エピソード1.5 アパートの火事
〈エピソード1.5 アパートの火事〉
留美は今日も修一のアパートに足を運ぼうとしていた。
が、アパートの敷地まで来たところで信じられない光景を見る。
何とアパートが燃えていたのだ。
火の手は一階から上がっていて、二階にある修一の部屋も燃え盛る火炎が呑み込もうとしていた。
「何で火事なんて起きてるの? これも修一さんを探している人たちがやったことなの?」
留美は舞い上がる炎を見て立ち眩みすらしそうになる。
「こんなの絶対におかしいよ! 私の知らないところで、一体、何が起きてるって言うの?」
留美は押し拉がれていたが、すぐにこうしてはられないと、奮起する。
「……嘆いてる場合じゃなかったね。部屋には修一さんが残していた大切な物があるし、それを燃やされるわけにはいかないよ!」
そう叫ぶと、留美は迷わずアパートの外付けの階段を上っていく。
ここで二の足を踏んだら、後悔が待っているだけだ。
火事を見ていた野次馬たちも、留美を制止する暇はなかったし、ただ、ただ、驚き惑うような顔をすることしかできなかった。
「凄い煙だね。吸い込み過ぎると倒れちゃいそうだし、修一さんを付け狙ってる人たちも形振り構わなくなって来たってことかな?」
留美はシュウイチの部屋のドアを鍵で開ける。それから、部屋に飛び込むと窓から炎が入り込んでいるのを見ながら、スマホとノートパソコンを掴んだ。
「これだけは絶対に燃やされるわけにはいかないね。中には重要なデータも入っているかもしれないし」
修一のスマホやパソコンは、暗証番号でロックされていた。だから、留美も中にどんなデータが入っているかは知らない。
ただ、人には見せられないような大事なデータが入っている可能性はある。
留美は他にも持ち出したい物はあったが、我慢して部屋から出た。
それから、煙を吸い込んだせいで喉が痛くなるのを感じながら、ゴホゴホと咳をした。
「この火事はシュウイチさんの部屋を狙って燃やそうしたものなんだよね。本当に何が起きているのか分からないし、早く帰って来てよ、修一さん……」
安全な場所まで戻って来ると、留美は勢いの衰えない炎がアパート全体を包み込んでいくのを見ながら、途方に暮れた。




