15. ダーツンとヘビン
ギーガのもとからラモンが去った。
突風となってあっという間に消え去った。
「ラモンさまっ!」
――この異世界で、どう動いていけばいいのか。ここまで、ラモンさまに仕えるために来たのだ。リードンのことは気にかかるが、この異世界では連絡の手立てがない。今はひたすらラモンさまを捜そう。あの風を追って。あの風を待って……。
全方位地平線のだだっ広い荒野をギーガは行く。
歩いて歩いて峡谷に差しかかった時、そのアナライズ・アイが赤く輝いた。
二体のカラクリアンが現れた。
強大な力を持つ、ダーツン。そして連れのヘビン。
ダーツンは頑強な体躯で尾をうねらせ、ヘビンは細長い体で地を這って進む。元々の性質だろうか、両者そろってすでに敵意むき出しだ。
ギーガは訊いた。
「わたしに何か?」
ダーツンが答える。
「新型のおまえは敵か? 味方か?」
「ラモンさまに呼ばれたのだろう? わたしも同じだ」
ヘビンがにやついて言った。
「知っているぞギーガ。おまえはかつて監視ロボットだった。俺たちの〝悪事〟を、いつも見ていたヤツだ」
「おまえはヘビン。ベルトコンベアだったヘビンだな。真面目に働いていたのに、転送装置の普及で廃棄された、おまえだ。おまえは憤怒し、狂ったかのように新型機を破壊していた」
「ヒヒッ、そうさ。古臭くて陰気臭くて瓦礫にお払い箱の俺さ。おまえのことだって気にいらない」
「同じカラクリアン同士でいがみ合うのは哀れだと思わないのか?」
「俺の中での認識では、新型どもは創造神オルガの側。我々旧型と入れ替えるために作られたのだろう? だからいけすかないんだよ」