閑話 主人公も転生者
「しかし、この状況は想定していなかったな・・・」
アーリア・リナ・アステリス。赤い髪の毛をしたこの国の第二王女。
入学式の時、誰よりも早くこの学園にやってきた新入生。
その人物がまさかの英雄の素質を見出すとは思っていなかった。
だが、今想定していなかったことは別のことである。
彼女がいる場所は、この学園に入学する王族に用意される専用寮である。
そこは本来、入学する王族と専属の寮長が1人。
そして、その年に入学する一部の貴族の子息が暮らすように建てられたものである。
貴族と言ってもだれでもというわけではない。具体的に言うなら「公爵家」である。
今年に関しては、同年代の子がいなかったので彼女一人で暮らすことになる予定であった。
だが、入学式の後の測定検査で「英雄の素質」を持った生徒が見つかることとなった。
その人物の今後も考えてこの寮で暮らすように説得をした。
まあ、なぜかその説得は「まったく話がこじれることがなく」受け入れられることとなった。
では、彼女の想定していなかったこととは。
それは、いま彼女のいる食堂の机に座っているメンバーである。
そう、本来は彼女と英雄「だけ」が暮らすことになる予定だったこの寮にほかの人物がやってきているのである。
それも「同年代の女生徒」が5人である。
最も、そのうちの3人は彼女の知る人物であった。貴族家の者だったからである。
上座に座る彼女のすぐそばの席に座る、金髪ストレートの女性「ルリス・リーベルト」。
同じ女性で同じ年齢なのに、どうしてこうも体型に違いが出るのかと思う相手。
代々、起動鎧の近接戦闘において優秀な人材を輩出している名門家である。
彼女のそれに恥じぬ腕前、年齢としては過去一番かもしれないと言われており、この年齢で専用機を作られている。
その女性の隣に座る、緑の短髪女性「カリン・リングライト」。
身長はルリスと同じくらいなのだが・・・彼女の胸部を見て「勝った」と思ったのはナイショの話。
彼女の家も名門であり、どちらかというと「盾」の扱いが本当に上手いとのこと。その腕前で多くの騎士を助けたといわれている。
「攻めのリーベルト」「守りのリングライト」とこの国の双璧とされている。もちろん彼女も専用機を用意されている。
その家名に恥じぬ盾の扱いをしているとされ、またそれを使って攻撃にも出れるという話である。
その彼女の隣に座るのが、白い髪の毛の女性「リスティ・シャローム」。
身長は先の2人に比べて頭一つくらい小さい、おそらく160前後。胸は自分と同じくらいかというのがアーリアの主観。
この年齢で「千の目」という二つ名を与えられているくらい、長距離射撃に特化された腕前とのことだ。
シャローム家は射撃の腕前が国内一とされているので不思議ではないが、彼女のそれはずば抜けているといわれている。
特注の専用機と共に入学してきたが、他人にあまり関心を持たない性格ではなかったかと記憶にはある。
その正面に座る、赤髪ツインテールの女性「アスカ・リーリス」。
彼女は貴族家の人間ではない。だが、彼女のその高いマナ値に目を付けたとある貴族が彼女のために専用機を用意したそうである。
身長は高い、だが胸は自分の勝ちというのがアーリア視点。
それほど愛国心はないようだが、この寮にくるということは何かしらの心境の変化があったのではないかと思われる。
そして最後はその隣、カリンの正面に座っている青髪の女性・・・というか少女「シィン・グリアス」。
身長はこのメンバーの中で一番小さい。だが・・・胸部だけはトップである。ロリ巨乳っているんだなというのがアーリアの感想。
なんでも父親が起動鎧の設計者であり小さいながらも製造できる工房をもっているらしい。
その父親が「最高傑作ができた!」と派手に宣言。それを国が知ることに(当然のことである)。
そしてちょうど学園への年齢になっていた娘が高いマナ値を測定でだしたことによって、彼女は学園にやってくることに。
自分の意思がほとんどないまま送られることになったので、意欲は一番低いだろう。
アーリア含めて以上6人と英雄、寮長を含めて8人で暮らすことになる。
これは彼女の想定していなかった事態である。
(一体なぜこうなったのか・・・)
まあ、全員に共通していることは「英雄に声を掛けられた」ということだろう。
そして、彼がこの寮で暮らすことを提案した。
色々と調整する必要があったが、結果それは認められたのが現状というわけである。
「・・・いつまでも無言でいても仕方ありません。このような状況になりましたが、我々はこれから共同生活を送るわけです。最低限の自己紹介をしておきましょう」
アーリアがそういうと全員頷いて、それぞれ自己紹介をした。
といっても、先の情報以外は増えていない。
「しかし、まさかルリス嬢と共同生活をすることになるとはな。家の上はあれこれいってくるだろうが、気にせずよろしく頼む」
「こちらのセリフだ、カリン嬢。まあ、ここではそのことは気にせず共にがんばっていこう」
この2人は、家がお互いを超えるべき相手としているがあまりここではそれを表に出さないようにするようだ。
「とりあえず、父に言われて学園にくることになりましたが・・・この状況は予想してませんでした。
貴族としてのことなど何も知りませんが・・・その・・・よろしくお願いします」
「気にしないでください。ここでは皆同年代、学園生です。あまり堅苦しいことはなしでいきましょう」
アスカは貴族家の人間ではないことを気にしているようだが、リスティは気にしないように言っている。
まあ、その意見には全員同意だろう。
「・・・勝手に親に入学申請されていた。正直もう帰りたい。・・・まあ、彼に少し興味わいたからいるけど」
少しぶっきらぼうだけど、シィンも一応問題ないだろうというのがアーリアの感想。
そこでふと彼女はあることに気づいた。
「そういえば、みなさんも彼に入学前に声を掛けられたとか?」
それに5人は頷く。
「・・・正確には彼以外にも多くの男子生徒から声を掛けられました」
「アスカ嬢と同じく。『俺は英雄になる男だ!』と見栄を張る男ばかりだったけど、1人だけ宣言通りになりましたね」
「私もですね。なんか、入学前にこのあたりの地理を確認しているとか言って全力疾走してる変わった英雄でしたが」
「・・・うん。ただ、彼は自分が『英雄になる』という発言はしてなかった」
そういえば、誰よりも学園に最初にきたのですが・・・息を切らせていましたね。
そんなことを考えていると、ルリスだけが何かを考えるそぶりをしていた。
「ルリスさん、どうかしましたか?」
アーリアが聞くと、彼女は少しして顔をあげた。
「実は・・・確かに多くの男性がその発言をしてきて呆れていた時に、その発言をしなかった男子生徒が1人だけ」
なるほど、とアーリアがうなずく。
「他の者より少し見どころがあると思ったのだが・・・彼はどうなったかと少し思い出しただけだ」
「なるほど。・・・興味を持ったのか?」
アスカの言葉に、彼女は1秒もたつことなく・・・首を横に振った。
そんな会話が食堂でされているころ
英雄となったセイル・ルートヴィッヒは、自室で入学前の用意・・・をしているわけもなく。
ベッドの上で寝転んで、にやけていた。
「いやぁ・・・最高だ。記憶通り、俺が英雄になった!」
そんなことを言いながら、表情は緩み切ったままであった。
「まさか、あのゲームの世界に転生できるなんてな。ゲームと違って生まれた時から始まったけど・・・ちゃんと覚えていたからな。
『あのゲームの主人公のデフォルト名』を。だから俺がなるのは決まっていたことだ。まあ、さすがに学園に来るまでは心配だったけど」
彼は転生者である。ゲームプレイヤーであり、彼は主人公名を変えずにプレイするタイプであった。
だから、ちゃんと喋れるようになって物事を考えれる年齢になってきたときくらいに気づいたのである。
生まれてきてしばらくは、現実を受け止めるために色々と考える時間が必要だったのであった。
「他にも多分いるのかもしれないな・・・彼女たちが『複数の男に英雄になると言われた』って言ってたからな。まあ、そいつらは多分、名前変更してプレイしていたんだろうな。だから気づいていなかった。馬鹿な奴らだ」
それでも、自分と同じようにゲーム内容を覚えている人物たちがいることは少し気がかりではある。
「と言っても、全員俺と同じ寮に暮らすことになった。この状況に持っていければ問題ない。全員、俺の嫁にできる」
なお、彼が最もプレイしたルートは「ハーレムルート」であった。
「この世界はゲームではないんだ。ゲームみたいに『このキャラに会ったらこのキャラは登場しない』なんて考えることがおかしい。
現実になってるんだから、全員いるにきまってる。だから俺は全力で走って全員と出会うマップ位置を回った。結果は今の状況、もう最高としか言えない」
現状全員が同じ寮で暮らすことになったので、彼は将来は決まったようなものと思っている。
それ故に、ベッドで寝転ぶ彼の顔はにやけたままであった。
だが、この時彼はあることを忘れていた。
そのことを覚えていれば、この後起こることに対処できただろうが・・・
前日で序章全投稿すると宣言していたのに、1話忘れてました。
忘れてるのに気づいて「これを第1章の冒頭にしようか」と思いましたが・・・結局、忘れてたということで投稿。
1章からは、火曜と金曜に1話ずつ投稿していきます。
ゲーム主人公は転生者ですが、ゲームヒロインは全員転生者ではありません。




