エピソード1 ドラゴンを打ち倒した件
〈エピソード1 ドラゴンを打ち倒した件〉
「行くぞ、ドラゴン! お前を倒して俺は大金を手に入れる。そして、現実の世界へと帰還するんだ!」
そう猛々しく叫ぶと、俺は光り輝く剣を手に疾駆する。向かう先にいるのは圧巻の巨体を誇るドラゴンだ。
「フハハハハハ、愚かな奴め! 人間ごときが千年を生きるエンシェント・ドラゴンの我に勝てるとでも思っているのか!」
そう高らかに言うと、ドラゴンは鋭い爪を連続で振り下ろしてくる。
風を薙ぐ爪は掠ることすら許されないし、動き方を間違えれば、俺の首など簡単に宙を舞うだろう。
そんな即座の死を意味する熾烈な攻撃を何とか掻い潜る。
俺はドラゴンの爪による攻撃を全てかわしきる。それから、反撃に転じるように、魔法の力が込められている剣を一閃した。
その一撃はドラゴンの鋼の如き強度を持つ鱗を切り裂き、足に深い切り傷を付けた。
これには、ドラゴンの動きも大きく鈍る。
「グッ、小癪な真似を! だが、この程度の攻撃に屈する我ではないぞ! この痛み、何倍にも増やして返してくれるわ!」
ドラゴンは苦しげな顔をしながらも、覇気を失わずに大きな咆哮を上げる。
再びドラゴンの全てを切り裂く爪が迫って来た。
が、先ほどのような勢いはない。
俺は足を引きずるドラゴンを見るや、チャンスとばかりに怒涛の如く斬りかかった。
ドラゴンは嵐のような斬撃を浴びて、体のあちらこちらから大量の血を流す。
今のドラゴンは満身創痍の状態だ。
畳みかけるなら今しかない。
「まさか、この我とここまで渡り合える人間がいたとはな……。貴様を侮っていたことは認めよう。だが、これならどうだっ!」
ドラゴンは大きく開けた口から灼熱の炎を吐く。
まともに食らえば、たちまち消し炭と化す凄まじい炎だ。
そんな炎が辺り一帯に燃え広がる。
俺の周囲も瞬く間に炎の海と化し、もはや、逃げることができるような場所はどこにもない。
が、俺は怯むことなく、地獄から呼び出されたような炎を魔法のマントで無効化しながら、俺はドラゴンの懐へと突き進む。
「ば、馬鹿な! 全てを焼き尽くす、この我の炎を防ぎきったと言うのか! き、貴様は一体?」
炎から飛び出した無傷の俺を見て、ドラゴンは狼狽の声を上げる。
それを受け、俺は炎を防いでくれた魔法のマントの裾をはためかせる。と、同時に鋭い剣の切っ先をドラゴンの鼻先に突き付けた。
「お前、人間を舐め過ぎているだろ?」
俺は挑発するように言った。
「何だと?」
ドラゴンが目を白黒させる。
「あいにくと、俺にとってはドラゴンの討伐も、ただの踏み台でしかないんだ。だから、大人しくこの技でやられておけ!」
不敵に笑いながら言うと、俺は体の筋肉が躍動するのを感じながら口を開く。
「「「必殺、ライトニング・ペネトレイト!」」」
そう力強く叫ぶと、俺は閃光の如き突きを繰り出す。
狙いは、外からでも赤く脈を打っているのが分かるドラゴンの心臓だ。
そして、剣による突きは、その心臓を正確に貫いた。
「「「グァァァァァァァァァ!」」」
心臓を破壊されたドラゴンは、こちらの耳を震わせるような絶叫を上げる。それから、全ての力を失ったようにドスンと横に倒れた。
白目を剥いたドラゴンはもうピクリとも動きはしない。
どうやら、完全に絶命したようだ。
そう心の中で呟いた瞬間、辺りを静寂が支配する。
勝った!
ついに、ドラゴンに打ち勝ったぞ!!!