第2話 片思いは片思いのまま終わった?
憂鬱だ。
もし、俺の予想が間違っていなかったら英雄は別のやつだ。
というかその可能性が一番高い。
そう考えると気になるのが「この世界がどのルート」の世界なのかということだ。
まさか、ゲームの世界みたいにループするわけもない。
ここは現実、世界はひとつ、つまりヒロインの誰かと結ばれる未来のルートのはずなんだ。
それ以外のゲームとの違いはないから。
俺が憂鬱なのは「その選ばれたヒロイン」が彼女かどうかということだ。
最惜しといって過言ではないキャラ。
他のゲームに登場するヒロインたちと出会いも多数あったが、彼女以上に惜しになった存在はいない。
同志にとても物づくりの上手い奴がいて、そいつが手作りで作ったグッズをそのキャラだけ全部買わせてもらった。
「俺が英雄になったら、彼女と絶対結ばれてやる!」といっていた彼女。
もし、その子が・・・と思うと学園へ行く足も重くなる。
本当に重い・・・行くのがつらい・・・。
そんなことを考えながらも、ゲーム内でその子と出会う道を進む俺。
その俺の視線の先に・・・彼女がいた。
優雅に歩く姿は、ゲーム画面でとはいえ何度も見た。見間違えることもないくらいに見た。
貴族家の生まれなので、その歩く姿も優雅さがうかがえる、背筋を伸ばして真っすぐ歩く姿は将来モデルになれるようだ。
金髪ストレートの髪の毛を揺らし、165cm前後の身長より少し高い背丈。
後ろ姿からでもわかる見事なプロポーション。正面からもすごいのだ。
見ていると、ふと立ち止まり彼女が振り返った。
髪の毛と同じ金色の目をした、モデルと間違えそうな整った顔立ち。
正面を見たからより一層わかる、その出たところは出て引っ込むところは引っ込んでる抜群のプロポーション。
大事なので何度も言うが、モデルと言われても間違いないだろう素敵なプロポーション。
俺の最惜し、6人のヒロインの1人
「ルリス・リーベルト」その子は
親の仇でも見たような目で俺を見ていた・・・何かしましたか?正直泣きそう。
「すまない!ただ同じ道を通って学園に向かっていただけだったというのにあのような視線をぶつけてしまって・・・」
その後あっさりと誤解は解けた。
視線に耐えられずに、そのまま歩いて横を通り過ぎようとしたら声をかけられたのだ。
そうして返事をすると、彼女はすぐに表情を変えた。
「本当にすまなかった。先ほどから、口だけと思える男子生徒からやたらと声を・・・というか意味不明の宣言を受けていて参っていたんだ」
なんでも話を聞いてみると、複数の新入生と思える男子生徒がいきなりやってきて彼女に宣言をしていったそうだ。
「俺は英雄になる男!俺のことを覚えておくことをお勧めするよ!」
要約するとそんなセリフ。似たようなセリフがあったそうだけど、言ってる内容は一緒。
しかも、何かを言う前に「次の天使のところにいかねばならないからこれで!」とか言って走り去るそうだ。
うん。新手のナンパだな。内容知らなければ。
そんなことを繰り返しされていれば警戒するというものだ。
しかも勝手に自分を英雄とか言って、きざなセリフでナンパして走り去る。走り去る理由は恐らく別の女の子のところ。
そりゃ、男子生徒がくるとあんな警戒心むき出しの目を向けたくもなるよ。
「いえ、そんなことがあれば警戒するのも仕方ないですよ。気にしてないのでもうそれくらいで・・・」
なお、頭を下げようとする彼女を制止する。
何しろ、それ以上に考えないといけないことができたから。
惜しの彼女との登校、今後訪れないかもしれないこの時間をもっと過ごしたい欲求はある。
しかし、今の状態では悪手だ。
「そうか。君がそう言ってくれるなら・・・」
よし、このタイミングがいいだろう。
「ええ。・・・あ、俺はちょっと友人と登校時にあう約束してまして。こっちの道から少し寄り道しないといけないのでこれにて」
そう言って別れる。
「そうなのか?・・・まだ時間は十分余裕あるし、もう少し話をしたかったのだがな」
その少し残念そうな顔をしないでください。「では、ご一緒に」とか言いたくなる。
「それに、そんなナンパしてきてた男たちがこの状態を見て変なこと考えないとも限らないですから。
入学前に余計なネタを提供してやる必要もないでしょう」
これは本音。変なやっかみとか受けたくない。
「そうか。では、また学園で会おう。お互い入学できることを祈っているよ」
「ありがとうございます。それじゃ、俺はこれで・・・」
そう言って「いない友人」のいるとされる道を進むのであった。
あなたは入学できるよ確実に、むしろ不安なのは俺のほうだけでしょとは言えなかった。
さて、彼女との会話で厄介な情報が聞けた。
この世界に転生したのは「俺だけ」じゃないということだ。
少なくとも彼女に声をかけた男たちは全員その可能性が高い。
理由は、彼女の登校ルート上に現れた上に言ったセリフ。
そしてすぐに別のヒロインに会いに走っていったことだ。
話の流れからの推測だけど、その可能性が一番高いと思っている。
これに関しては、登校するまでに会う必要があるので間違いないと言える。
つまり「ゲームの内容」と同じく「学園に行く前に3人のヒロインを選択」するという流れの通り、声をかけに行っているのだろう。
なので俺と同じく転生してきたということで間違いないだろう。
そんな、同じタイミングで・・・と思うけど、もしかしたら別の年代にもいたのかもしれないな。
そいつらは入学前に絶望したことになるんだけど。
ただ、声をかけた奴らは全員知らないのか忘れているのか。俺が入学準備の段階で思い出したことを思い出せていないのか。
この世界があのゲームと同じであれば「英雄の名前」は決まっているんじゃないかということ。
デフォルトで設定されている主人公。その名前の生徒がいたら全員はずれということだ。
俺はすでに、諦めてるからな。
そうして学園に到着。
入学式、その後のマナ測定。
壇上で高らかに拳を上げる生徒。
その生徒の名前は、予想通りの名前「セイル・ルートヴィッヒ」だった。
運営がつけたデフォルト名。
覚悟ができていた俺は「やっぱりなぁ・・・」という感じで祝福の拍手を送る。
その陰で、何人かの男子生徒が床に崩れ落ちていた。
真後ろに勢いよく倒れて、医療スタッフが近づいている生徒もいた。
ちなみに、測定終わった生徒の中にも何人か絶望していたり、泣き崩れていた奴もいた。
ご愁傷様だな。
けれど俺はまだ、希望を捨ててないよ?お前たちが気づいていないことに気づいてるからね。
最後のその「賭け」に賭けているんだ。惜しとの学園生活を。
意気揚々と入学式に向かって歩いていたら、意味不明なこと言ってくる男子生徒が複数人。
理由がわからなかったら「ただのナンパ目的」となるような雰囲気にしたかった。あと、転生者は意外といっぱいいるということを伝えたかった。
そして次話、ダイス君に追い打ちをかけます。




