20. 土器たち
――光と空。
木漏れ日がまばらに辺りをいろどる。
起き上がって見渡すとそこは緑の原野の大樹の下。
向こう側に作られた海と陸がある。
土と砂と樹木と岩肌がなだらかに広がり、はるか遠くに海が光っている。
天空の光の輪が眩く、こちらを見下ろす。
海を行く魚。空を謳歌する鳥たち。
そして作られたヒトと動物たちが野原を戯れる――。
目覚めてから、ギーガのアナライズ・アイは瞬く間に今いる位置、置かれた場所を解析し、状況を把握した。目に映る動植物の分類も封じられていた記憶回路からもたらされる情報だ。
次に傍らで横たわるゼロウの姿を確認する。仰向けで動かない。
「ゼ、ゼロウ! おい、しっかりしろ」
しばらくゆすって呼びかけていると、ギーガは何者かの気配を草むらに感じた。大きく二つのヒト影が。ギーガは振り向いて訊いた。
「誰だ?」
姿を現したのは――全身肌色――〝はだか〟の――黒い髪を長く生やした、〝男〟と――〝女〟だ。
解析による答えは彼らは元素レベルでケイ素、アルミニウム、鉄、……酸素、炭素、水素――この新たな世界を構成する〝土〟。彼らは土器だという。
訊くと、たどたどしい言葉で身振り手振りで説明してくれる。
その二人はどうやら、砂漠で倒れていたギーガとゼロウが――心配で、困ってしまって――ここまで、――この木の下まで運んでくれたらしい。
名前を訊ねると男の方は『土器』、女の方は『カワラケノ肋骨』だと名のった。
カワラケは腕力が強そうで、カワラケノアバラの方は長く美しい、鮮やかな藍色の髪で、ふくよかな腰つきだ。
ギーガはその存在に疑念を抱かなかった。
記憶回路の片隅から沸いてくる、感覚。
彼らの真っ直ぐな眼差し、一瞬でも、なんと言おう――、まるで神と通じているような、感覚……。
ところで、仰向けに倒れたままのゼロウをよくみると、その手から伸びた太いコードが自分の背中に接続されていることに、ギーガは気づいた。
カワラケたちも動き回ってその時の様子を一生懸命説明する。
「まさかゼロウ……わたしに全パワーを与えたというのか。わたしのために」
ギーガはそう呟き、動かなくなったゼロウを抱きかかえた。