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エピソード2.5 ぶり返した恐れ

〈エピソード2.5 ぶり返した恐れ〉


 留美は家に帰るとベッドに横たわりながら震えていた。


 こうしていると、自分が警察官たちから狙われ、おかしな化け物にも殺されかけたことがよりリアルに感じられる。


 全ては夢や幻だったと思いたい。


 実際、喋る猫が出てきた瞬間なんて、夢だったとしか思えない。


 が、どんなに現実逃避をしようとしても、警察官を殺した熊のような化け物の姿は目に焼き付いて離れなかった。


「留美、夕ご飯ができたって言ってるでしょ。早く、起きてきなさいよ」


 留美の母親、小夜子は腰に手を当てながら真っ暗だった留美の部屋に入って来る。


「ゴメン、お母さん。今、ちょっと食欲がないんだ……」


 留美は寝返りを打ちながら言った。


「あんた、修一さんの部屋の掃除に行ってから何かおかしいわよ。男の人の部屋だし、変な物でも見たの?」


 その言葉を聞いて、留美はさすが母親だと思った。


 母親には嘘を吐けない。


「変な物なんてなかったよ。ただ、修一さんはまだアパートに帰ってきてないんだよね。その上、アパートは火事で燃えちゃったし。だから、ちょっと心配で」


 留美は力の籠らない声で言った。


「修一さんは親戚の集まりにも顔を見せない人よ。お婆ちゃんの三回忌にも出なかったし、そんな人を心配したってしょうがないじゃない」


 小夜子の言い草を聞いて、留美も幾ら親戚とはいえ、四十歳のおじさんにこんなに心を砕いている自分が馬鹿らしくなった。


「お母さんは修一さんのことは何か知らない?」


 留美はもう修一だけの問題ではないと思いながら尋ねる。


「知らないわ。ただ、修一さんのお母さん、つまり、美咲さんのことだけど、家の周りにおかしな男の人がウロウロしてるって言ってたわね」


 それを聞いて、留美はあの探偵の男を思い出していた。


 探偵の言っていた不吉な言葉も。


「そうなんだ」


「しかも、ウロウロしている男の人は一人じゃないみたいなのよ。だから、美咲さんも気味が悪いって零していたわ」


 小夜子は頬に手を当てながら言った。


「そんなことがあったんだ。何だか怖いね」


「ええ。美咲さんも警察には相談したらしいんだけど、相手にはしてくれなかったそうよ」


「まあ、その程度のことじゃ、警察は動いてくれないよね」


 警察も何を考えているのか分からないし、そうなると本当に頼れる人間がいない。


「ほら、修一さんの銀行口座に、おかしな大金が振り込まれてたって言うでしょ。しかも、お金の振り込みは今も続いているみたいだし、絶対、何かあったのよ」


「……」


 沈黙した留美はクッションに顔を埋める。


 全てを忘れてしまいたかったが、あんなことがあっては、それもできそうになかった。


「って、そんなことよりも、さっさと夕飯を食べて勇人の夏休みの宿題の面倒でも見てちょうだい。あの子、まだ算数のドリルを終わらせてないのよ」


 そう素っ気なく言うと、小夜子は留美の部屋から出て行った。

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