18. ギーガの時間制御
ゼロウは喋りながらも俊敏な動きでダーツンを翻弄する。切りかかるダーツンの剣を左手で防御し、右手でギーガを包む炎を消し去った。
「くそっ、このチビスケめ!」
歯噛みするダーツンは右手のひらを天空に広げ、雷鳴を呼ぶ。一瞬の隙を見せたゼロウはそのまま首根っこを掴まれ、落雷に投げ込まれた。
「うわーー!」
「ゼロウ!」
助けに飛ぶギーガの足にヘビンがまとわりつく。
「ナイスだヘビン!」そう言ってダーツンが飛び、ゼロウを追う。
雷を剣にまとわせ、落ちてゆくゼロウ目掛けて振り下ろした。
「ドラゴンソーーード!!」
剣から放たれる電撃。それはまるで渦巻く竜の如くゼロウに襲いかかった。
「……ひっ!」
まともに電撃を食らったゼロウは岩場に叩きつけられ、黒焦げになってバタリと力尽きた。
「ハーッハッハ! まだまだ! 倒れるには早いぞ。次でトドメを刺してやる!」
ダーツンがさらなる雷鳴を引き起こす。
暗雲と稲光。突き上げる剣先に集まる巨大な雷光の渦。ゼロウがムクリと顔を上げた時、ダーツンはありったけのパワーで放射した。
そこで響き渡るギーガの詠唱!
「……この道は真っ直ぐ、天国へと繋がっている。時空を超えた門よ、開け……」
すると突然、大気の流れが止まった。
ゼロウは眩い中空を見渡す。
雷光の渦が止まり、時が止まった。ダーツンの剣先からその一帯だけ、限定的に静止している。ダーツンもまったく動いていない。
近づいてくるのは浮遊するギーガだ。
体に巻きついていたヘビンを放電で払いのけた後、ゼロウに右手を差し出した。
「大丈夫か? ゼロウ」
「……あ、ああ。ありがとうギーガ」
「いや。おまえには三度も助けてもらった。まだ足りないさ」
差し出すその手は震えていた。
「ギーガ、凄い技だな。あの言葉は?」
「磁場を操るキーワードだ。フレーズに鍵がある。記憶回路から自然と沸いてくる……古の…歌のようなものだ」
「歌? ふむ。……というか、あんた……力が」
「……今、ダーツンにまつわる時間を停めている。しかし極めて短い間だけだ。ヤツの時間が再び動き出す前にテレポートするぞ。いっしょに」
ふらふらのギーガはゼロウの手を掴み、その場所から姿を消した。




