エピソード3.5 厳戒態勢
〈エピソード3.5 厳戒態勢〉
留美は裕子と学校からの帰り道を歩いていた。
その周りには警察官や自衛隊の人間がたくさんいて、忙しそうに動いていた。
警察官に話しかけられた時は、留美も身構えてしまった。が、裕子がいたおかげか、自分が捕まるようなことはなかった。
その時の様子を見るに、全ての警察官が留美を狙っているわけではないようだった。
「まさか、こんなに大きいテロが起こるなんてね。さっきスマホで確認したら、とんでもない数の死者が出ていたわよ」
裕子はどこか面白がっているような声で言った。
「そうだろうね。倒れたビルが隣にあったショッピング・センターも圧し潰したから」
ショッピング・センターの惨状を見た留美は心の中で打ち震えていた。
「あのショッピング・センターには私たちも、しょっちゅう足を運んでいたからね」
「うん」
「テロが起きた時に、あそこにいたらと思うとぞっとするわ」
夏の日差しを浴びていた裕子は顔の汗をハンカチで拭いながら言った。
「同感だね。でも、クライスター社の本社ビルがテロの標的になったのは何でだろう?」
留美は何か理由があるはずだと確信していた。
直感的に全ての原因を作っていたのはクライスター社かもしれないとも思っていたし。
「そんなことは分からないわよ」
「だよね」
「ええ。でも、クライスター社は外国でも有名な会社みたいだし、何かの恨みを買っていたのかもしれないわね」
的外れな意見ではないと思っていたが、留美は心の中で違うなと首を振った。
「そっか。でも、テロを起こしたのは化け物ってことはないよね」
留美は裕子の反応を慎重に窺いながら言った。
「さすがに、それは発想が飛躍し過ぎでしょ。化け物が真昼間の本社ビルの中に入って行けたと思う?」
「絶対に無理だね。でも、空間の割れ目の中から現れたら?」
留美の前で警察官を殺した化け物も突如として現れた。
あの化け物なら、歩いては行けない場所に入り込むことも可能かもしれない。
「やけに具体的じゃないの。まあ、そんな風に化け物が現れるとしたら、もう私たちの常識は通用しないわね」
裕子はクライスター社の本社ビルがあった方向を一瞥しながら言った。
「そうだね……」
留美はそう力なく呟く。それから、全てが崩れて、瓦礫の山と化したクライスター社の本社ビルの映像を思い浮かべた。




