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閑話4 転生者たちの暴走と後悔と

「うわああああああああああっ!!」

明日から3学期が始まるという夜。

男子寮の一室からその叫び声は上がった。

騎士学園の寮の壁は音を通しにくい材質である。

いざという時大丈夫なのかと思われるが、部屋の中に全部屋同時に鳴り出す装置が設置されている。

そんな一室、2人一部屋のそこにはベッドで上半身を起こしている1人の男がいた。


相当の悪夢を見ていて慌てて跳び起きたのか、息遣いが荒かった。

全身に汗をかいており、ベッドは絞れるかというくらいに濡れていた。



少しして息が整ってきたのか、その男・・・シップ・カラーは一息ついて隣のベッドを見る。

そこには、誰もいなかった。

あったのは・・・たたまれた掛布団と一組の寝巻であった。






それは、ほんの数日前に起こった補給基地襲撃の時であった。


その日の訓練が始まるため、付き人として来ていた生徒たちが起動鎧の格納庫から出ようとした時だった。

遠くからマナ砲が撃たれる音と近づいてくる炸裂音。

それが襲撃だと気づいたとき、後の行動は迅速であった。

駐在していた騎士はすぐに起動鎧に搭乗、迎撃に出撃。

実地訓練にきていたC級騎士とD級騎士が続いて搭乗、殿と基地防衛のため倉庫外に出撃。

残っていた騎士に連れられて、付き人としてきていた生徒たちが避難を開始。


だが、そこで非常事態が発生。別動隊が存在していたようで奇襲を受ける形に。

咄嗟に倉庫外にいた騎士たちが迎撃に出ることになった。

さらに、そのあと少数ではあるがさらに別動隊が襲撃してきたのである。


慌てふためく中、動いた生徒たちがいた。


「俺が防衛にでる!」

「まて!抜け駆けは許さないぜ!」

「そうだ!ここで手柄を立てれば、俺も英雄になれるんだからな!」

「お前ら、俺の足を引っ張るんじゃないぞ!」

そんなことを言いながら4人の生徒が起動鎧に走っていく。

「あ!お前らまて!」

「出遅れた!?だが、あいつらが危険に陥ったらそれを助けたらさらに俺の手柄に・・・!」

「くそ!喋ってる間にあいつらすでに!負けてられるか!」

そう言って、その後3人の生徒が追いかけていく。


「待てお前ら!現役の騎士にまかせてお前らは避難を!」

「聞けるか!ようやく・・・ようやく、俺があいつに代わって英雄になれる時が来たんだからな!」

「お前じゃ無理だって言ってるだろうが!俺が、俺こそが英雄なんだよ!そして、ルリスさんを嫁にするんだ!」

「まさか、お前・・・!くそ!ルリスさんは俺のもんだ!」

「あいつら・・・!だが、俺の嫁はリスティさんだ。彼女さえ俺の隣に来てくれたら!」

「へっ!どいつもこいつも見る目がないな!カリン様こそ最高の人だろうが!」

「お前も同類だよ。俺のように至高の考え方ができないものかね。・・・狙いはハーレムに決まってるだろうが!」

「それには賛成だが、その場に立つのは俺で決まってるんだよ!お前らは俺の引き立て役をやれや!」

「一体何を言ってるんだお前らは!?それらは整備途中の機体!装甲がちゃんと取り付けられていないんだぞ!」


そんなことを言って走っていく生徒たち。

追いかけるも結局止めることができず、それでも声を出して引き留めようとする騎士。


それを唖然とした顔をして見送る生徒が1人。

見送っている生徒はシップ。起動鎧に走っていったのは、彼の取り巻きをやっていた7人であった。


(まさか・・・お前らも転生者!?全員がそうだったってのかよ!?)


そうして倉庫の外にでていった4人だったが・・・襲撃者はすぐそばまで迫っていた。


そして、悲劇が始まった。


相手のほうが数は多い。それが一斉に攻撃を開始したのである。

「くそ!なんでだ!こっちのほうが装甲は厚いのはずなのに!・・・くそおおおおおおっ!?」

装甲のついていない場所に連続で攻撃を受け動けなくなったところを、搭乗席めがけて複数機が同時に剣を突き立てる。

一撃なら耐えられるだろうが・・・結果残ったのは、完全に動かなくなった鎧が崩れ落ちる姿。

「ちくしょう!俺が・・・俺が英雄に・・・っ」

2機目は、そもそも胴体の装甲がほとんどつけられていなかった。マナ砲の攻撃だけでも耐えれずに吹き飛ばされる上半身。

「こんな・・・はずじゃ・・・っ」

3機目も、速度を付けて体当たりをしてきた騎士の構えていた剣を突き立てられて。

「ちくしょおおおおおっ!おだてて調子乗らせた奴を一応の英雄にして、そいつを助けることで真の英雄と認識させる作戦がぁ!?」

4機目は、調整不足で動きが遅かったところを包囲されて一斉砲撃により爆散。


後の3機は、倉庫から出ようとしたときすでに近くに来ていた襲撃騎士たちの攻撃をまともに受けることになった。

声を発する暇もなく、ほぼ同時に爆散。

その衝撃で、格納倉庫も破壊され崩れ落ちる。

順次避難しようとしていた騎士や付き人たちは、その崩れ落ちた建物の残骸の下敷きとなることに。

シップも、彼らの正体と自分に近づいてきた理由を知って絶望の後・・・巻き込まれて意識を失った。


次に気づいたのは、首都の病院であった。

幸運だったのか、落ちてきた瓦礫が重なった下にいたようで軽傷で済んだ。

だが・・・少なくない人数がその瓦礫で命を失った。


そして教えられる、この襲撃での被害状況を。


それから今晩までの数日、彼は毎晩のようにその光景を夢で見て跳び起きていた。






そして今、彼は隣のベッドを見ていた。

そこには、自分と同じF級認定を受けていた・・・自分をおだてていた騎士のものであった。

あの襲撃の時、彼らがどういった意図で自分に近づいたのかを知った。

全員がそうだったとは思わなかった。


(そういえば・・・前世でもこんなことあったな)


前世でも彼は、最初に入った会社で似たような経験をしていた。

最初に任された仕事を成功に収めて自身がついた・・・というか有頂天になった。

そんな自分に、同期で入った新人たちが自分にすり寄ってきた。

ある日、難易度の高い仕事を振られた。とてもじゃないが自分ができる自身がわかなかった。

断ろうかと思ったが、すり寄っていた者たちが自分を持ち上げて仕事を受けさせた。

結果、失敗。会社での信用を失うところまではいかなかったが、それでも評価は大きさがった。

そうすると、持ち上げていた者たちは手のひらを返したように評価を落とすような噂を流すようになった。

証拠がなく、居続けることができなくなって会社を退社。

人間不信になって、外に出る機会が減っていった。

家の中にいても暇になったので、今まで興味を示さなかったゲームをやろうと思った。

どうせやるならと走ったのがエロげーだったのはどうなのかではあるが・・・結果あのゲームに出会った。

結果、はまり込んだ。

自分の世界はここだけだろうと思った。

だが・・・彼は暮らしていたアパートのすぐ下の部屋で起きた火災に巻き込まれる形で命を失った。



そして、この世界にやってきたが・・・すぐに自分が英雄ではないと気づいた。

彼は主人公の名前を変えることがなかったからだ。

それがわかったので、入学式の時はヒロインのだれとも会いに行かなかった。


学園が始まり・・・すぐに自分を持ち上げてくる生徒たちがいた。

最初は戸惑ったが、すぐにそれに乗ってしまった。

(その結果がこれか・・・結局、俺は前世と同じく利用されるだけだったわけだ)


悪夢から目覚めて時間がたったのか、思考がまとまってくる。これも毎晩のこと。

そうしてシップは毎晩、自分がとことんお調子者だったと思い知らされる。



(英雄にもなれない。3年になっても今回の件で評価は下がった。俺が、武勲を立ててというのは無理だろうな・・・)


周りは知っていた。彼が7人とつるんでいたことを。色々と話を聞かれもした。取り調べも。

死んだ7人は、命令無視と独断での出撃による罪で騎士学園から除名処分。

今回の追悼式の共同墓地にも、亡くなった騎士たちの名前に彼らの名前は含まれていない。

遺族には真実が話されたが・・・まったく反論することなく、ただ真実を聞いて帰っていっただけだった。

確認できただけでは、だれも彼らの墓を用意はしても墓前にはいっていないとのこと。


(そんな最後でよかったのか・・・お前ら。俺は・・・いやだ)



せめて、この世界に自分がいたんだという証だけでも残したい。

そんな考えだけが、シップの中には残っていた。


こういうキャラもいてもいいじゃないかな、と思って出した名前なしのキャラ達。ご苦労様でした。


シップ君は、まだもう一つの役目があります。

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