11. 風のラモン
「いかにも。私はラモン。おまえは私を捜していたな」
「あなたは、どこから? 今どこに」
辺りを見渡すギーガの頬を、風がふわりと撫でつける。
「私は風だよギーガ。そよぐ風だ。この、漂う風になってしまった」
熱い感情が胸を締めつける。
震える風の声に心が震え、悲しくなった。
「ラモンさま、ここはどこですか? あなたはこの世界で何を」
訊くギーガにラモンは答えた。
「おまえが落ちた穴はワームホール。そしてここは創造神オルガがこれから作る新たな世界だ。私は破壊された後、無意識に魂が風に紛れてこの世界へ逃げこんだ。自我を取り戻した私はここでオルガに挑むつもりだ。私を、仲間を、無下に殺したオルガに挑むつもりだ」
およそ信じがたい話を聞かされた。
ギーガは空に向かって首を横に振る。
「……そんな、無謀です。ここは所詮創造神オルガの領域。また排除される。立ち向かうより逃げ延びて生きる方が賢明だと……わたしは思います」
「私は逃げない。これ以上逃げない。私は怒っているのだよギーガ。オルガは試している。我々のこともこの新しい世界のことも。だから私も、神を試すのだ」
「い、いけない……」
「無謀だとはわかっている。だが、私は挑みたいのだ。……わかっている。わかっているさ。我々は元々ただの機械で使えなくなったら廃棄されるものと。しかしまだ許せないのだよ。仲間を廃棄し、殺した神を、私はどうしても、まだ許せないのだ」
固まるギーガに風のラモンはまとわり、なだめるように囁いた。
「ギーガよ。これは私の業。すべてにおいて、これは試練なのだ」