エピソード3 ミノタウロスとの戦い
〈エピソード3 ミノタウロスとの戦い〉
廃墟と化している砦に辿り着くなり、俺たちはたくさんのモンスターに襲われた。
だが、襲いかかって来るゴブリンやオークたちは、もはや俺の敵ではなかった。
体力の消費すらせずに仕留められる雑魚も同然。
なので、俺は迫り来るモンスターをバッタバッタと斬り倒しながら先に進んで行く。
「やっぱり、アメイヤの加入は大きかったな。安心して背中を任せられるし、本当に良いパーティーになった」
俺だけでなく、エリシアやアメイヤも流れるような動きで、次々とモンスターたちを屠っていく。
どの方向からモンスターたちが現れても問題にはならなかったし、俺たちの布陣に抜かりのようなものはない。
一方、砦の中はかなり入り組んでいたが、そこはオートマッピングがあったので問題にはならなかった。
機能が増えたおかげで、ボスモンスターも赤いシンボルとして表示されるようになったし。
「メニュー表の機能の充実には助けられるばかりだな」
俺はマップを開きながら言葉を続ける。
「でも、どう考えても親切設計すぎるし、ゲームとしてリリースされる際にはバランス調整をして欲しいところだ」
そんなことを考えていると、俺たちは砦にある会議の間に辿り着いた。
そこには人間のように二足歩行をしている牛の顔の怪物がいた。
怪物は三メートルを超える巨体に筋骨隆々とした体つきをしている。しかも、その手には人間には到底、扱えないような巨大なハンマーが握られていた。
「あいつがミノタウロスか。あんな大きなハンマーで殴られたら、一巻の終わりだぞ」
ミノタウロスのレベルは三十二だ。
やはり、レベルキャップと紐づけされているモンスターは強い。下手に侮ると痛い目に遇いそうだ。
「初めは私が攻撃してみる。敵が怯んだら、シュウイチお兄ちゃんが続けて攻撃して」
アメイヤが隙のない動きで槍を構えた。
「なら、私は魔法で援護しますし、ここは連携を重視した戦い方をしましょう」
エリシアも空中に水の槍を何本も作り出す。
「行くよ!」
そう鋭い声で言うと、アメイヤはミノタウロスに突きかかった。その一陣の光となった突きはミノタウロスの二の腕に突き刺さる。
が、傷は浅かったらしく、ミノタウロスは怯むことなく大きなハンマーでアメイヤに殴り掛かった。
俺はアメイヤが迅速な動きで後退したのを見ると、スイッチをするようにミスリル・ソードで斬りかかった。
だが、ミノタウロスの腕を切断することは叶わず、浅い切り傷を付ける程度に留まった。
ミノタウロスは俺の脳天にハンマーを振り下ろす。
それを俺は素早い身のこなしでかわす。
そのままミノタウロスのハンマーは床に大きな穴を空けた。
凄い怪力だし、こいつと力勝負をするのは馬鹿げているな。
「お兄ちゃんの動きが前よりも良くなってる。私と戦った時は、ここまで早い動きはできなかったのに」
アメイヤが瞠目したように言った。
「シュウイチさんは短期間でどんどん強くなっているんです。どうも、神様の加護があるらしいですよ」
エリシアは水の槍でミノタウロスに攻撃しながら言った。
「やっぱり、シュウイチお兄ちゃんは凄い! 私も学び甲斐がある!」
アメイヤは俺とは別の角度からミノタウロスに攻撃を仕掛けた。
俺は豪風を生み出すハンマーを掻い潜りながら何度もミノタウロスの体を斬りつけた。
が、ミノタウロスの動きが鈍くなる気配は一向にない。
「さすがにタフだな。しかも、ミスリル・ソードの切れ味も悪くなってきたし、そろそろ新しい武器に買い替えないと」
質の良いミスリル・ソードを選んで買ったつもりだったが、特に手入れはしていないし、そのせいか、だんだん刃が劣化してきた。
何度も肝に命じていることだが、命を預ける武器にお金を惜しんではいけない。
次に買うとしたら、やはり、絶対に切れ味が鈍らないというオリハルコンの剣だろうか。
「シュウイチさん、アメイヤさん、ミノタウロスから離れてください。私のとっておきの魔法を使いますから」
エリシアは掌を掲げると、空中に大きな炎の塊を生み出した。
普通のファイアー・ボールとは明らかに異なる炎だ。
まるでマグマのようにグツグツと燃え盛る炎に俺は危険なものを感じた。
俺はアメイヤと視線を交わすと、後ろへと大きく跳躍して、ミノタウロスと距離を取る。
ミノタウロスは雄叫びを上げながら俺との間合いを詰めようとした。
「「「エクスプロード!」」」
エリシアがそう叫ぶと、炎の塊はミノタウロスの胸にぶつかる。
その瞬間、空間が爆ぜ割れたかのような大爆発が生じた。
床や壁がまるで地震でも起きたかのように激しく揺れる。
そんな凄まじいエネルギーの迸りに耐えられなかったのか、ミノタウロスの体はバラバラに弾け飛ぶ。
グロテスクな肉片が周囲にばら撒かれた。
かろうじて原形を留めていたのはミノタウロスの腕が付いているハンマーだけだ。
「あのミノタウロスを一撃で仕留めるなんて……。凄い魔法じゃないか、エリシア!」
俺はエリシアに非力なイメージを持っていたが、それは先入観によるものだったらしい。
「とっておきの魔法ですから、反動が酷くて三日に一発くらいしか撃てませんよ。言うなれば切り札です」
エリシアはたくさんエネルギーを消費したせいか、青い顔で言った。
「私も攻撃魔法は使える。でも、闘技場では魔法の使用が禁止されていた。だから、私の魔法を使う腕も鈍っているかもしれない」
アメイヤもエリシアの魔法に対抗意識のようなものを見せる。
「とにかく、これで今回のクエストは完了だ。宿に戻ったらたっぷりと英気を養おうぜ」
俺はミノタウロスを倒したことでレベルキャップが外れ、レベルが四十に跳ね上がったのを確認しながら笑った。




