第11話 希望と絶望
翌日、命令通り騎士団本部の隣にやってきた。
臨時試験場・・・という名の、騎士団の訓練施設だ。
中に入ると、俺と同じF級騎士やE級騎士がいた。
ざっと数えて・・・40人くらいか?
男性もいるし女性もいる。
うん?1人知ってる子がいる。女性騎士だ。
確か同じ部屋で授業を受けている生徒だ。遠距離狙撃が滅茶苦茶上手いんだよな。
というか射撃が上手い。近接は、正直にいうと俺以下。
時間5分前になると、さすがに訓練されている。全員整列。
上官となる騎士がやってくるのを待つことに・・・ってすぐに来た。
というか、10人以上いるぞ?
「よし。さすがに訓練されているだけはある。上になった奴ほど、この5分前待機ができないからな。
諸君は実によく訓練を受けているようだ」
そういって、1人の騎士が前に出てくる。結構年上のような気がする。
他の騎士は・・・年上だけど、前に出てきた騎士よりは下だな。
「さて、本日集まってもらったのは特別試験をするためである」
なんだそれ?
横目で見ると、他のメンバーも疑問のような顔をしている。
「何も教えられていないのにいきなり試験と言われて戸惑うかもしれない。だが、これはとある騎士による進言から決定したものである。
入り口で番号札を渡されたであろう?これから4人ずつ番号を読み上げる。その番号のメンバーで一つのチームとする」
俺の番号は・・・44番。40人以上いたのね。
そうしていると、5組目で呼ばれた。
「さて、諸君のチーム統括を担当する。よろしく頼む」
4人で集まると、そこに来ていた上級騎士の1人がやってきた。
名乗らないな。
「俺は、首都防衛の騎士なので皆と普段会うことはないかもしれないな。名乗りは省略させてもらうよ」
名乗ってもらってもいいけど、まあいいか。何か考えがあるんだろう。
「これから行われる試験だが、具体的にはチーム戦を行ってもらう。午前と午後、合わせて5回だ。
だが、少し普通の試験とは違う部分がある。騎士団の中に少数による奇襲部隊での運用が行われる場合がある。それに習って、全員持ち回りで役割を交代して行うこととなる」
具体的に言うとこうである。
俺が防御担当をしているとき、他のメンバーが攻撃役や狙撃役をする。
奇襲部隊の運用は、防御、近接、遠距離、中距離、指揮官の5名運用となる。
通常の部隊運用は4人なのだが、それぞれがどれも行う。攻撃を引き付ける盾役になっていたと思ったらマナ銃による攻撃にまわったりと。
奇襲部隊は、現場判断で行動を決めたりするので指揮官がいる。
またその性質上、一気に攻撃を行い即座に撤収する必要がある。
運用方法としては、近接と中距離が先行して突撃。戦端が開く前に遠距離担当による狙撃開始。
ある程度攻撃したら、防御担当が殿を引き受けての撤退。遠距離担当がその援護となる。
しかし、この部隊はそれほど多くない。
運用上、特定能力に特化した人材が必要になるからだ。
俺がこの世界にきて知った限りでは、この国に10部隊いるかいないかだったと思う。
そんなわけで・・・俺たちは昼休憩をはさんで5戦行ったのである。
チームメンバーはなんというか・・・動きがちぐはぐなのばかりだった。
まあ、人のこと言えないけど。
はっきり言うと、俺と同じく特定のポジションの時だけ動きがよかった。
もしかして、この試験に参加しているメンバーはそういった奴ばかりなのではないだろうか・・・対戦した相手チームもそうだったくらいだし。
夕暮れに差し掛かったころ、俺たちは訓練施設にある会議室に集まった。
しばらくすると、説明役をしていた騎士がやってきた。
「試験おつかれさま。さて・・・早速ではあるが合格者を発表しようと思う。番号を言われた騎士はこの後隣の部屋に移動してくれ」
そういってメモを取り出す。
まあ、試験という以上は不合格者もいるだろう。
「では発表する。12番、15番、20番、21番、27番、29番、30番、33番、37番、41番、44番、49番。以上だ」
・・・合格しましたよ?
これは喜んでいいいことなのだろうか。
まあ、不合格になった騎士のことを思うとそんな目に見えて喜ぶのもな。
まあ、合格するとどうなるのかわからないし。この後説明されるのかな?
そんなことを考えながら、教官の「では移動を」というセリフを聞いて席を立ち上がろうとした時だった。
本気で全力疾走をしているというような足音がけたたましく響きながら近づいて、勢いよく扉が開かれた。
「第二騎士団長!た・・・大変です!」
おう、試験管は第二騎士団を率いるトップでしたか。
「施設内を走るな!馬鹿者が!」
「し・・・失礼しました!しかし、それどころではないのです!」
「まったく、大切な試験を終えたところだというのに・・一体何事だ!」
その騎士団長の発言に、駆け込んできた騎士は一息ついて・・・青ざめた顔で言った。
「ぜ・・・前線の補給基地が3か所、壊滅しました。それと、中央防衛拠点の第一層扉が突破されたとの報告も・・・」
「なっ!?」
その言葉に、騎士団長だけでなく俺も・・・いや、俺たちも言葉を失った。
合格したと浮かれそうになっていた気分が、一気に冷める。
前線の補給基地はもちろん、現在戦端を開いている隣国との国境傍にある重要拠点。
相手国に攻撃をしている、攻撃部隊の駐屯地へ送る物資を集積している拠点である。
そこが壊滅するということは、それの物資を使って維持している駐屯地にも影響がでるということ。
ぶっちゃけ、この報告を受けた時点で駐屯地を放棄して撤退が確定だ。
そして中央防衛拠点。
街と勘違いされそうな巨大な軍事拠点である。
そこに物資を集積し、補給基地に送ったりもする。
また、その名の通りこの国だけではなくどの国にもある重要拠点。
前線に応援で向かうための騎士団が立ち寄る場所であり、前線から一時後退で戻ってきた騎士たちの休息場所でもある。
近くの基地が攻撃を受けた報告を受ければ、即座にここから騎士団が派遣される仕組みになっている。
周りの被害を減らしたり、騎士団が交代する中継地点にもなる巨大拠点。
当然、重要拠点なので防衛のための騎士も多く駐在している。
その上、拠点の重要施設のある中央部分に行くには巨大な防衛用の扉を3枚破る必要がある。
扉以外の場所は、起動鎧の攻撃でもそうそう破れない圧倒的な硬さを誇っている。
扉だけは、自国の部隊を移動させる場所でもあるので起動鎧数機で動かせるものになっている。
なので、基地襲撃にはそこから攻撃をするのが一般的なやり方でもある。
だからと言って、扉傍にいる狙撃部隊の攻撃をかいくぐる必要があるのだが。
並べると、本気で攻略するのは至難の施設でもある。
その扉が1枚とはいえ突破されたのである。
疑似模擬戦で攻撃部隊を体験したことがあるが・・・簡単なものではないと実感できたものである。
この事態を、この報告を驚くなというほうが無理である。
「それで・・・どれくらいの被害がでた?」
冷静になろうとしながら、騎士団長がその質問をする。
それは、確認しなければならない重要部分である。
そして、報告する側も重要と認識しているだろう。
できるだけ被害が・・・そんな思いを抱きながら
俺たちはその報告を聞くことになった。
「防衛拠点の部隊は、1部隊が壊滅。2部隊に半数の被害がでております。死亡した騎士、12名。
拠点の被害は扉を除けば軽微とのこと」
「そうか・・・それで、補給基地は?」
「3か所のうち、2か所は早期に撤退戦に移行したことによって人員的被害は軽微です」
「・・・残り1か所は?」
「他の拠点より少し後方に位置していたのですが・・・新卒の騎士が実地訓練をしておりました。
撤退戦に移行しようも連携がうまくいかず結果被害多数。学生騎士にも犠牲者が・・・」
その言葉を聞いて、俺は言葉を失った。
学生騎士には付き人も一緒についていったメンバーがいる。
だが、俺の思考が停止したのは別の理由だ。
5日前、入学当初からの友人が・・・今日の実地訓練の話をしていたからだ。
Q、40人くらいいると表現されているのに、合格者が12番からというのは?
一桁台の合格者はいなかったと?
A、配布された番号が「1番から」とは表記していない。
この世界の騎士団で一桁数字が使われるのは「優秀な騎士」ということを強調するときだけ。




