キング
私は昔全てを手に入れた王様だった。
でも今では私は年老いてただの老人になった
出会う人はみな私を元王様と呼ぶようになった
力を失ってからは私はただの物置きになって
過去の姿を切り取った銅像は
ツタと泥にまみれている虚像だ
王様として即位していた期間は短った
私には荷が重かった。
本当に欲しかったのは名誉や権力ではなく
生きていたという絶対的な証だった
それを感じられるのはいつも一瞬で
手にした瞬間に水のように
するすると抜け落ちてしまう
私が生きていると感じられるのは
私のことを知らない誰かと出会い話す時
その時に飾りではない本当の私になれる
いつか人は必ず死んでしまう
富や名誉や権力はいずれ消えていく
私が死んだ後に残るのは名前だけ
あとはデタラメに忘れ去られる
私は今、小さな小屋の中で暮している
いつか私をあの世に連れてって欲しい
私の役目は終わったのだから