エピソード1.2 大学
〈エピソード1.2 大学〉
留美はラズエルと共に三崎大学に来ていた。
三崎大学付属学園に通っていた留美も大学の図書室は頻繁に利用していた。なので、大学の構造はある程度、把握している。
ちなみに、大学では生徒たちが独自の組織を作り、学内の平和を維持していた。
大学の敷地も強固なバリケードで守られている。
留美は生徒たちや避難してきた人たちで溢れ返っている校舎内を歩く。そして、康太のいる研究室へと辿り着いた。
「失礼します、桂木留美です」
留美は期待と不安が入り混じったような気持ちで言うと、研究室の中に足を踏み入れた。
「君が修一の姪っ子の留美ちゃんか。もう、自己紹介は不要だと思うけど、僕が杉浦康太だ。よろしく」
白衣を着た男性が、留美の前に進み出る。それから、気さくな感じで、留美に手を差し出してきた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
康太の手を握り返した留美は、卒業アルバムに乗っていた顔とほとんど変わらないなと思った。
「自衛隊の無線を傍受していたから君の置かれている状況は把握している。大変なことに巻き込まれてしまったね」
康太は苦笑しながら、留美の肩に軽く手を載せた。
「はい」
留美が両肩を落としながら返事をすると、ラズエルが首を巡らせる。
「ライラスはやっぱり戻って来てないか」
ラズエルはつまらなそうな顔をして言った。
「教授なら一足先に国外に脱出してから、音沙汰がないよ」
康太は白衣の襟を正しながら口を開く。
「まあ、教授がアメリカやヨーロッパの政府に事の次第を告げたから、国連も動いてくれたんだけどね」
留美はその教授と言う男にも会ってみたいと思った。
「ちなみに、修一のパソコンのWiFiを接続状態にしておいたのは僕と教授だよ。僕と教授はパソコンの外の音声を常に拾い上げていたんだ」
康太はバツが悪そうな笑みを浮かべながら更に言葉を続ける。
「修一を探そうとしている連中なら必ずノートパソコンを奪い取るだろうし、そいつらの音や会話を拾えば、こちらもタイミングよく動ける」
「なるほど」
留美は修一の部屋を掃除していた時の独り言も聞かれていたのかと思い、顔が熱くなった。
「だから、教授が動かした国連の背後にいたラズエルも、速やかに留美ちゃんを守ることができたんだよ」
留美もそのことには感謝している。康太たちの機転がなければ、自分は確実に死んでいたわけだから。
「そろそろ全てを聞かせてください、杉浦さん」
留美は康太が全ての事情を知っていると直感しながら言った。
「分かってる。長い話になるから、とりあえず、そこのソファーにでも座ってくれ。あと、インスタントだけどコーヒーも飲むかい?」
そう言うと、康太はコーヒーの香りが漂うマグカップを掲げた。




