エピソード4.5 探偵の尾行
〈エピソード4.5 探偵の尾行〉
留美は焼き肉店のアルバイトを終えると暗い夜道を歩いていた。
が、すぐに気付く。
誰かが自分の後をつけていることに。
留美は危険を承知で曲がり角に身を隠すと、自分を付けている男が近づいて来るのを待ち構えた。
そして、タイミングを計ると、見覚えのあるトレンチコートを着た男の前にバッと飛び出した。
「随分としつこく私を付け回していますけど、私に何か用ですか?」
留美は恐怖を押し隠して強気の態度で尋ねた。
「いや、別に」
四十歳くらいの男はソワソワした様子で留美から視線を逸らした。
「白を切らないでください。あなたが数日前から私を付けていたのは知っています。警察を呼ばれたくなかったら事情を話してください」
警察は当てにはできないと知りつつも、留美は脅し文句に警察の名前を使っていた。
「俺は探偵だ。副業としてルポライターもやっているし、文秋って言う週刊誌には俺の書いた記事が載っている」
男は白状するように言った。
「探偵が何で私を付け回したりするんですか?」
暗闇の中で尾行されるようなことをした憶えはない。
「君の親戚の桂木修一は知っているよな。行方を暗ませた彼を見つけ出してくれれば大金を払うって言う依頼者がいるんだよ」
「本当ですか?」
修一の名前が出たので、留美も動揺を抑えきれなくなる。
「ああ。どうも桂木修一を探している奴は俺だけじゃないらしい。俺みたいな人探しを得意とする連中が色々と便利に使われているようだ」
修一はやはり大きな陰謀に巻き込まれている。ここに来てようやく留美はそのことを確信した。
男は決まり悪そうな顔で言葉を続ける。
「だから、俺も桂木修一が君と接触するんじゃないかと思って見張っていたんだ」
「修一さんが何をしたって言うんですか?」
「そこまでは俺も知らんよ。とにかく、俺の掴んだ情報によると、政府のお偉いさんまでもが、桂木修一を血眼になって探しているらしい」
「そんな……」
でも、政府がバックについているなら警察官たちの不審な行動も説明が付く。
何かあれば警察は自分を餌に使ってでも、修一を捕まえるつもりなのだ。
いずれにせよ、もう、警察を頼りにすることはできない。
なら、誰を頼れば良いのかと留美は暗澹たる気持ちになった。
「お嬢ちゃんも気を付けないと大きなトラブルに巻き込まれるぞ。俺も今度の一件には途轍もなくヤバイものを感じているからな」
男はそう脅かすように言うと、そそくさと留美の傍から離れて行き、そのまま夜の暗闇の中に消えた。




