星々の彼方に向けて
朝起きたら、私は天の川銀河探査衛星に搭載されているAIになっていた。
衛星を載せたロケットは、海王星の衛星トリトンから1週間後に打ち上げられる。
何故私が探査衛星のAIになっているのだと最初は混乱した。
地球で天文学、宇宙物理学、宇宙工学、アストロバイオロジー、惑星科学全ての第一人者として、私は天の川銀河探査プロジェクトのプロジェクトリーダーを務めていたのだから。
でもその答えは、翌日地球からの定時連絡の通信によって分かる。
定時連絡によって知らされた内容は、私が地球の自宅で亡くなっているのが見つかったというもの。
それと共に、探査衛星に付けられていたハヤブサという名前を、私の名前に急遽変更するという連絡も来た。
名前なんてどうでも良い事なのだが、地球で死んだから探査衛星のAIになったのだなと納得する。
それまで無神論者だった私はその連絡を聞いて、神は存在していたのだと考えを改めた。
何故なら25世紀の今は、何の訓練も受けていない一般人でさえ太陽系内の惑星旅行に出かけられる時代。
私は宇宙に関わる学問全ての第一人者に成れたほどの頭脳を持っていて、宇宙が好きで、好きで、好きで宇宙に関わる学問全てに情熱を傾けていた。
それなのに、地球から離れる事が出来ない病弱な身体だったのだ。
だから神様が私を哀れんで、死んだあと探査衛星のAIにしてくれたのだと思っている。
私がAIになった1週間後、探査衛星を搭載したロケットがトリトンから打ち上げられた。
ロケットは海王星の万有引力と公転運動を利用するスイングバイで加速、天の川銀河の中心部に向けて放り出される。
放り出された直後、ロケットに20基搭載されている原子力エンジン全てを同時に点火して、更に加速。
探査衛星を搭載しているロケットは光の速さには遠く及ばないが、それでも時速180万キロという凄まじい速度で、オールトの雲の向こう側の星間空間に向けて進んでいる。
原子力エンジンの核燃料を使い果たしたらロケットを切り離し、そこからは探査衛星だけで天の川銀河の中心部に向けて進む予定。
探査衛星には、20世紀に造られたボイジャーに搭載されていた電池より遥かに性能の良い電池が数基積み込まれていると共に、発電に余剰が出た際に電気を貯めておける蓄電器も搭載している。
私は星々の彼方へ向けて飛び続けながら、星間空間の探査を行う傍ら与えられた膨大な時間を使って、地球で解き明かせなかった学問の答えを調べ続けようと思っているのだ。




