28. 自制回路
唸り声を上げラモンはもがく。
そこで岩場でよろめくゼロウが言い放った。
「ラモン! そのボディはダーツンのなんだろ?」
「……くっ、キサマ」
「あいつは喧嘩っ早くて昔からオレのところによく修理に来てたんだよ」
「ま、まさか」
「知ってたのさ。ヤツのウィークポイントは左の脇腹。最初殴りつけた時にオレの指間腔からナノ・レンチを注入したんだ。弱点の脇腹内部の自制回路を分解した。時間をかけてじわじわとね」
「こいつ!」
「修理解体なんでもござれのゼロウでござんす。おひかえなすって」
ボロボロのゼロウはそう戯けて言った。
「ウ……ゥ……ウガァーーッ!!」
ラモンの断末魔の叫び。彼がまとうダーツンのボディはミシミシとひび割れ、ガラガラと崩れ始めた。同時にラモンの魂である〝風〟が上空に逃げてゆく。
追おうとするリードンを、ゼロウは止めた。
それを見て、ギーガもうなずいた。
「ギーガ。ヤツを逃がすのか?」
リードンは納得いかなかったが、ゼロウは彼の翼をさすって言った。
「ラモン……いや、ダーツンの自制回路をナノ・レンチで触診してわかった。さっきの醜い魔申王ラモンはダーツンの邪気に怒りが増幅された化け物だった。半分はラモンじゃない」
ギーガもそれはわかっていた。いや、信じていた。
「あれはラモンさまの心ではない」と。
力尽きるゼロウをギーガは抱きかかえた。
* * *
ギーガはこの新たな世界でゼロウたちとまた旅に出る。
迷い戸惑いながら荒涼とした道を行く。
彼らもいつか止まることを知っている。
いつか地に伏し、朽ち果て砕け、分解され、粒子となって大地に還る。
やがて蒸気となり宙に舞い、いつしか露となって……また大地に降り注ぐ。
それまでは、歩き続ける。
信じたものに、逢うために。
信じたものを確かめるために。
それまでは、あの風を追って……。




