表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/108

エピソード3 エンシェント・ドラゴン

〈エピソード3 エンシェント・ドラゴン〉


「お前がこの遺跡を我が物にしているエンシェント・ドラゴンか」


 俺の視線の先には八メートルを超える巨体を持つドラゴンがいた。


 すぐにアナライズを起動させるとエンシェント・ドラゴンのステータスが表示される。


 それを見ると、エンシェント・ドラゴンのレベルは六十三だった。


 魔界でのイベントを終えてレベル・キャップを外した俺たちのレベルは五十五。


 六十以上のレベルを持つエンシェント・ドラゴンとの戦いは厳しいものになりそうだ。


「ほう、自ら我の前に現れる人間がまだいたとはな。その度胸は見上げたものだが、あまり賢いとは言えんな」


 圧倒的な存在感を持つエンシェント・ドラゴンは滑らかな声で言った。


「随分とたくさんの人間たちを殺してきたようだが、それもここまでだ。今から、お前を討伐させてもらう」


 俺はエンシェント・ドラゴンから放たれるプレッシャーに押されるも、負けまいと気迫の籠った声を発する。


「千年を生きるエンシェント・ドラゴンの我に適うとでも思っているのか?」


 エンシェント・ドラゴンの胸部は赤く脈を打つように光っている。あれが弱点の心臓のようだ。


「思っているから来たんだ」


 俺は敢然と立ち向かうように言った。


「愚かだな。だが、お前のような澄んだ目をした人間は久しぶりに見た。これは、楽しめるような戦いになりそうだ」


 エンシェント・ドラゴンは大きく顎をしゃくる。


 それを見て、俺も剣を握る手により一層の力を込める。


「話は終わりだ。では、行くぞ、エンシェント・ドラゴン!」


 その声と同時に、俺たちは流れるような動きでエンシェント・ドラゴンを取り囲んだ。


「来い、脆弱な人間どもよ! 我に戦いを挑んだことをあの世で後悔させてやろう!」


 そう叫ぶと、エンシェント・ドラゴンはいきなり口から灼熱の炎を吐いてきた。


 たちまち周囲が火の海になるが、熱さは感じない。


 魔法のマントが、俺の周りにバリアを張ってくれているからだ。


 俺の使うシェル・ガードの魔法では、この凄まじい炎を防ぐことはできなかっただろうな。


 エリシアやアメイヤも魔法の防具で、炎を危なげなく防いでいる。


「この我の炎を無効化するとは、なかなかのものだ。なら、これならどうだ?」


 エンシェント・ドラゴンは白く輝く光線を弾幕のように放ってきた。


 銃弾の如き早さで飛来してきたので、俊敏さには自信がある俺も避けられなかった。


 これは、セイント・ビームの魔法だな。


 が、光属性の魔法を防ぐアミュレットを身に着けていたおかげで、セイント・ビームは体に命中する前に掻き消えた。


「我の魔法を打ち消すか。かなり念入りに対策を立ててきたようだな。だが、まだ甘い!」


 エンシェント・ドラゴンはいきなり跳躍すると、俺との間合いを瞬時に消滅させる。

 それから、サバイバル・ナイフのような爪を振り下ろしてきた。


「鋼鉄すら切断する我の爪、どこまで受け切れるか見物だな」


 俺は死神の鎌のような爪を必死に避ける。が、避けきれずに剣で受け止めると、あまりの衝撃に体が沈み込みそうになった。


 が、そんな俺を助けるようにアメイヤが槍でエンシェント・ドラゴンに突きかかろうとする。


「邪魔だ、小娘!」


 エンシェント・ドラゴンは光り輝いている爪を振り下ろす。すると、三本の光の刃がアメイヤへと放たれた。


 アメイヤは光の刃を槍で薙ぎ払ったが、肩を切り裂かれて膝を突く。


「光属性ではなく、エネルギー属性の魔法に切り替えさせてもらった。これで、我の攻撃を無効化することはできぬぞ」


 エンシェント・ドラゴンがそう自信たっぷりに言うと、俺はバックステップをして間合いを取る。


 その動きに、ピッタリと息を合わせるように、エリシアが高らかに魔法の名前を叫ぶ。


「「「エクスプロード!」」」


 炎の塊がエンシェント・ドラゴンに衝突し、直後、空間が爆ぜ割れたかのような大爆発が起きた。


 エンシェント・ドラゴンの巨体は爆発に呑みこまれる。


 が、すぐに、爆炎の中からせせら笑うような声が聞こえてくる。


「小娘のくせに、恐ろしい魔法を使うではないか。だが、相手が悪かったな。我に、人間の魔法は通用せぬ」


 爆炎から飛び出した無傷のエンシェント・ドラゴンは、エリシアに向かって爪を横なぎに振り下ろす。


 エリシアは魔法のレイピアで受け止めようとしたが、如何せん膂力が違い過ぎる。


 受け止めてきれずにエリシアの体は大きく吹き飛ばされて床をゴロゴロと転がる。


 それでも、器用に態勢を整えたエリシアが立ち上がろうとすると、エンシェント・ドラゴンの爪から光の刃が放たれる。


 それはエリシアの腕や足を切り裂いた。


 たまらずエリシアも頽れる。


「これで分かっただろう。幾ら小賢しい対策を立てようと、人間では我に勝つことはできぬということが」


 エンシェント・ドラゴンは泰然としながら言った。


「それはどうかな?」


 俺が笑みを崩さずに言うと、エンシェント・ドラゴンも讃嘆するような声を発する。


「ほう、まだ強がるだけの気勢があるか」


 エンシェント・ドラゴンは口の端を豪快に吊り上げる。


「こんな遺跡に引き籠っているお前と違って、人間は絶えず進歩しているんだ。今からそれを教えてやるよ」


 俺はそう不敵に言うと、刀身が紫色に光るデスブリンガーを構える。


「面白い。では、やって見せろ!」


 そう叫ぶと、エンシェント・ドラゴンは圧巻の巨体で俺へと迫って来た。


 小細工は使わず、力押しで俺を叩き潰そうという気か。それなら、こっちはスピードで勝負をしてやる。


「「「ライトニング・ペネトレイト!」」」


 俺が放った最も早さに優れている技は、エンシェント・ドラゴンの二の腕を切り裂いた。


 更に、その傷口は酸でも浴びたように煙を上げながら溶けていく。


 光属性のモンスターの肉体を溶かすのはデスブリンガーの効果だ。


 溶かされた傷は、エンシェント・ドラゴンが得意とする光属性の回復魔法を使っても、そう簡単には治すことはできない。


「これは闇属性の刃か。だが、この程度の傷で怯む我ではないぞ」


 エンシェント・ドラゴンは爪による苛烈な攻撃を繰り出してくる。それを死に物狂いで避けながら、俺は果敢に斬りかかる。


 エンシェント・ドラゴンは強靭な爪で俺の斬撃を捌く。


 が、俺の繰り出す攻撃も激しさを増していく。


 もっと早く動かなければと、思考の方も加速する。


 すると、エンシェント・ドラゴンもだんだん俺の動きに付いて来れなくなる。


「こ、この早さは!」


 エンシェント・ドラゴンの顔に初めて焦りが生まれる。


 俺も畳みかけるなら今だと思いながら、疾風迅雷とでも呼ぶべきスピードで斬撃の雨を浴びせ続けた。


 それでも、エンシェント・ドラゴンは千年を生きる貫禄を見せ付けるように、爪による切り払いで俺の攻撃を全て凌いだ。


「大した動きだが、貴様と我では戦いにおける年季が違うわ!」


 エンシェント・ドラゴンはこちらの気力を削ぎ落すような叫び声を上げる。


 ならば、と思った俺は体の筋肉が引き千切れそうになりながらも、那由他の如き突きを放った。


 分裂でもしているかのような剣の突きが、エンシェント・ドラゴンの体を絶え間なく襲う。


 それによって、エンシェント・ドラゴンの動きにも大きな綻びが生じた。


 その訪れたチャンスを見逃すことなく、俺は最大の攻撃力を持つ技を放つ。


「「「グランド・スマッシュ!」」」


 俺の剣はエンシェント・ドラゴンの爪を砕き、そのまま腕を切断した。


「よ、よくも、我の腕を!」


 エンシェント・ドラゴンはあまりの痛みのせいか、悶え苦しむような顔をする。


 傷口からは煙が吹き上がり、肉もドロドロと溶け始めた。


 やはり、シェイドが用意してくれたデスブリンガーの効果は抜群だな。


 魔界からシェイドを連れ戻したのは正解だった。


「もう、許さんぞ! 貴様の体をバラバラに引き裂いて、肉の塊にしてくれるわ!」


 エンシェント・ドラゴンは耳を劈くような咆哮を上げる。それから、溶けた傷口がある腕を強引に食い千切る。


 すると、たちまち新しい傷口から肉が盛り上がり、それは、あっという間に腕の形を取った。


 エンシェント・ドラゴンの持つ再生力には、俺も舌を巻くしかない。


「この我を怒らせた者に待つのは、死のみだということを知れ!」


 激昂したエンシェント・ドラゴンは俺に向かって烈火の如く爪を振り下ろしてくる。


 だが、俺の動きはエンシェント・ドラゴンのスピードを完全に凌駕していた。


 その上、再生されたばかりの腕が繰り出す攻撃にはキレがない。


 それでは、俺の体を捉えられるはずもない。


 俺はここぞとばかりに嵐のような斬撃をエンシェント・ドラゴンに浴びせた。


 それによって、エンシェント・ドラゴン体は傷だらけになり、夥しい血が流れ出る。


 傷口からは白煙も立ち昇っているし、エンシェント・ドラゴンの体は満身創痍の状態になっていた。


「人間ごときが、我をここまで追いつめるとは……」


 エンシェント・ドラゴンはそう声を漏らすと、口から苦しげに血を吐き出す。


 受けたダメージが大きすぎて、満足な動きが取れないようだった。


 そんなエンシェント・ドラゴンの隙を見逃すことなく、体勢を立て直していたエリシアとアメイヤの二人も迅速に動く。


「私のことを忘れてもらったら困る。受けたダメージは倍返しだから」


 アメイヤは横合いからエンシェント・ドラゴンの足に槍の穂先を突き刺した。


「私も何もできないままと言うわけにはいきません。この一撃で、シュウイチさんの活路を開きます」


 反対側から迫っていたエリシアもレイピアでエンシェント・ドラゴンの脇腹を抉る。


 これには、エンシェント・ドラゴンも「グハッ!」と痛みに耐えかねたような声を発した。


「こ、この我が敗れると言うのか……。こんな、こんな馬鹿なことが……」


 エンシェント・ドラゴンは息も絶え絶えの声で言った。


 それを受け、俺は大胆な笑い方をする。


「ここまでだ、エンシェント・ドラゴン。人間の持つ可能性の力を思い知れ!」


 そう叩きつけるように言うと、俺はがら空きになったエンシェント・ドラゴンの懐に潜り込む。

 それから、赤く脈を打っている心臓を渾身の力を込めて刺し貫いた。


「「「グァァァァァァァァァァ!!!」」」


 心臓から血を吹き上がらせたエンシェント・ドラゴンは絶叫を上げて、そのままドスンと横に倒れた。


 心臓を破壊されたエンシェント・ドラゴンはピクピクと痙攣している。


 それを見た瞬間、俺はふと奇妙な感覚に捕らわれる。


 前にもこんなことがあったと思ってしまったのだ。


 これは、デジャビュか……。


 俺がそんなことを考えていると、エンシェント・ドラゴンが最後の力を振り絞るように口を開く。


「まさか、下等な生き物と見下していた人間が、これほどの力を付けていたとはな……。人間の持つ可能性の力、特と拝見させてもらった……。み、見事だ……」


 そう吐き出すように言うと、エンシェント・ドラゴンの瞳から輝きが消えていき、体の方も完全に動かなくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ