エピソード4.5 拉致された家族
〈エピソード4.5 拉致された家族〉
留美が買い物を終えて家に帰って来ると、そこには誰の姿もなかった。
家の中は何やら荒らされていて、畳に靴の跡が幾つも付いていた。
留美は誰かが家の中に押し入ったことに気付き、心が震えた。
「この靴跡は自衛隊の物だ。お前の家族は自衛隊に連れて行かれたと考えるのが自然だろうな」
ラズエルは靴跡の臭いを嗅ぎながら淡々と言った。
「どうしてお母さんたちが!」
留美は癇癪を引き起こしたように叫んだ。
「おそらく、天使が背後についている国連の部隊がやって来たことで、連中も痺れを切らしたんだろう」
ラズエルは留美の激情を他所に、冷静に分析するように言った。
「だから、私の家族を拉致したって言うの!」
「おいらに当たっても仕方がないだろ」
「こんなのってないよ……」
留美がガックリと膝を突いていると、背後から自動小銃を持った自衛隊員たちがぞろぞろと現れた。
「桂木留美だな」
「あなたたちは?」
「我々は自衛隊だ。上層部からの指示が来た。お前を本部まで連行する」
自衛隊員の一人がそう機械的に言うと、留美の体に手をかけようとした。
「い、いや!」
留美は大きく後ろに下がる。
「抵抗するなら、強引な手段を取っても構わないとの指示も出ている。だから、無用な怪我をしたくなかったら大人しくしろ!」
自衛隊員たちは威嚇するように銃を構えながら言った。
「留美はやらせないよ」
留美と自衛隊員の愛でに割って入ったのはラズエルだった。
「き、貴様は、ひょっとして創造神に仕えているという天使か!」
自衛隊員は激しく動揺する。
「その通り」
ラズエルは猫の顔でにっこり笑った。
「貴様たちが、この日本国の崇高なる目的の邪魔をしようとしているのは聞いているぞ」
「聞いているから、何だって言うのさ」
「全隊員、発砲を許可する。その猫を撃ち殺せ!」
その場にいた自衛隊委員たちは一斉に銃の引き金を引いた。弾丸の雨がラズエルの体に降り注ぐ。
留美も血だらけになるラズエルを想像して、思わず目を瞑ってしまった。
「酷いことをする奴らだな」
硝煙の中から現れたラズエルは何事もなかったように言った。
「弾丸が空中で静止しただと。やはり、お前はこの日本国に仇を為す存在だ」
自衛隊員の言う通り、弾丸は全て時が止まったかのように空中に縫い付けられていた。
「今度はおいらの方から行かせてもらうぜ」
ラズエルはスパークする光の球を自衛隊員たちの足元にぶつけた。それによって生じた爆発は自衛隊員たちを紙屑のように吹き飛ばす。
「ぐ、グワー!」
自衛隊員たちは転げ回った。
「こんな恐ろしい天使と手を組むとはな、桂木留美。お前のことは上層部に報告しておくし、この先、安息の日々があるなどと思うなよ」
かろうじて爆発から逃れた自衛隊員はそう言い捨てて、その場から逃走した。




