エピソード6.5 夏休みの終わり
〈エピソード6.5 夏休みの終わり〉
「夏休みももう終わりだね。今年の夏休みは怖いことがいっぱいあったけど、そういうのは全部、夢だった気さえするよ」
自室のベッドで寝転がりながら留美は独り言を呟く。
「でも、人を殺す化け物とか喋る猫を見ちゃったからな。あれは絶対に夢じゃないし、特に喋る猫とはまた会うことになりそうだよ」
喋る猫、ラズエルは自分のことを常に見ていると言っていた。
その言葉が嘘でなければ、また何かあれば、ラズエルも姿を現すはずだ。
「それにしても、修一さんはどこに行ったんだろうね。この町で起きている異変は修一さんに原因がある気がするし」
様々な勢力が修一の行方を追っているようなことをラズエルも言っていた。
「だから、色んな人たちが血眼になって修一さんを探し出そうとしているんだろうな」
留美も修一にこれほど会いたいと思ったことは今までなかった。
「誰か相談できる人はいないかな。裕子にこんな話をしても絶対に信じてもらえないだろうし」
それに、できれば裕子は巻き込みたくない。
裕子がいつも通りにあっけらかんとしてくれるからこそ、自分も安心して日常生活に身を置くことができるから。
「文芸部の先輩たちだって、きっと力にはなってくれない。おかしなことを言えば、変に心配させることにもなっちゃう」
達也や晴香なら的確なことを言ってくれそうだが、それには、留美の周りで起きたことを信じてもらう必要がある。
だが、今の段階ではそれは厳しいだろう。
「でも、一人だけ全ての事情を知っていそうな人がいるんだよね」
留美は天井を睨みつける。
「杉浦康太……、修一さんの高校の時の親友でクライスター社のシステム・エンジニア。そして、修一さんの映像を使ってゲームを売ろうとしている人」
留美もネットや修一の実家にあった卒業アルバムなどを使って、情報収集を試みたのだ。
結果、修一のことを知っている人間がいるとすれば、杉浦康太しかいないという情報にまで辿り着いた。
「動画サイトで見た修一さんの映像は、作られたものなんかじゃないかもしれない。本当にあの姿で化け物たちと、どこかで戦っているのかもしれない」
留美はゲームのPVに映っていた修一の必死な顔を見て、そう思わずにはいられなかった。
「何て考えちゃう私は重症なのかな?」
留美はゴロンと寝返りを打つと大きく伸びをした。
「でも、この先、おかしなことはどんどん起きていく気がする。たぶん、どこかで全てが明るみになる」
特に人を殺す化け物の存在を隠し通すのは無理があるだろう。
「そうなったら、この町はどうなっちゃうんだろうね?」
留美はきっと全ての常識がひっくり返るようなことは起きると思いながら、明日から始まる学校に備えて眠りについた。




