エピソード4.5 殺された生徒たち
〈エピソード4.5 殺された生徒たち〉
留美の通っている三崎大学付属学園の部室棟で、オカルト研究会の部員が怪しげなことをしていた。
三人の部員の前には、魔術的な文字や記号が躍る五芒星が描かれている。
オカルトの本を読んだ部員たちは、幽霊を呼び出す儀式をしていたのだ。
その手順は本の内容を正確にトレースしている。
「悪霊たちの王、レギオン様。どうか、我々の前に、テロで死んだ人たちの霊を呼び出したまえ!」
そうおどろおどろしい声を発しているのは、ショッピング・センターが潰れたせいで妹を亡くした男子生徒だ。
「どうか、レギオン様。何卒、何卒、我が妹の霊をここに呼び出したまえ!」
男子生徒は同じような文言を繰り返す。
ちなみに、男子生徒の妹はショッピング・センターに面した道路にいたので、その遺体はすぐに発見された。
が、瓦礫の下にはまだ見つかっていない大勢の犠牲者がいるのだ。
あと、レギオンというのは新約聖書にも出て来る悪霊たちの集合体だ。
「やっぱり、何も起こらないな。五千円もする魔術書もでたらめだったか」
部員の一人が額の汗を拭った。
「ああ。死んだ人間の霊を呼び出すなんて、土台、無理な話だったんだよ。もう諦めようぜ」
もう一人の部員が無念そうな顔をする。
「クソッ! 何の罪もない妹が、どうして死ななければならない。この世には神も仏もないのか!」
妹を亡くした部員が義憤を吹き上がらせるように言った。
すると、突如として部室の中央に空間の割れ目のようなものが出現する。その割れ目からは熊のような化け物が這い出してきた。
これには部員たちも唖然とした顔をする。
「くだらぬことをやっているようだな、人間どもよ」
化け物は邪悪な笑みを浮かべながら言った。
「ば、化け物だ! 」
「まさか、本当に出るなんて! しかも、噂で聞いていた化け物と特徴が同じだぞ」
「これが儀式の効果なのか? でも、レギオン様って感じじゃないよな?」
三人の男子部員は愕然としながら化け物の巨体を見た。
「そんなに妹に会いたいのなら、この俺が合わせてやろう。ただし、再会できる場所は、あの世だがな」
そう言うと、化け物は鋭い爪の生えた腕を振り上げた。
「えっ?」
妹を亡くした男子生徒の頭部があっさりと宙を舞う。
部室の床に鮮血が撒き散らされた。
「ひ、ひぃー!」
腰を抜かした生徒の体も、化け物の爪によって三枚に下ろされる。
グロテスクな内臓がぶちまけられた。
「誰か、助け……」
入口へと駆け出そうとした男子生徒も背中を深々と切り裂かれて倒れた。
三人の凄惨な死体を見ながら化け物は口の端を大きく吊り上げる。
「そろそろ、大きな動きを見せても良さそうだな。思う存分、暴れられるような時期が来るのは近い」
化け物は愉快そうに笑うと、また空間の割れ目の中に戻って行った。




