8. ラモンの過去
シープスはラモンについてのこれまでをゼロウに語った。
――美しい風車が地下に落とされ、廃棄された。
発電所は悲しみ、その感情が具現化してラモンという個体になった。
同じような仲間のシープスたちと出会い、ラモンは力をつけ、自由を掴もうとする。
ラモンは拳を突き上げて同志を鼓舞した。
「俺たちには心がある。魂がある。自由に生きる権利があるはずだ!」
魂を守る権利を主張すべく、ラモンは神殿を目指した。
「返してくれ、神よ。みな気持ちは同じだ。仲間を返してくれ」
はるか天を超えた時空に神殿がある。
そこに創造神オルガがいる。
この星カラクが『宇宙居留地』=造られた星だということも自覚している。
かつての人類が作った、機械でできた、星。
ラモンたちカラクリアンは、その一部にすぎない。
人類のために働いたロボットであり、星を維持し動かすために配備されたマシーンだ。
一個のネジ、歯車であり、回路や装置、ただの〝械〟だ。
それでもこうして個々に魂が宿り、心を持った。
オルガに進言するためにラモン他数百体は空を駆け、突き進んでゆく。
やがて眩いほどの真っ白な世界に包まれ、同志たちははじき飛ばされる。
対話の願いも虚しく、ラモンも吹き飛ばされ、さらにオルガに操られた新型の機械兵たちが襲いかかる。
ラモンは無惨に撃墜された。
残り僅かな仲間を庇うように、身を挺して散っていった。
オルガはそれでも疑ってやまなかった。
真っ白な空間に響くオルガの声。
『ラモンの魂はまだ存在している。時空を越え、逃げ隠れた――』と。