9. 謎の洞穴
愛機リードンとともにギーガは再び神殿を目指していた。
ギーガの強い意志の力を怪しまれ、機械兵が行く手を阻む。
同じ『魔申』とレッテルを貼られた者、〝神の後継〟を望む者たちも進路を妨害してくる。
それらを蹴散らし、リードンは鼻で笑った。
「ふん。みな馬鹿だ。神の後継者になどなれるはずもない」
彼の背に乗るギーガが応えた。
「ここはいつしか欲望の渦だ。みんな自分の意のままになる世界を望んでいる」
「なあギーガよ。神にも寿命があるのか? 『神の後継を募る』話はでっちあげだろう? 神は何を試されてる」
「ラモンさまを捕まえるためだ。次に神は我々の排除をお考えだ。我々のような心を持った機械はいずれ災いをもたらすとな」
リードンはかつて偵察機で、監視ロボットであったギーガと密接に繋がっていた。共に星を守る役目で、常にパートナーだった。
沈着冷静なリードンは、ラモンに熱い気持ちを抱くギーガをなだめてきた。あの時ラモンを粉微塵にした神に憤慨し、捨て身で歯向かうギーガを制御した。
その後ギーガはしばらく姿を消した。
逃げ延びたリードンはギーガを捜し続ける。
ようやく会えたギーガは無傷で、リードンはひとまず安堵した。
そして今――。
「どうするギーガ。これから」
「もちろんまたラモンさまを捜す」
「だからもうやられちまっただろ」
「いや。生きてる。どこかに身を隠して」
「オレたちの目の前でぶっ潰されたじゃねえか」
「きっと生きてる。ラモンさまは我々を超越した存在だ」
急にリードンの推進ユニットが狂ってきて、どこかで羽根を休めようと彼らは神殿への列を外れた。
次に、風に呑まれる不思議な感覚に引き寄せられ、導かれるままとある断崖に降り立った。
「どこだここは?」
と言ってギーガは動けないリードンの背中をさすり、崖の奥を散策する。轟々と吹き抜ける風が不安をかき立てる。
すると突如出現する謎の洞穴に、ギーガは落ちていった。