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エピソード6.5 警察の捜査

〈エピソード6.5 警察の捜査〉


「やっと、掃除が終わったー。これで三万円はゲットだね!」


 すっかり綺麗になった修一の部屋を見回し、留美は感嘆の息を吐いた。


「結局、幾ら掃除をしても面白いものは見つからなかったし、ちょっと拍子抜けかな」


 男の部屋だし、人には見せられないものが、たくさん出て来るものだと思っていた。


 が、そんなものは、ただの一つも見つかりはしなかった。


 そこに、ある種の不自然さを感じる。


「ま、修一さんが男の子をしている形跡がないってことだけは分かったけど」


 留美は男の部屋の臭いをたくさん嗅いだせいで、体が疼くのを感じていた。


 いやらしい行為に耽りたいという衝動も込み上げてくる。


 この健全な若さのようなものは、すっかり枯れてしまっていると思われる修一にも分けてあげたいくらいだ。


「唯一、気になる物と言ったら、この聖書かな。ボロボロだけど、それだけ、たくさん読まれてるってことだよね」


 あまりにもボロボロの本だったので、危うく捨ててしまうところだった。


「修一さんはキリスト教徒なのかな?」


 留美はパラパラと聖書のページを捲ったが、これといって面白いことは書かれてない。


 解き放たれた大いなる竜の《サタン》とか、神が引き起こす最終戦争の《ハルマゲドン》とかの記述には赤い線が引かれていたりした。


 が、自分にはその意味が分からなかった。


 ただ、この聖書は、修一の部屋の潔癖さを説明するカギにはなるかもしれない。


 そう思いながら、留美はダンベルのように分厚くて重い聖書を閉じる。そして、すぐにハッとした。


「って、いけない! 裕子たちとショッピング・センターに行く待ち合わせをしてるんだった。早くしないと、遅れちゃう!」


 腕時計を見ながら留美は慌てて修一の部屋を出る。


 修一の部屋はアパートの二階にあるので、外付けの階段も勢い良くダン、ダン、ダンと降りて行く。


 が、アパートの敷地から離れようとしたところで、警察官の制服を着た男に呼び止められた。


「ちょっと、すみません。この辺りで化け物を見たという通報があったんですが、あなたは何か知りませんか?」


 警察官の男は突拍子もない話を切り出してきた。


「別に知りませんけど」


 留美は胡乱な目をしながら首を振る。


「そうですか。お引き止めをして申し訳ありませんでした」


「いえいえ」


 留美は警察官の慇懃さに苦笑いする。


「あと、現在、この近辺では殺人事件の犯人の捜索が行われています。あなたは未成年でしょうし、夜遅くの外出はなるべく控えるようにしてください」


 そう言うと、警察官は一礼して留美の前から去って行く。


 留美は、このアパートは自宅じゃないから気にしなくても大丈夫だよね、と自分に言い聞かせる。


「それにしても化け物ねぇ……」


 警察官の後姿を薄気味悪そうに見ていた留美はそうぼやく。それから、すぐに待ち合わせの時間のことを思い出したので、急いで走り出した。

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