い顔を2人でしていた。
少し彼女のほうを見ると、元の表情になって予習をしていた。
ただ・・・少し表情がやわらかかったような気がしなくもない。
まあ、気のせいだろう。
前回のあとがきの答え「王女の結婚式」でした。この場合の王女は、ヒロインの第二王女のことですね。
この世界の人にとっては、違って聞こえたりしているようです。
なお昔は、作者は「雲」と「蜘蛛」を聞き間違える確率が高かったです。そんなもの。




