エピソード3.5 隠蔽される情報
〈エピソード3.5 隠蔽される情報〉
登校日の全校集会が終わり、放課後になると留美は文芸部の部室に来ていた。
部室にはコミック・マーケットの準備をしている晴香と達也がいる。
二人ともお盆休みに開催されるコミック・マーケットを前にして、追い込みの作業に入っていた。
「留美ちゃんのクラスでも亡くなる生徒がいたのね。私たちの学年でも亡くなる生徒が出たって言うし、一体、何がどうなってるのよ?」
晴香はプリントアウトした小説の原稿に目を通しながら言った。
「夏休み中に十人も生徒が亡くなるなんて、幾ら事故でもちょっと異常だよな」
達也はペットボトルのコーラをラッパ飲みする。
「でも、テレビじゃ事故の報道すらしてないのよね。全国放送ならともかく、地元のローカル局なら、さすがに事故のニュースは流すはずだけど」
晴香はコンビニのサンドウィッチに噛り付いた。
「ネットでも事故の情報は全く掴めないんだよな。誰かが意図的に隠蔽工作をしているとしか思えないぜ」
達也はコーラを飲み干すと大きなゲップをしながら言った。
「で、でも、ネットの情報すら隠蔽できる組織って言ったら政府くらいしかないですよね?」
留美のおずおずとした指摘に晴香と達也も互いに視線を絡ませる。
「ああ。国ぐるみで何かを隠そうとしているのかもしれない。そう考えないと説明できないことが多すぎる」
達也は虚空を睨むような顔をして言った。
「怖いこと言わないでよ、達也」
晴香は寒気でも感じたのか、肩を抱きながら言った。
「別に脅かしているつもりはないぜ。でも、ウチの学校の生徒が何人も死んでるんだ。なら、俺たちだって、他人ごとじゃ済ませられないかもしれない」
達也の目はいつになく真剣だった。
「そうね。気を付けてどうなることでもないように思えるけど、私も自分の行動には注意を払うわ」
晴香の言葉を聞いた留美も危機感を持つ。
「それが良いな」
達也はニカッと白い歯を見せて笑った。
「とにかく、幾ら憶測を並べても得るものはないし、今はコミマの準備に集中しましょう」
晴香は気持ちを入れ替えるようにパンパンと掌を叩いた。
「ああ。この暑い中、俺たちも世間話をするために部室に来ているわけじゃないし、そろそろ詰めの作業に取り掛かるか」
達也も顔の汗をタオルで拭う。
「ええ。高校生活、最後のコミマに手落ちは許されないわよ」
そう言うと、晴香はノートパソコンを開いて、キーボードを叩き始めた。




