エピソード3.5 地獄と化した町
〈エピソード3.5 地獄と化した町〉
修一の実家があった場所を後にした留美は、自転車を引きながらとぼとぼと歩く。
その間、モンスターに襲われている人たちを見た。
それも一人や二人ではないし、家やマンションからも大きな火の手が上がっている。
あちらこちらから悲鳴も聞こえて来るし、道端には人間の死体が幾つも放置されていた。
今の三崎市は阿鼻叫喚の地獄だ。
町の人たちを助けたかったが、ラズエルはキリがないと言って見て見ぬ振りをしている。
力のない留美にできることは何もなかった。
「ここまで来ても何の手掛かりも掴めなかったし、これからどうするつもりなんだい?」
襲い掛かって来た獣のようなモンスターを見えない力で弾き飛ばすと、ラズエルはそう尋ねてくる。
「私は自分の家に戻るよ。ここで突っ立っていても、モンスターに襲われるだけだし」
留美は自転車を引きながら、ラズエルの後ろにしっかりと付いていた。
完全に心が麻痺してしまったせいか、襲ってくるモンスターを怖いと思うこともなくなっていた。
「戻れば、また自衛隊に捕まるかもしれないぞ。それでも良いのか?」
「わざと捕まれば、家族のいるところまで連れて行ってもらえるかもしれない」
それは苦肉の策だった。
だが、家族が殺されている可能性は低いと見るべきだろう。そうでなければ、家に死体が転がっていたはずだ。
「問答無用に発砲されなきゃ良いけどな。自衛隊の奴らは、見境というものがなくなって来ているし」
「その時は助けてよ」
「別に構わないけど、わざと捕まるようなら、おいらはもう君を助けてはやれないよ」
「それは困るよ」
「でも、敵陣にはおいらよりも力を持った奴がいるかもしれない。自衛隊を動かしている奴らの中には必ず人間ではない存在がいるだろうし」
ラズエルは再び襲い掛かって来たモンスターを、見えない力でバラバラに引き裂きながら言った。
「じゃあ、どうすれば良いの?」
留美はグロテスクな肉の塊となったモンスターを見て、吐きそうになる。
「それは、おいらにも分からない」
「じゃあ、私なんてもっと分からないよ。お願いだから、もっと真剣に考えて」
こんな状態でもラズエルは余裕のある態度を崩さないので、留美もやきもきしていたのだ。
「おいらはいつだって真剣だよ」
「本当かな?」
「うん。まあ、とりあえず落ち着ける場所に行って、何か食べよう。お腹が空いていると冷静な判断もできなくなるからな」
その意見には賛成だったので、留美は特に異は唱えずに自転車を漕ぎ始めた。




