エピソード3.4 姿を現した怪物
〈エピソード3.4 姿を現した怪物〉
留美はノートパソコンを抱え込みながら懸命に走っていた。
その背後から四人の警察官が留美を追いかける。
ただの女子高生の留美と体を鍛えている警察官では脚力が違うので、捕まるのは時間の問題だった。
留美はいつの間にか殺人事件が起きたと言う路地に入り込んでいた。
そのまま走っていくと現場検証のテープの跡が残っている路地の袋小路に追い詰められてしまう。
「まさか、捕まる場所に、最初の事件があったここを選ぶとはな。因果と言えば因果だし、もう逃げることはできんぞ!」
警棒を手にしている警察官の一人が舐めるような目で留美を見た。
「な、何でこんなことを?」
留美はもう駄目だと思いながらそう尋ねた。
「それはお前のような小娘が知るべきことではない。とにかく、大人しく捕まれ。そうすれば、ここで痛い目を見ることはないぞ」
警察官は警棒の先端を留美に向けながら言葉を続ける。
「もっとも、連れて行かれた先でどうなるかは分からないがな、ハハハッ!」
警察官が舌を出して粗野な笑みを浮かべると、その背後の空間にいきなり割れ目ができた。
それを目にした留美は周囲の空気が一変したのを感じて、腕に鳥肌が立った。
「な、何?」
留美は割れ目の中から這い出できた熊のような化け物を見て、全身が総毛立つ。
もちろん、驚いたのは留美だけではなかった。
「も、モンスターが現れたぞ! やはり、署長が言っていたことは本当だったんだ!」
警察官は化け物の方を振り返ると甲高い声を上げる。
その瞬間、化け物のナイフのような爪が振り下ろされる。肉と骨が切断される嫌な音が鳴った。
「ギャー!」
絶叫した警察官の一人が体をバラバラにされて死んだ。
他の警察官たちも棒立ちすることしかできない。
「け、拳銃で応戦しろ!」
我に返った警察官の一人がリボルバー式の拳銃を構えて、射撃する。すると、銃口から飛び出た弾が化け物の体に命中した。
が、銃弾を受けても化け物は特に堪えた様子もなく、静かに佇んでいる。
「グワーッ!」
化け物は続けて二人目の警察官の体も引き裂いた。
グロテスクな内臓が飛び散るのを見て、留美も胃液が逆流しそうになる。
残りの警察官もやはり銃で応戦したが、乾いた音が鳴るだけで成す術がない。
あっという間に全ての警察官が化け物の爪によって挽肉になった。
「こ、こんなことって……」
留美は己の死を覚悟して、ノートパソコンを地面に落とす。それから、ギリギリまで後ろに下がると、袋小路の壁に寄りかかった。
留美に迫って来た怪物の腕が大きく翻る。その手が振り下ろされれば留美の体も警察官たちのようにバラバラになるだろう。
この状況をどうにかする術は、留美にはない。
「も、もう、駄目! 修一さん……」
そう言葉を発すると、留美は絶望感に打ちのめされながらギュッと目を瞑った。




