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エピソード2 姪っ子との再会

〈エピソード2 姪っ子との再会〉


「俺は留美と会わなきゃならないし、そろそろ行かせてもらうぞ」


 俺がそう言うと、サマエルは首を竦める。


「そうだね。僕も付いて行きたいところだけど、任されている部隊を放り出して動くわけにもいかないし」


 サマエルの後ろには隊列を組んでいる兵士たちがいた。


「別に構わないさ。もし、全てを丸く収めることが出来たら、また会おう」


 これが今生の別れではないことを祈りたい。


「うん。僕も腹を割って話したいことは残ってるし、絶対に生きて帰って来なよ」


 サマエルは初めてあった時と変わらぬ親切心を感じさせるように言った。


「分かってる。お前にリヤードのホテルで飲ませてもらった酒は旨かったし、お前とはまた酒を飲み交わしたい」


「よく覚えているね。ま、あの時のことは、僕にとっても良い思い出だよ」


「そうか。なら、またそういう機会が巡って来ると良いな」


 それには、まずこの状況を何とかしなければならない。


「大丈夫だ。お前はこんなところで死ぬような人間じゃない。根拠なんてないけど僕には分るんだ」

 

 サマエルは自信に満ちた声で言った。


「そうだな。では、しばしの別れだ。お前も自分の仕事はきっちりこなせよ」


 みんなが、やるべきことをやればこの混乱も治まるはずだ。


「お前は本当に強くなったなー」


 サマエルがそう言うと、俺は身を翻して自宅のアパートに向かおうとする。


「町では今もモンスターたちが増え続けています。なので、無理だと判断したら、すぐにセーフティー・ゾーンに逃げてきてください」


 周囲を警戒していた兵士の一人がそう言葉を差し挟んできた。


「分かった」


「どうかお気を付けて」


 兵士は俺を送り出すように言った。


 その後、俺は歩きながらメニュー表を出して、武器を出現させる。


 仮想世界にいた時と何ら変わることなく、デスブリンガーが空中に現れた。


「大体の事情は分かったが、イブリスは何をしているんだろうな」


 俺は剣を握ると周囲に気を配りながら歩く。


「あいつが何らかの形で糸を引いているのは間違いなさそうだが」


 イブリスが敵に回ったとは思えない。なら、何らかの思惑があって、俺の前から姿を消したのだろう。


 それを確かめない内は、身を潜めることもできない。


「旨そうな人間がいるなー。女でないのは残念だが食っちまおう」


 熊のようなモンスターが俺を見つけると、口から涎を垂らしながらそう言った。


「相手が悪かったな」


 俺は情けをかける必要はないと判断し、即座にモンスターの胴を断ち割った。


「お、お前はあのお方が言っていた桂木修一か。クソ、こんな奴に戦いを吹っかけるんじゃなかった」


 上半身だけで這いずり回るモンスターは、悔しげに唸る。


「気付くのが遅すぎたな」


 俺が不敵に笑っていると、女性の悲鳴が聞こえて来る。


「た、助けてー」


 俺はすぐさま一心不乱に逃げる女性の傍に駆け寄る。


 すると、ライオンに似た姿をしたモンスターが現れたので、アナライズを起動させる。


 モンスターの名前はマンティコアになっていた。


「その女は俺の獲物だぞ。邪魔をするなら、まずはお前をバラバラに引き裂いてやる」


 マンティコアは女性を守るようにして立つ俺に、鋭い爪を振り翳して襲いかかって来た。

 が、あいにくとのろすぎる。


 俺は五月雨のように剣を振るってマンティコアの体をバラバラに切断した。


「バラバラになったのはお前の方だったな」


 俺は勝ち誇るように言った。


「助けてくれてありがとうございます」


 女性は九死に一生を得たような顔をした。


「ここを真っすぐ行った先に国連の部隊がセーフィー・ゾーンを設けています。そこまで行けばもう大丈夫ですよ」


 俺の言葉に女性は涙目で頷いた。


「分かりました。行って見ます」


 女性はポーチを抱えながら駆けて行った。


 それと入れ替わるように、再び声が聞こえて来る。


「久しぶりだな、シュウイチ。こうしてお前と会うことができて嬉しいぞ」


 そう声をかけて来たモンスターは猛獣と爬虫類を足して二で割ったような姿をしている。


 見るからに悪魔と言った感じの姿だし、このモンスターには見覚えがあった。


「お前は宮殿で倒したアーク・デーモンか?」


 俺は間違いであって欲しいと思いながら尋ねる。


「その通りだ」


「お前は死んだはずじゃ?」


「あのお方の力で復活したのだ。これでお前に復讐することができる」


 アーク・デーモンは前に戦った時と同じように、両手に紫色の炎を纏った。


「せっかく生き返った命をまた捨てるつもりか」


「この俺の持つ力があの時と同じだと思っているなら、それは大きな誤りだぞ」


「分かってる。レベルも五十を超えているし、相当、強化されているみたいだな」


「そこまで分かるのか。さすが、あのお方が味方に引き込もうとしている人間だけのことはある」


 あのお方というのは、まさか……。


「だが、強くなった今のお前でも、正直、俺の敵にはなりえない。このまま戦えば、またあの世行きになるぞ」


 エンシェント・ドラゴンを倒してレベルキャップを外した俺のレベルは六十。


 レベルが五十二のアーク・デーモンに負ける要素はない。


「減らず口を。今のお前の傍には、エリシアやアメイヤはいないぞ」


「お前を倒すのに、あいつらの力は必要ない」


「随分と舐められたものだな」


「御託は良いからかかって来い。弱いモンスターばかりを相手にしたせいで、体が鈍ってるんだ」


 そう言って、俺が一部の隙もなく剣を構えると、アーク・デーモンは目にも留まらぬ早さで襲いかかって来た。


 炎を纏った拳の連打が迫って来たが、全て剣で叩き落とすことができた。


 俺はカウンターを狙うべく、体の筋肉を躍動させる。それから、狙いすました一撃を放った。


 その一撃は、際どいタイミングで体を交錯させたアーク・デーモンの頭部を鮮やかに斬り飛ばす。


「また敗れるのか、俺は……」


 アスファルトの地面に落ちた頭部がそんな台詞を発した。


「生き返った命は大切にするべきだったな。それとも、また生き返ることができると高を括ってるのか?」


「さ、さあな」


 アーク・デーモンは意地を張るように笑うと、その体は塵へと帰って行った。


 その様子を虚しそうな顔で見ていた俺だが、すぐに歩みを再開する。


「お前が桂木修一か。天使が張り付いている桂木留美とは会わせるわけにはいかんぞ」


 アパートにまであと少しと言うところで、武器を持った人型のモンスターたちの集団と遭遇してしまった。


「俺を止められるつもりか」


 レベルが二十に達していないモンスターたちなど烏合の衆も当然。


 はっきり言って、こいつらも俺の敵ではない。


「止めなければ、あのお方の怒りを買う。それだけは絶対に許されないことだ」


 先頭にいるリザードマンのようなモンスターが粗末な剣を振り上げた。


「なら、全員、纏めてかかって来い。人間たちを食い物にするお前たちを見逃してやるほど俺は甘くはないぞ」


 モンスターたちは人を殺し過ぎている。


 道端に転がっている人間の死体を見て、俺もモンスターに情けをかけようなどという甘い考えは消し飛んでいた。


「ほざけ!」


 俺の挑発を受け、冷静さを失ったモンスターたちは武器を振り上げて襲いかかって来た。


 が、俺の繰り出す嵐のような斬撃を浴びて、モンスターたちの体はバラバラになる。


 一太刀で死ねたモンスターは幸いだ。


 だが、腕や足を斬り飛ばされたモンスターたちは血を撒き散らしながら地面を転げ回っている。


 俺は雑魚に構っている暇はないと思い、そのままアパートの敷地に入る。


 すると、アパートはなくなっていて、無惨な焼け跡だけが残っていた。


 その周りには誰が倒したのかは知らないが、モンスターたちの死体がゴロゴロしていた。


「修一さん?」


 呆然としていた俺の後ろから見覚えのある少女が現れる。


「もしかして、留美か?」


 最後に留美の顔を見たのは、祖母の葬式の日だった。


 なので、見違えるような成長をしていた留美には戸惑った。が、それでも留美の顔が分からないほど俺も耄碌はしていない。


「そうだよ。やっと会うことができた。本当に、本当に長かったよ……」


 留美はボロボロと涙を流しながら言うと、俺の体に抱きついて来た。

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