第3話 こうして物語は始まる絶望と共に
英雄として選ばれた彼はそのまま複数の教師と一緒にでていった。
まあ、このあたりもゲームの流れと一緒だな。
その後、元々ヒロインたち用に用意されていた寮に部屋を取ることになるのだが・・・ここの流れは少し変わる。
具体的には「第二王女」がいるかどうかだ。彼女のルートの場合は「寮の部屋」をどうするか考えているときに部屋に乱入してくる。
そしてそのまま、自分も入る寮の部屋を一つ使うことになるよう働きかけるのだ。
いない場合は、他のヒロインたちと話をして寮に入る許可を貰うことになる。
ぶっちゃけ、選択肢も何もない「ギャルゲーお決まりのご都合展開」というやつだな。
なので、彼がその寮に行くのはたぶん確定だろう。
・・・後で何とかして寮を見に行かないとな。
そんなことを考えていると、いよいよ俺の番が近づいてきていた。
それまでも何となく見ていたが、マナ測定器に触れた後は部屋の奥にある3つの部屋のどれかに入ることになる。
正面に2つ、右側面に1つ。今のところ、右側面が一番人が多い。
次にその側面扉に近いほう、一番少ないのが側面扉より一番遠いところだな。
近づいてきてわかったが、測定後に教師が何かを言っている。
聞こえたのは「2番赤」と「2番青」、そして「3番」だ。
なんで2番は色も付けているのかわからないが、その色のネームプレートを渡されている。
ただ、これだけではどういったことなのかわからん。
そして、よくわからないまま俺の番がきた。
教師に言われるまま、マナ測定器に腕を通す。
・・・なんか、前世であった血圧計みたいだなこれ。
そんなことを考えていると、何かを腕が通り抜けるような感じを受けた。
センサーみたいなものが腕を通過したのかな。
「2番青」
その言葉と一緒に、青色のネームプレートを渡された。
「2番の扉から入り、まっすぐ進むんだ。突き当りを曲がると扉がある。
その中で待機しているように。それと、部屋に入ったらネームプレートに名前の記入をしておくんだぞ」
そう、ネームプレートを渡してくれた教師が教えてくれる。
「わかりました」
とりあえず行けばわかるだろう。
そんなことを思って扉をくぐる。
通路は、両側が完全に壁だった。ほかの扉から入った状況を見ることができないなこれは。
そんなことを考えながらまっすぐ進み、突き当りを曲がるとすぐに扉が見えた。
一応ノックして部屋に入る。
部屋はかなり広い。300人くらいは入れそうな部屋だ。
正面に教師が立っている。男性だな。
彼はこちらを見ると「正面に向かって左側の席に座るように。順番はないから好きな場所でよろしい」と言った。
教えられた通り、向かって左側に向かい・・・隣の席を一つ空けて座った。なんとなくね
そうして一緒に置かれていたペンで、言われていたようにプレートに名前を記入する。
それを付けて、時間が来るのを待つことにするとしよう。
そんなことを考えながら、少し視線を動かしてみる。
・・・なるほど。どうやら右側には「赤色のネームプレート」を付けた生徒が座っているようだな。
中には、先ほど絶望して崩れ落ちていた生徒も何人かいる。
30分くらいそのまままっていたかな。教師が入ってくる。
教壇のほうに向き頷くと、教壇の男教師が手を一つたたく。
「はい!それではこれより入学に当たっての最初に教える内容を伝える」
その言葉に、全員姿勢を正す。どうやら、入学はできたようだ。
「この教室にいる生徒は、はっきり言おう。『これからに期待する生徒』である。
現状のマナ値では、満足に起動鎧を動かすことができない数値であった」
おう・・・つまり属にいる「おちこぼれ」「劣等生」って奴じゃね?
「だが!今がそうだというだけだ!最初に言った通り君たちは期待する生徒である!
今の諸君の年齢では、低い数値の者のほうが1年後、高い数値に成長している傾向がある!
むろん、一概に全員がとは言えない。今高い数値に者がさらなる飛躍を見せることもあるからだ!」
なるほど。伸びしろがあるということかな。
「この1年!諸君は学園に入学し、起動鎧の基礎からマナ値向上のための訓練を受けてもらう!
つらいかもしれない。耐えれないかもしれない。もうダメだと思ったら遠慮なく言うのだ。
強い騎士は我々は望んでいる。だが、訓練に無理して参加したために将来をつぶしてしまうことを我々は望んでいない!
耐えれるもの、ついてこれるもの。自分の限界をちゃんと把握することが最も大事なことであると先に伝える!」
入学したら意地でも騎士になれというわけじゃないということだな。
「実際、訓練に耐えれずに去った者もいる。だから無理はするな!国のため戦うという意思を見せてくれるのはうれしい。
だが、自分の限界以上に頑張った結果、未来を閉ざしてしまっては本末転倒。そのことをまずはしっかり認識しておいてほしい」
そうして一礼する教師に、拍手が送られる。
俺もその一人、というか本気で拍手した。
前世でこき使ってくれた無能上司とは大違いだ。
しばらくして収まると、教師は続けて話し始めた。
「皆ちゃんとわかってくれたと思う、ありがとう。さて・・・続いてクラス分けと学年について説明する」
姿勢を正して聞く。
「1年の時はクラスは2つだ。マナ値の高い者が集められたクラスと君たちのクラス。
その中で、教室は5つに分けられる。今年は人数が多いからな、去年は3つだったぞ。
そうして1年目は起動鎧の知識や操縦方法を学びつつ、マナ値向上のため訓練を行う。起動鎧を操作しての模擬戦も少しだけだがあるからな。そうして1年を訓練に費やし、2年進級時に再度マナ測定を行う」
ふむふむ。
ゲームでもそんな感じだった。
そして、ゲーム通りなら2年目であの状況になる可能性もある。
「2年進級時、よりマナ値によるクラス分けが行われる。具体的には4つだ。
C級、D級、E級、F級となる。
C級とD級は、さらに実践に向かっての訓練を行ったり、有事の際には起動鎧での出撃を行うことになる。
そしてE級とF級は、その補佐をする。ぶっちゃけていうと『付き人』となる」
つまり、簡単に言うなら従者というわけだ。
能力の高い者に付き従い、その者が安定して訓練や実践に望めるよう細々とした雑事を行うことになる。
「C,D級が訓練をしている間はこの級の生徒も訓練を行う。ただし、終了時間は早い。付き人になった生徒の訓練後のケアーをするためだな」
ぶっちゃけ、このE,F級になると戦場に出ることもないかもしれないくらいだ。
マナ値が起動鎧で実践にでるレベルまで高まっていないって生徒がなる場所だからな。
つまり、どうしようもなくなった時の補欠要員。
英雄になりたいとか言ってる俺なんかがなると、絶望しかないわけだ。
まあ、すでに英雄になる奴がいるからすでに絶望なんだけど。
ただ一つだけ、わずかな可能性に賭けているだけだ。
「それと、色による教室わけはない。この色は『青が伸びやすい』と予想される生徒で『赤は少し伸びにくい』と予想される生徒だ。
だが、君たちの年齢でいうならどちらも『大きく差があるわけじゃない』からな。色で優劣を決めないように」
だったら色分けするなと言いたい。
と思ったら説明された。なんかこのネームプレート、一晩たったらみんな同じ色になるんだって。
現状色分けしているのは、教師が色わけによる生徒の認識をしておくためだそうだ。
それに意味があるのかどうかわからないけどな。約300人の顔と色を覚えきれるのかどうかって話だ。
なお、一番生徒の入った人数の少ない扉が「マナ値の高い生徒」で一番多い扉が「付属学園」に行くことになった生徒である。
その後、寮に案内された。ちなみに、男女同じ寮である。
といっても、建物が3つ構成。
中央が教師の暮らすところで、右側が男子、左側が女子。
外階段はないから、女子寮に行こうと思うと教師のいる場所を超える必要がある。
毎年、勇者がいるそうだが・・・超えれた生徒はいないそうだ。むろん、捕まった先は「付属学園へ転校」である。
それでもいるんだから、まさに勇者だよな。
異常に大きい建物なので、余裕で部屋が足りる。なんでも男子側だけで1000部屋あるそうだ。ホテルでもそこまでないぞ?多分。
なので、今年も全員個室である。なお、部屋は隣接しないで1部屋空けて配置される。なんか申請したら2人で1室使ってもいいとも言っていた。俺はごめんだがな。
隣の部屋を物置に使っていいそうだが・・・物置に使うほど私物あるのか?俺はない。
ある生徒もいるとのことだが、その場合使用料として「部屋掃除」をすることになる。それくらいならいいでしょ。ないから俺はしないでいいけど。
運が良かったのか、俺は2階の階段傍の部屋になった。夜でも日課のランニングに行きたいからありがたい。
さっそく、今晩から始めようと思う。
夕食の時間は決まっているそうで、その時間内に取るように言われている。風呂と就寝時間以外は自由時間だそうだ。
部屋でのんびりしてもよし、談話室で語り合ってもよし。トレーニングに出てもよし。
さっそく教師に日課のランニングのことを伝えると、満面の笑みで複数回頷かれた。
ここ数年、自主トレする生徒がほとんどいなかったそうだ。「期待しているぞ」という声をかけられた。
プレッシャーです、それは。
ランニングは本当なんだけど、このタイミングで確認しようと思ったのだ。
敷地内なら、起動鎧待機所と訓練施設、校舎意外の場所なら自由にいっていいとのことだ。
なので、ランニングしながら目的地に向かう。
俺たちの寮から校舎を挟んで反対側にある新設された寮だ。
そこは「主人公が暮らすことになる」寮である。
つまり、確認したいこととは「この世界がどのヒロインのルートなのか」ということだ。
ゲーム内の話は、ヒロインとの交流以外の話はほぼ同じなのだ。
交流以外も少し変わるのが「第二王女ルート」と「ハーレムルート」だな。
なので、現状だとどのヒロインとの話なのか知ることは難しいと思われるだろう。
だが、それをある程度予想できる方法がある。それがこの寮だ。
「ヒロインは全員個室で暮らすが、その部屋の位置は重なっていない」のである。
つまり、ヒロインごとに部屋が決まっているのだ。当然、第二王女もな。
「部屋についている明かり」を頼りにすれば、ある程度は把握できるというわけだ。
つまり「惜しのルートではない可能性もある」ことがわかれば、俺の頑張り次第で「英雄」にはなれないけど「推しの恋人」にはなれるかもしれない
そう思って確認に来たわけだ。
最初に確認する部屋は・・・といきなりだ。
その部屋には明かりがついている。寮で一番大きい部屋、「第二王女」の部屋だ。
これについてはある程度予想していた。現実となったこの世界に「第二王女」がいることはわかっていたからだ。
なので、英雄の彼が現れた以上は彼女もこの寮にくるだろうと簡単に予想できる。
さて、後の確認は・・・
と思って寮の部屋の明かりを見た時、俺は崩れ落ちた。
もはや絶望しかなかった。
他の部屋の明かりが「4つ」ついている。
そのうちの2か所は「たった一つのルート」を除いて同時につくはずのない部屋だ。
5人のヒロイン、実は最初の選択で「同時に選べない組み合わせ」があるんだ。
ヒロイン同士の起動鎧の特性が近いことで、バランスをとりやすいようにするためだそうだが。
そんなの関係なく、ヒロインたち強いけどね。
というか・・・そもそも4つついている時点で終わった。ヒロインルートは「3人」だから英雄いれて4部屋しか部屋の明かりはつかない。それが「第二王女」入れたら5部屋だ。
もう気づいているだろう。そのたった一つのルートが何か。
「この世界は・・・ハーレムルートだ・・・」
俺の推しは、別の男と結ばれる運命だったのが分かった瞬間であった。
恋人になったわけでもないから「寝取られた」ではないんだけど、心境はそんな感じ。
一方的に俺が知っていて勝手に「推し」になってるだけだけど、それでもそんな感じにしか思考がならない。
こうして俺の恋は・・・簡単に幕を閉じることになった。
何度も言うが、一方的に知って思っていた「恋」なんだけどな。それでも・・・つらいよ。
同志たちよ。俺は・・・もう「起動鎧の乗れる」というロボット好き魂のみで生きていくしかないのだろうか?
大好きなゲームに転生した俺の学園生活は、こうして幕を開けることとなった。
これにてプロローグ終了です。
英雄にもなれないし、入学式に「一番高い生徒の部屋」に入れなく、推しのヒロイン全員が別の男と一緒の寮で暮らすだろうと思える光景を目にした。
とりあえず、出だしの主人公への攻撃はこれくらいでいいか。




