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エピソード1.5 休校

〈エピソード1.5 休校〉


 留美はいつもとは違う空気が漂っている教室に入る。


 これは何かあったなと、留美も瞬時に察した。


 そのまま留美が席に着くと、すぐさま裕子が勢い余るように話しかけてきた。


「留美、この学校で男子生徒が三人も殺されたらしいわよ!」


 裕子は凄い剣幕で捲し立てた。


「本当?」


 留美は訝るような顔をする。


 警察官たちの件があったので、何があってもおかしくないと思っていた留美は、あまり大きな反応を見せられなかった。


「ええ。私も学校に来て初めて聞いたことだから驚いているのよ」


「私も何にも知らないまま学校に来ちゃったよ」


 学校で殺人事件があったのに、連絡網さえ回って来ないなんて、今の状況は本当にどうかしている。


 ひょっとして、教師たちまでもが、警察とグルになっているのだろうか。


「でしょうね。しかも、その三人は体をバラバラに切断されていたらしいわ」


「それは凄惨だね」


 犯人は警察官を殺した、あの熊のような化け物がかもしれない。


「ええ。発見した女子生徒も、体調不良で病院に運ばれたらしいわ」


「私だったら、気絶して倒れていたかもしれないね」


 でも、今の留美は感覚が麻痺していたせいか、自分でも不思議なくらい平静だった。


「私だって同じよ。とにかく、今日はホームルームがあるだけで、明日からは学校も当分、休校になるらしいわ」


 学校が休みになれば、喜ぶ生徒も居そうだ。


 が、そんな不謹慎な様子を見せている生徒は男子たちの中にさえいなかった。


 みんな、見えない何かに怯えているような感じだ。


「さすがに、三人も殺されたら、いつも通りってわけにはいかないよね」


 留美の中のいつも通りという感覚はとっくに失われている。


「その通りよ。一昨日はビルの爆破テロも起きたし、一体、この町はどうなっているのよ」


 裕子はヒステリックに言った。


「それは神様じゃなきゃ分からないかもしれない」


 留美はポツリと言った。


「神様がいるなら、そもそも、今回みたいな事件は起きないでしょ」


「一本取られたね」


「こんな時に馬鹿な冗談は言わないで」


 裕子は不快感を滲ませながら、眉間に皺を寄せる。


「ゴメン、ゴメン」


 留美は苦笑いしながら謝った。


「まあ、学校も安全な場所じゃないって分かったからには、みんなも家でじっとしてるしかないでしょうね」


 修一のアパートが燃やされたことを知っている留美は、自宅に居ても安全だとは到底思えなかった。


「私は帰る前に図書室に寄ってくよ。休校になるにしても、新刊のライトノベルくらいは並べておきたいからね」


 留美はどこに居ても危険なことには変わりないと思いながら言った。


「止めなさいよ。学校の中に殺人犯がいるのかもしれないのよ」


「その殺人犯は化け物だったりして」


「それはアニメや映画の見すぎってもんだし、はっきり言って、笑えないわ」


 裕子も化け物が現れたら面白いと言っていた。


 なのに、いざ、こんな事件が起きると、あっさり態度を翻してしまう。


 人間というのは本当に現金な生き物だと留美は心の中で毒づく。


「だろうね」


 留美は全てを知るためには、また化け物に襲われる必要があるかもしれないとさえ思っていた。


「ったく、彼氏もテロ事件が起きてから全然、連絡が付かないし、瓦礫の下にでも埋まっているのかしら」


 裕子は苛立った様子で言うと、留美との話を打ち切って、スマホの画面を確認し始めた。

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