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閑話3 現実に気づいた英雄、立ち上がる時

追悼式が終わって帰ってきてから、セイルはずっと部屋のベッドに横たわっていた。

頭の中はずっと動き続けていたが。


(間違いない・・・何度考えてもこの世界は、あのゲームの世界と同じようで違う世界だ。

あのゲームと同じような流れで年月が進んでいるから勘違いしていた)


彼の中ではすでに、あのゲームと同じ世界観ではあるが違う世界だとなっていた。

出会うヒロインは全員知っている相手、起動鎧の名前もゲームと同じ。

入学式当日、ヒロインたちはゲーム内と同じあたりにいた。

そしてゲーム内デフォルトの主人公名である自分が「英雄」に選ばれた。

ヒロインは「第二王女含めて」全員いたので、唯一ゲーム内で全員で会う「ハーレムルート」だと思っていた。


(そもそも、この世界が現実となったのなら全員いても当然なんだ。ゲームみたいに選択肢を選んだら登場しなくなるなんてあるわけがない)

全員に出会い全員とのフラグを立てた、それ故に全員と一緒に暮らすことになった。

全員と一緒に暮らせるようになったことで、望んでいたハーレム展開になって浮かれていた。

だが・・・そのルートに走ったために取り返しのつかない失敗をしてしまった。

それに気づいたときは今、つまりすでに手遅れ。



(最高の世界、最高の展開。それに浮かれて俺は・・・取り返しのつかない失敗をしてしまった)



彼のしてしまった失敗。

それは「彼自身はハーレムルートの主人公ではない」ということだ。

ハーレムルートは「周回プレイ」によって解放されるルートである。

周回プレイは、ゲームによって違うがそのほとんどが「能力値を引き継いで」プレイするものである。

引継ぎをする内容を選べたりもするが。

つまり、主人公のその時の能力は「それぞれのヒロインたちとのエンディング」を迎えた時の状態。

初期値のままというわけではない。


(ハーレムルートの主人公なら「第二王女の護衛騎士」との模擬戦をする必要がなかった)



補給基地襲撃や中央防衛拠点襲撃が起こった時。

彼は首都の訓練施設で「決闘」を行っていた。

理由は、学園生の騎士との模擬戦で「英雄が撃破判定を受けた」からだった。

故に護衛騎士たちが全員彼の実力を疑問視した。

結果、第二王女の護衛騎士・・・「王族」の護衛騎士が彼に決闘を申し込む。

正式な決闘方法に沿って行われたため、第二王女でもそれを止めることができなかった。

彼も必死に戦った。負けたらもしかしたら・・・と。

機体の性能もあり、簡単に決着がつくような状況ではなかった。


それが決定的な失敗につながった。

彼らはこの時期・・・前線基地の「防衛部隊指揮官」だったのである。

それぞれのヒロインとのルートの場合、首都に戻ってきて決闘をするのは1人。

その拠点に被害がでる、で終了するのだが今回は全員来てしまっていた。見届けるために。


決着のつかない決闘。それによってかかる時間。

その結果が・・・今回の追悼式。


(この世界に来たばかりの俺が・・・あの主人公と「同じ」わけがなかったんだ)

多大な犠牲、失った拠点。

この国が劣勢になった理由は、間違いなく自分である。


(だが・・・これで終わるわけにはいかない。終わってしまったら、俺は死んでも自分を許すことができない)

だから、彼は考えた。

これからどうするのか。現状を打開するにはどうすればいいか。

これから先、どういう選択肢をするのが一番なのか。


考えた結果・・・圧倒的に足りないものを見つけた。彼は立ち上がり、部屋を後にした。




「わたくしの護衛騎士ですが・・・その責任を取って指揮官の権利はく奪。2週間の首都で謹慎処分となりました」

「そうですか」

アーリアの報告に、ルリスはそう返すことしかできなかった。

彼女たちも、彼のあの模擬戦結果を受けてこうなる可能性を考えていた。

なので事前にそれぞれの護衛騎士に、その選択肢を選んでもらわないように説得に動いていた。

彼女たちは、全員セイルのことを少なからず想う様になっていた。

彼は、自分たち全員に真摯に対応してくれていた。

また、彼女たちの間で亀裂が起きないようにも色々と立ってくれていた。

訓練もまじめに受け、実力をつけていっていた。

なので、彼を自分たちで英雄にしようとも。


「それで・・・彼は今どうしてますか?」

カリンのその言葉に、リスティが首を横に振る。

「今回のことが相当応えているのか・・・明かりもつけずに部屋にこもってますね」

しかし、少しするとシィンとアスカが扉のほうを見る。

「どうやら、出てきたようですよ」

「うん」

6人が見守る中扉が開き、セイルが姿を見せる。

そして全員を見回した後・・・彼は頭を下げた。


「みんな、ごめん。今回のこと・・・俺の失態でしかない」

「いえ。あなたはまだ学生騎士。失態というのであれば、わたくしの騎士が・・・」

「そうじゃないんだ。説明が難しいんだが・・・俺がとんでもない勘違いをしていた結果だったんだ」

6人の頭には「?」しか浮かんでいなかった。

だが、次に顔を上げた彼の顔を見た時その思考が止まった。

今まで見たことない、今まで以上に真剣な表情に・・・みんなの好感度が上がった感じではあった。


「この国を救うため、隣国の侵攻を阻止するため・・・全力を尽くしたい。協力してほしい」

「協力することは問題ない。それは私たち全員の目標でもあるから。それで・・・具体的には?」

ルリスが聞く。

頷いたセイルは、言った。


「決闘の前後の時期に何か、騎士団の中で何か変わったことがなかったかを。それを知ることで、突破口ができるかもしれない」


セイルの頭の中には、あのゲームをやりこんでいた故に思い出せたある内容が浮かんでいた。


(確かこのタイミングの後だったはずだ。詳しくは語られなかった「ある部隊が誕生した時」は)


もしかしたら、それを知ることで打開策ができるかもしれない。



彼はそれと同時に、アーリアにあることを頼んでいた。

その頼みに彼女は少し驚いたが了承した。




ゲームと同じルートに入ったといっても、「その場にいる自分」は「ゲーム内のその時の主人公」と同じわけがないということに気づいていなかったことが、彼の失敗です。


異世界転生して英雄になれたといっても、チート能力なんてない彼にゲームと同じことができるわけなかったわけですね。


次回、もう一人の異世界転生で浮かれていた人物が現実に気づく話です。

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