第12話 追悼式
「勇敢に戦った騎士たちの霊に敬礼!」
前線において多大な被害と犠牲が出たあの日から5日後。
首都にある共同墓地において大規模な慰霊式が行われていた。
ほとんどの騎士たちが参列している。
本部所属の騎士、騎士学園に在籍しているほとんどの騎士。
参列していないのは・・・防衛用に配備されている騎士たちくらいかもしれないな。
亡くなった騎士たちの遺族の方々も参列している。
式は昨日含めて2日間、別れて参列しているとはいえかなりの人がいる。
式も終わり、みんなが順に帰っていく中。
中央に増設された祭壇前には複数人が立っていた。
6人の女性と5人の男性。
女性たちは、1人両手を地面についてうずくまっている男性を気遣っているようだ。
4人の男性は、騎士の礼をずっと続けている。
まあ・・・俺には遠目でもそれらが誰なのかわかる。
6人のヒロインたち、そのヒロインたちのうち3人の護衛の騎士。
第二王女の護衛の騎士。
そして・・・英雄。
うずくまっていたのは、英雄となった彼だろうな。
今は彼らのことを考えても、何があったのかはわからないな。
何が起こっていたのかは分かっていたけど・・・その結果なにがあったのかはな。
だが、今の俺にそれを気にする余裕はない。行くところがあるから。
俺はその足で、この首都にある一番大きな墓地に来た。
ここに来る前に近くで花を買って。
そして、一つの墓の前にその花を供え、騎士の礼をして黙禱。
その墓に刻まれた名前は「アート・ペイント3級騎士」。
俺が付き人としていた人は、先の補給基地襲撃において防衛に参加し・・・そのまま帰らぬ人となった。
学生騎士のまま殉職した場合、C級騎士やD級騎士の場合は墓碑に刻まれるとき「3級騎士」となる。
勇敢に戦った故に、せめて「正式な騎士」として名を残してということだそうだ。
俺は・・・この人に返しきれない恩ができていた。
あの特別試験。
あれは新規に作られる特別部隊の選抜試験であったそうだ。
合格した者は、「Cプラス騎士」という特別な称号を与えられることになる。
これは、C級騎士と同じ扱いとなるが通常の騎士と同じ部隊運用がされないこと故にだ。
そう。
俺は、F級騎士から実質C級騎士に昇格されたということだ。
そして、そのきっかけをくれたのが彼だったのだ。
(俺は、英雄になれなかっただけでなく正式な騎士になる道も閉ざされたと思っていた。だが、そこから救い上げてくれたのが彼だ)
せめて、直接彼に感謝の言葉を述べたかった。
しばらく彼の墓の前で黙祷していると、近づいてくる足音が聞こえた。1人分の。
足音がやんだので、そちらを見ると1人の女性が立っていた。
「・・・久しぶり。ユフィ・カラーC級騎士」
「久しぶりです。ダイス・カラー騎士。・・・現時点だと同じC級ですから、級は略して大丈夫ですよ」
おや?
「・・・なぜ、俺がC級騎士だと?」
そう聞くと、彼女は少しだけ表情をやわらかくした後・・・隣にやってきて、彼の墓に花を添えた。
「知っているのでしょう?私が、秘匿されている第三王女だということを」
「ああ、そうか。そう考えると話を聞いていてもおかしくないか」
「ええ。それと・・・彼がこれからの騎士団に新しい部隊を作るきっかけをくれた騎士だということも」
そう言って立ち上がり、黙祷をする。
「私がこの1年、願っていたことを叶えてくれたのも彼ということになりますから。・・・生きている間にもう少し話をしたかったです」
そんな彼女の目から、涙が流れた。
どれくらいそうしていただろうか・・・暗くなってきたので、そろそろ寮に戻るか。
そう思って歩き出すと、ユフィも隣に並んで歩きだした。
無言で歩いてきたのだが、ふと彼女が何かに気づいたように視線を動かす。
つられてそちらを見ると・・・1つの墓の前で座り込んだまま動かない女性の姿があった。
「彼女は確か・・・」
そう言って歩き出そうとする彼女の肩に手を置いて引き留める。
「今は、彼女だけにしてあげておいてほしい」
「ですが・・・元クラスメイトですし、このままにしておくのも」
「・・・その前にある墓も、クラスメイトだよ」
「っ!・・・まさか、それは」
「そう。あの墓は・・・ブック・カラー3級騎士の墓だ」
1年のころからずっと続く、俺の親友。
彼もまた、アート騎士と同じ補給基地にいた。
その結果が、今目の前にある光景だ。
そしてその前にうずくまっているのは、シール・カラー。
1年の2学期のころだったかな・・・付き合い始めたのは。
彼氏との最後の別れ・・・誰にも邪魔をさせたくない。
その思いと共に、俺は歩き出す。
ユフィも同じように思ってくれたのか、彼女に一礼だけしてついてきてくれた。
言っておくが、アート騎士の墓に行く前に彼へは挨拶している。
シールが来たので、彼女に後をまかせて俺は大恩ある彼のところにいっただけだ。
明日明後日は多くの騎士が平常運転できないだろう。
3日間空けて、学園は再稼働することになるとのこと。
「特別部隊に編成される騎士は付き人なしか。まあ・・・そのほうが楽だけど」
そう言うとユフィが薄く笑う。
「自身がその役をやっていたのに・・・いやでしたか?」
「そうではないけど・・・自分がそっち側になるのはなんか」
「なるほど・・・私はそういった時期がありませんから、一度体験してみたかったかもしれませんね」
「あー・・・なら、何で2学期の時に付き人ついてもらわなかったんだ?」
そう聞くと、彼女は少し考えるそぶりをした後で言った。
「付き人になって欲しかった人が、すでに別の騎士の付き人に選ばれてしまっていましたからね」
誰なのかは教えてもらえなかったけどな。
そうして、寮に到着。
男子寮と女子寮は別々の場所なのでそこで別れるのだが、その時驚きの話を聞くことになった。
「3日後に正式に任命されるでしょうが、先にお伝えします。
ダイス・カラーCプラス騎士、あなたは3学期より『第5特別遊撃隊』のディフェンダー担当として任命されます。
正式な部隊の目的などはその時に教えられますが、他に3名の騎士が配属されます。
そして・・・私、ユフィ・カラーC級騎士も同部隊員となりますのでよろしくお願いします」
この世界で騎士になって3年目。
ゲームでは「作られた」という話しかでなかった部隊の一員として、実際の戦場にでる。
俺の騎士生活、最後の1年が始まる。
恩人と友人を同時に失った主人公は、新しい称号を受け取り戦地に行くことになる。
ダイス・カラーCプラス騎士
近接戦闘:壊滅的というか剣をすっぽ抜けするな危ない
射撃戦闘:どうしてその至近距離で外せるのか疑問
防御戦闘:攻撃を的確に防ぐ能力とはじく能力が逸脱している。
索敵能力:ある程度の距離なら精度は上位
結果:攻撃役としては論外ではあるが、防御担当としては極めて優秀。
よってCプラス騎士の称号を授与。
なお、その極めて高い能力をもって秘匿されし「第三王女」の護衛担当とする。




