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エピソード1.5 夏祭り

〈エピソード1.5 夏祭り〉


 留美は高校の友人の萩原裕子と共にアーケード街を歩いていた。


 もうじきこの町では、大きな夏祭りが開かれる。


 その日には夜空に大輪の花火が上がるし、たくさんの人たちが町の中心部に押し寄せて来るのだ。


「夏祭り楽しみだねー。今年は彼氏もいるし、一緒に花火を見る予定なんだ」


 裕子は心を浮き立たせるように言った。


「私は弟と妹がいるし、二人の面倒を見ながらお祭りを見て回るのは大変だよ。家にいた方が楽で良いな」


 留美には彼氏などいない。


 決して裕福とは言い難い家庭を支えるためにも、彼氏など作って浮かれているわけにはいかないのだ。


 だから、アルバイトもしている。


 でも、アルバイトをしていると嫌でも色々な話が聞こえて来る。


 ここ最近、物騒な内容の話が多くなってきていることには、留美も不吉なものを感じているのだ。


「そんなんだから、留美は良い男を捕まえられないのよ。家族の面倒なんて二の次にしなきゃ。でないと、あっという間に高二の夏は終わりよ」


「そんなこと言われても……」


 留美が支えるのを止めたら、家族の生活は成り立たない。


 でも、裕子の言う通り、家族のことに煩わされることなく、思いっきり遊びたいという気持ちもある。


「留美は凄く可愛いんだから、もっと自分に自信を持ちなさい」


「そうだね。じゃあ、これからはもう少し積極的になってみるよ」


 留美は何事も気の持ちようかもしれないと思いながら言った。


「それが良いわね。とにかく、私は留美のことを応援してるし、困ったことがあったら何でも言ってよ!」


「うん」


 裕子の心強い言葉を聞いた留美は軽快な返事をした。


「それはそうと、最近、この町っておかしくない?」


 裕子の何げない感じの言葉に留美はビクッとする。


「えっ?」


「だって、事件の報道なんて何にもされてないのに、警察官や自衛隊の人たちが町の至る所に立ってるのよ。その内、戦車とかも出て来るんじゃないの?」


 裕子の言葉を聞いた留美は、警察は自分の味方にはなってくれないかもしれないと思う。


 それどころか、警察は何かあれば自分の身にも手を伸ばしてくる気かもしれないのだ。


 なので、留美の中では修一は何か大きな陰謀に巻き込まれたのではないか、という妄想も膨らんでいた。


「確かに、ちょっとおかしいよね。何か公にできないテロでも起きたんじゃないかな」


 留美は最初に接触してきた警察官の化け物が出たと言う言葉を思い出していた。


 まさか、化け物が殺人事件の犯人なのでは? 


 いや、それはさすがに発想が飛躍しすぎているか。


「テロねぇ。そんな話は全く聞かないし、もし、テロなんかが起きていたら夏祭りも中止になると思うけど」


「下手に騒ぎにしたくないから、あえて夏祭りを中止にしないようにしているのかも」


「もし、そうだったら、ぞっとするわね。まあ、外国と違って、日本じゃ大したことは起きないでしょ。そんなことより、デートよ、デート!」


 そう言って、裕子は汗で濡れた髪を掻き上げる。


「デートかぁ。私も裕子みたいに積極的だったら、今頃、彼氏の一人や二人はできていたのかなぁー」


 そうぼやくように言うと、留美は何とはなしにアーケード街の天井に付けられている夏祭りの飾りを見る。


 すると、虫の知らせとでも言うべきか、急に強い不安が込み上げてきた。

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